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2014年5月5日月曜日

可微分おっぱいのアレの前哨戦も兼ねてこの間のセミナーでやった線型代数入門の内容を Kindle で出してみる

可微分おっぱいのアレの前哨戦も兼ねて.



いま新入生向け線型代数セミナーでやった内容を Kindle で出そうと思って
https://github.com/phasetr/kindle-linear-algebra-for-newcomers をやっている.
販売するが, 内容自体はフルオープンでやる.
Kindle は宣伝に使うイメージでやってみる


@phasetr https://github.com/phasetr/kindle-linear-algebra-for-newcomers に epub ファイルを置いてみた.
実際に Kindle に出す前にチェックして頂ける方がいればご確認頂きたい.
式 (の画像) が小さいとかそういう欠点が既に分かっている.


本体の epub ファイルは build/epub/kindle-linear-algebra-for-newcomers.epub に置いてある.
ご協力頂ける方は是非お願いしたい.
これもそのうち DVD にしたい.

2014年1月18日土曜日

書評または感想: 数学セミナー 2014年 01月号 グラフ理論の新展開

数学セミナーを定期購読することにしたのだが, 時間が取れずにようやく 2014/1 月号を読んだ方の市民だった.
せっかくなので感想をまとめていきたい.
まず冒頭, 時枝正さんの「無理な数のこしらえかた」が恐しく面白かった. 素数定理, \(\pi(x) - \int_0^x \frac{d\xi}{\log \xi}\) は \(x \to \infty\) で無限回符号を変えることを 1914 に Littlewood が示したらしいのだが, その証明が面白い. 次の 2 ステップで証明しているそうなのだ.
  1. Riemann 予想を偽としてその仮定から結果を導く.
  2. Riemann 予想を真としてその仮定から結果を導く.
結果として Riemann 予想の真偽に関係なく結果を導いているという. これと \(\sqrt{2}^{\sqrt{2}}\) の無理性証明を比較してうんぬん, とやっていて面白いから是非読むべき. ここからさらに零知識証明と暗号理論への応用の話題になる.
今回の特集はグラフ理論だ. 4 色問題が有名なアレだ. ネットワークの問題や, 最近だと Nobel 経済学賞になった Gale-Shapley のマッチング理論などの話題もある. 東大教養の垣村尚徳さんの記事によれば理論計算機科学, トポロジー, 数学基礎論への影響もあるらしい. トポロジーと言えば, 情報技術者とかその辺の資格試験にもネットワークのトポロジーという話題は出てくる. 私の近いところだと, 作用素環でもグラフから作る作用素環という話題がある. 研究していた先輩もいたし, 慶應の勝良健史 さんもやっていたはずだ. (今やっているかは知らない. )
国立情報学研究所の小関健太さんの記事によると, 4 色問題のバリエーションも色々あって, 特に 3 色問題というのもあったり, 最近弱 3-flow 予想というのが解決されたというニュースがある. Thomassen の話題がちょろっと紹介されているが, 非常にスマートな証明を与える優れた数学者とのこと. 格好いい. 数学セミナーの執筆者の所属に「国立情報学研究所」が出てくるあたり, グラフ理論の展開の広さを伺わせるようで面白い.
琉球大の徳重典英さんの【セメレディとその周辺】という記事, 数学者のエピソード系記事とも言えるのでそれだけで特記する価値がある. Szemeredi は 2012 年に Abel 賞を取ったとのことだがそんな有名人も知らない無知無学無教養な市民だった.
東工大の松井知己さんの【安定マッチング問題の応用 嘘をつく人々】にはこう色々と興味がある. Nobel 経済学賞関連の 1962 年の Gale-Shapley 論文の安定結婚問題とかその辺の話. ところで次のような記述があった.
1962 年の Gale-Shapley 論文では, この話題が数学教育において優れた教材であると述べられている点でしょう. 複雑な数式や前提知識が不要なのに, 数学的に奥深い構造を持ち, 現実にも応用を持つ安定結婚問題は, 高校生にも初見から興味を持ってもらえそうです.
この観点はなかった. 今度きちんと勉強しよう. 何か良い本ないだろうか. この記事, 参考文献などは 2013/4 の安田さんの記事を参照しているが, 手元にないしすぐ見られる環境でもないので困る. 日本評論社に参考文献一覧みたいなのないだろうか. あと, (PDF で) 数学セミナーの電子書籍ないだろうか. 個人所有で本のままだと置くスペースとか困る. 日本評論社の方は是非検討されたい. 過去のものも是非電子書籍化してほしい.
Gale-Shapley はいわば【男性の選好を優先するアルゴリズム】を作ることで安定マッチングの存在とその具体的構成までやった. Gale-Shapley の問題では男女は対称なので, 【女性の選好を優先するアルゴリズム】と言ってもいい. ここで問題なのは, 男女が正しく自分の選好を申告することが肝要だった. 3 節の【安定マッチングの構造】で議論されている. ここでは「嘘の選好リスト」を出されたときの問題があり, Nobel 賞になったときに少し勉強したところによるとこれが現実への応用上とても大切になるという話が展開される. 何で嘘をつくかというと簡単で, 例えば受験で「本当の第一志望は東大だがそれは色々と無理なので第一志望は早稲田にした」みたいなケースを想定すればいい. 真の選好を出さない状況は色々あり, その中で安定マッチングを作るのが難しくかつ価値がある. 話のネタとしても面白いだろうから, やはりグラフ理論というかマッチングの話はきちんと勉強したい感ある.
名大の伊藤由佳理さんの【第 16 回 ヨーロッパ女性数学会総会に参加して】は相転移プロダクションの活動的に非常に興味がある. 紋切り型に言えば「女性の就学・研究支援」のようなものだ. 詳しくは記事を参照されたいが, 来年の韓国での ICM の直前に 国際女性数学者会議 (ICWM) もあるとのこと. 「この記事を読まれた方は, ぜひ周りにいらっしゃる女性数学や女子学生にお知らせください」とのことなので, 私も宣伝協力していきたい.
名大の小澤正直先生の【量子測定の数理と不確定性原理 (10) 不確定性原理と相補性原理】, 不勉強なので知らなかったのだがびっくりした記述があった.
一般に二つの物理量の値に関する「同時測定可能性」と「同時定義可能性」, および二つの物理量の作用素としての「可換性」の三者の概念が互いに同値だと考えられてきたからである. ところが, 新しい不確定性関係の発見によって, 非可換な物理量の同時測定可能性が明らかにされ, 「二つの物理量の値の同時測定可能性」と「二つの物理量の作用素としての可換性」が同値な概念ではないことが明らかにされた.
ちょっと認識を改めないといけない. 勉強しないとまずそう. 量子集合論とか出てくるそうなのでつらい.
明治の阿原一志さんの【サーストンの描いた 8 つの宇宙の絵】冒頭部, とてもよい.
2010 年 3 月 5 日パリ, 三宅一生氏が立ち上げた世界的ブランドである ISSEY MIYAKE の 2010 年秋冬コレクションが, 当時クリエイティブディレクターだった藤原大さんの手によって華やかに行われました. コレクションのタイトルは「ポアンカレ・オデッセイ (Poincare Odyssey)」. ポアンカレ予想とサーストンの 8 つの幾何学 (幾何化予想) をテーマとしてこのコレクションはファッションと高等数学の幸福な出会いとして, 欧米でとても評判になりました. このことについて, 本誌 2010 年 6 月号「パリコレで数学を」と 2010 年 8 月号「宇宙の形と質感をめぐる冒険」で紹介されましたので, ご存知のかたも多いと思います.
JosephYoiko さんに教えてもらったアレか. こういうの, 私も私なりのやり方でやっていきたい. あとこの過去記事読みたい.
この記事によると, ジオメトリーセンターによって作られた「not Knot」とかいうビデオが Youtube で公開されているとのこと. あとでじっくり見たい.
  1. http://www.youtube.com/watch?v=AGLPbSMxSUM
  2. http://www.youtube.com/watch?v=MKwAS5omW\_w
インタビューの【実験を通して, 現象を数理的に考える】, 明治の矢崎成俊さんの話, 超面白い. 関西すうがく徒のつどいでも【偏微分方程式の逆問題–拡散方程式の数学と物理と工学】で関連する話題に触れたが, やはりこの辺結構好き. この記事では移動境界問題に触れている. ラーメンの汁の表面に浮いている油の玉がくっついて境界の形が変わる, というような現象を扱うのが移動境界問題だ. 以前【自分でつくる現象数理】という連載があったようだが, これ読みたい. 何かムック的なアレでまとまっていたりするのだろうか. 著作権も考えつつ出版社的にきちんとした形にまとめようとすると大変なのだろうというのは簡単に想像がつくが, 不完全な形でもいいから何かほしい.
【雪氷数学】というキーワードが出てきた. 是非頑張ってほしい. 話聞きたい.
本連載のインタビューの模様を, 2014 年 1 月より順次 web 配信する予定です. 放映日時など, 詳しくは『数学セミナー』web ページ (http://www.nippyo.co.jp/blog\_susemi) にあります『詳細情報』をご覧ください.
こういう取り組みすごい良い. 私もこの活動, 注視していこう.
山形大の脇克志さんの【数の拡大:直線の中の 3 次元空間】, SF チックで面白い. こういう発想大事にしたいし, 自分でもきちんとやっていきたい. あまりきちんと考えたことなかったが, \(\mathbb{Q}\) 係数のベクトル空間, もっとちゃんと考えたら楽しそう.
梅田享先生の【森毅の主題による変奏曲】, これが滅茶苦茶面白い. 全文引用したいレベル. これだけでも買う価値があるレベル. 位相と実関数論, コンパクト性を基軸にした位相空間論とかないの, という無茶ぶりとか書きはじめるときりがない. 全国紙上数学談話会 のリンクのメモだけしておこう.
数セミメディアガイドのページ, 何か告知にも使えるのだろうか. 今後利用を検討したい.

2013年10月28日月曜日

量子力学と群の表現論: エネルギー固有状態と群のユニタリ表現の表現空間

Twitter で石塚さんとこんなやりとりをしてきた.
"量子力学で, ハミルトニアン H がある変換群 G で不変であるとすると, 1 つのエネルギー固有値 E に属する H の固有空間は G のユニタリー表現の表現空間になっている. (…) これが, 原子や分子の状態や素粒子の分類に群論が有力な道具となる理由である. " (群の表現, 物理学辞典 (培風館)) へえー
@Yusuke_Ishizuka 大雑把に言うとただの同時対角化です
@phasetr すみませんが, ピンと来ないので何か文献を教えてください
@Yusuke_Ishizuka 新井先生の物理の中の対称性の七章あたりでしょうか. とりあえず連続群だとして, とか書こうと思ったところでブログに書けばいいと気づいたので, 後でなんか書きます. きちんとやると大変ですが, 気分的には大したことないです
@phasetr ありがとうございます. ブログ楽しみにしますね
というわけで簡単にまとめる. 参考文献としてはいつも通り新井先生の本で, 『物理の中の対称性』だ.



7.8 節【物理量の時間発展と保存量】が大体それだ. 正確にいうとこの節ではちょっと違うことをしているが, 次に書くようにすぐ直せる.

Hamiltonian \(H\) がある (連続) 群 \(G\) で不変だというのは, \(G\) のユニタリ表現 \((U_g)_{g \in G}\) を取って, \(U_g H U_g^* = H\) が成立することとする. 書いていて私がやりづらいので, \(G = \mathbb{R}\) としよう. ここで Stone の定理から無限小生成子 \(T\) があって \(U_x = e^{i x T}\) と書ける. (一般の場合は SNAG 定理 を使う. ) ここで不変性の定義式を \(x \in \mathbb{R}\) で微分した上で \(x = 0\) とし, 生成子同士の関係式に変えてみよう. (念のため書いておくと, 定義から Hamiltonian \(H\) は時間並進の生成子だ. ) \begin{align} \frac{d}{dx} U_x H U_x^* |_{x=0} = \left\{i T U_x H U_x^* - U_x H U_x^* (-i T) \right\} |_{x=0} = TH - HT = 0. \end{align} 元の不変性から「生成子同士が交換する」という条件が導かれた. ここで \(H\) はもちろんのこと, Stone の定理から \(T\) も自己共役であることに注意する. 自己共役というのは要は Hermite 行列ということであって, 交換する Hermite 行列は同時対角化可能という線型代数の定理によって \(H\) の固有空間が \(T\) の固有空間でもあることが分かる. 元の表現をここに制限すれば表現空間ができたことになる. 以上, 大雑把な説明だ.

これを見れば分かるように線型代数は量子力学の基本的な認識を形作る上で数学的に大事な役割を果たす. 学部 1 年で学ぶ線型代数で十分だが, その代わり学部 1 年を学ぶことは完璧に分かっていなければいけない. 数学科水準で理解するくらいでないと多分量子力学の理論にはついていけない. 少なくとも物理学科に来る人間なら量子力学を単なる計算の道具ではなく, きちんと学びたいと思っているだろう. そういう人は本当にきっちり線型代数を詰めておく必要がある.

大雑把と言った以上, 細かいこと, そして普通の Schr\"odinger を扱っているときに実際に数学的に起きる問題がある. それを簡単に書いて終わりにしよう. まず本の『注意 7.34』に書いてあることだが, 普通の意味で可換 (\(TH - HT = 0\)) だからと言って \(H\) が \(T\) の保存量になる保証はない. これは大抵の場合 \(H\) と \(T\) の少なくともどちらかは非有界になるからだ. 非有界作用素については「強可換」という概念があり, 強可換なら問題ない. この辺は『量子力学の数学的構造』や『量子現象の数理』を読んでほしい. 興味があるという向きにはセミナーを開いてもいい. 関東近郊なら何とか出向けるのでご相談頂きたい.

  

他の問題だが, 物理としては瑣末と言ってもいいのだけれども, 数学的に根本的な問題として \(H\) が固有値を持っているかという問題がある. 期待としては「スペクトルの下限である基底エネルギーは固有値であってほしい」が, これが怪しくなる物理現象を (赤外) 発散という. ちなみに私の専門だ. \(T\) も同じで, 固有値を持つかどうかが問題になる. 一応, 「固有空間」があることを前提にしているから.

上の問題と同じく物理というより数学の問題になるが, 非有界作用素の取り扱いが必要になるために色々数学的に面倒くさい.

ついでなので書いておこう. 「これは大抵の場合 \(H\) と \(T\) のどちらかが非有界になるからだ」と書いたが, では両方とも有界になることがあるか, という話がある. それはある意味で山程ある. 量子スピン系を考えるとき, 作用素環的に初めから無限系を考える場合もあるが有限系から熱力学的極限を取る場合もある. 有限系は有限次元なので, そもそも非有界作用素の出番はない.

2013年10月24日木曜日

Terence Tao に線型代数で殴り続けられる夢を見た

線型代数トークで kyon_math さんのこの辺からの話が面白かったので記録しておく.
「理解する」のと「研究する」のはかなり違うと思う. (自分も含めて) 理解するだけの人なら世の中にはたくさんいるが, 数学が究極的に目指していることは, 難解で複雑に見えることを単純かつ簡明に, 誰でも理解できるレベルにすることにある.
難解かつ複雑なことでも, 技術が進み, 社会的な理解が進むと簡単になる (ものもある). 例えば複素数. 大昔は複素数そのものが難解で, しかも一流の数学者の研究対象であったが, いまや高校の教科書に載っているレベル. これは社会的な理解が進んだ例.
リー群やリー環だって, ここまで一般的になるとは思われていなかっただろう. リーマン多様体なんかもそうだ. いまや空気のごとき存在. ガロア理論は学部で習う.
しかし, 理解にはたくさんのレベルがある.
例えば, 学生時代に学んだ線形代数. その時は「それなりに」理解していたはずだが, その後, 研究者の卵→教師→中堅研究者と進むにしたがって, 見えている地平線はまったく異なってきた. そして, これからも異なって見え続けるだろう.
まぁ, 理解が進んで見えてる地平が異なってこないとすると, それはあまり深くないってことだし, そんなの一生かけて研究しようとは思わないよな. #線形代数の帝王になる
線形代数じゃなくって岩澤理論とか類体論とか書けばかっこ良かったなぁ. #誇大表示 とはいえ, 線形代数の帝王になるのでさえもかなり狭き門だが.
むかしハウ先生の研究室にお邪魔してた時, いまは亡きラングが闖入してきて「きみ, ロジャーは線形代数の帝王なんだよ, 知ってるかい? 」「もちろんよく知ってますよ」と答えておいた. #学生だと思われたんだと思う
線形代数がどれ位深いかというと, 最近のものではホーン予想. http://bit.ly/1aj4SlV http://bit.ly/1aApSpG
ホーン予想: エルミート行列の和 \(C = A + B\) を考えたとき, \(A, B\) の固有値から \(C\) の固有値の範囲が線形不等式で書けるという単純なもの. ワイルが問題提起, 1962 年に予想されて, 解けたのが 1998 年.
ホーン予想の解決は Klyachko と Knutson-Tao によって独立に得られた. #ホーン予想1
で, ジャグラーの Knutoson と紅顔の天才 (だった) Tao の解法はハニカムモデルと呼ばれ, リトルウッド・リチャードソン係数の計算などに幅広い応用を持つ画期的解法だった. http://bit.ly/1aApSpG #ホーン予想 2
ま, みんなよく知ってるはずのエルミート行列の固有値問題でさえこれほどの深みを持っていた. そして, その深さを見抜くには特殊の才能が必要である
よく知っているはずのなんでもない事実の裏側を, ほんの少し覗くととてつもない深淵が待ち受けている. それを見抜く目を持っているかどうか. 理解のレベルとはそういうものだ.
あとこの辺.
いやいや私のような若輩者には勤まりません. RT @Paul_Painleve: 線形代数雑誌の編集者はいかがでしょうか? NLAAhttp://onlinelibrary.wiley.com/journal/10.1002/ (ISSN) 1099-1506 LAA http://www.journals.elsevier.com/linear-algebra-and-its-applications/
@kyon_math 若輩って言っちゃあアカン立場でしょうに笑 線型代数の専門誌は数値解析やグラフ理論といった応用数学の話題が多いのですが, 表現論的にも面白いのではないでしょうか? 微積分のほうは微分方程式の中で普通に使われてて, 雑誌の形で切り分けられないのでしょうね.
@Paul_Painleve 線形代数たっていろいろありますからね. 0 と 1 のみの行列で各行各列にある 1 の和がある一定の値になるものの総数というと, 行列の問題ですが, 本質は組合せ論. それを組合せ論の手法でなく線形代数で解けるかというのが面白いと感じます.
とりあえず線型代数をなめている学生はこの辺で殴打していきたい.

2013年9月27日金曜日

Hilbert 空間メインの関数解析の初学には日合•柳の『ヒルベルト空間と線型作用素』をお勧めしたい

イケメンエリートのよぬすさんが線型代数のテキスト選定をしていたのでちょっと話してみた.
線形代数だとすると, テキストは何にすべきなのだろう......
@Yonus_Mendox ヒルベルト空間論とか読めばいいのでは
@phasetr いえ, 初めて学ぶひとと読むための本なので...... やっぱり一周して齋藤正彦でしょうかねえ. ──ところで, ヒルベルト空間論としては何を読めばよろしいのでしょうか.
@Yonus_Mendox 日合•柳のがすっきりしていて良い本です
@phasetr ありがとうございます. 作用素かあ......
@Yonus_Mendox ヒルベルト空間自体は簡単なので一般論としてはあまりやることないのです. 具体的なソボレフがどうの, とかいうことになると微分方程式などと絡めて色々やることありますが. 分かりやすい空間だからこそその上で作用素論などがうまく展開できます
日合・柳の本というのは『ヒルベルト空間と線型作用素』だ.

Hilbert 空間だけでなく Banach 空間の議論も少しある. 関数解析の基本定理が網羅されているので, 関数解析の本としても使える. 巻末の付録が尋常ではない程充実していて, Krein-Milman の端点定理や Riesz-Markov-Kakutani なども丁寧な証明つきで書いてある. Lebesgue が分かっていないとスペクトル定理の証明で少し詰まるかもしれない. 本のはしがきでも説明されているが, あえて作用素環には踏み込まずに基礎となる作用素論について説明している感じ. ただ, ところどころ, functional calculus や非可換 \(\ell^p\) としてのコンパクト作用素・ Schatten クラスなど作用素環でも大事な話は書いてある. 3 章のスペクトル定理と 4 章のコンパクト作用素, 付録をきちんと読めば元が取れる. 作用素論を専門にしようという人は作用素論の話題に特化した 5 章以降も読むといいだろう. 私は 4 章までしか読んでいないが, すっきりとまとまっていて非常によい本といえる.
Hilbert 空間と言えば我らが新井先生の『量子力学の数学的構造』があるが, 一般にはあまりお勧めしない.

I では Hilbert 空間の基礎からはじめて非有界作用素, 自己共役作用素, スペクトル分解まで議論する. II ではある程度具体的な量子系の解析と場の理論・量子統計で必要な Fock 空間の話をする. 関数解析入門にも使えるが, Banach 空間論はほとんど触れられていないのでそこについては本当に入門の入門くらいにしか使えない. 量子力学への応用に特化しているので非有界作用素の話が中心になるが, 必ずしも一般の数学でその作用素論をよく使うわけではない. 非有界作用素の議論はがかなり面倒なので, その辺を使わない人にはあまりお勧めしない. 一般の数学向けには用途には日合-柳の『ヒルベルト空間と線型作用素』がよい.
Twitter ではよく言っているが, 線型代数なら私は齋藤正彦の本が好きだ.

Amazon のこの書評は以前私が書いたものだ. こちらにも引用しておこう.
数学や他の分野の方々には申し訳ないですが, 物理の人間として書きます. 経験に照らしてみても, (非数学の) 初学者が気楽に読めるような本とはいえませんが, 非常に良い本であることは間違いありません.
(初等) 物理の中で線型性は非常に重要な概念です. まず, 数々の物理法則は微分方程式の形で書かれますが, 大抵は線型の微分方程式です. 例えば, 大抵の電磁気学の本は, 静電場を記述するクーロンの法則からはじまると思いますが, 重ね合わせの原理を用いて, 多電荷の系へ拡張し, さらに電荷が連続分布した系へと拡張していきます. このとき用いる重ね合わせの原理を数学的に述べると, 微分方程式の線型性です. また線型空間の理論は座標による表示を離れる, という幾何学的な面もありますが, これは物理法則の共変性を定式化する際に大事になってきます.
もっと本質的に線型性が出てくるのは現代物理の要たる量子力学です. 正確には量子力学で用いるのは無限次元の線型代数 (関数解析) ではありますが, 基本的な思想を学ぶには有限次元の線型代数 (本書の程度!) で十分です. 応用上も大事な正規作用素のスペクトル分解 (対角化と同値) について触れてあるのも嬉しいところです.
最後に行列の解析的な取り扱いがありますが, これには, そもそも行列の関数 (指数関数や対数関数) を定義する, という応用上も大事な議論が含まれています. たとえば, 量子光学で現れるコヒーレンスを扱うときなどに, これを知っていると, 戸惑いがなくなると思います.
かなりマニアックな話 (数理物理的観点) で恐縮ですが, Perron-Frobenius の定理の前に「工学や経済学への応用上重要」という説明がありますが, この定理は厳密統計力学への多数の応用があります. この定理には正値性保存 (または改良) 作用素の理論という無限次元版がありますが, これはたとえば, 汎関数積分 (経路積分) 法の威力を高めてくれます.
学部の 4 年にもなれば, 物理で線型代数が重要なことは身にしみて分かります. 特に量子力学においては決定的です. ある程度線型代数に慣れたら, 物理の人にはぜひともアタックしてもらいたい本です.

2013年7月9日火曜日

何度も言っている線型代数と量子力学と関数解析と数理物理的なアレ

イケメンエリート野郎のオペのコンPが 次のようなことを言っていた. それに対していつも言っていることをまた言ってきた. オペのコンPにももう何度も言っている気がして申し訳無く感じてアレだった.
量子論を物理として理解するなら, 連続な場合は離散的な場合のアナロジーでいいので線形代数で十分では?
@kbl_30 大分前に Amazon の線型代数入門の書評にそれ書いておきました
@phasetr ねくちゃんが関数解析から攻めようとしていたので
@kbl_30 @phasetr アナロジーではなく関数解析でないとこまる, という場面はやはり出て来るのでしょうか.
@Yonus_Mendox @kbl_30 困るときは物理が悪い (物理的考察が甘い) と判断するべきです. むしろ関数解析をきちんと使って物理的に満足いく議論が出来る方が珍しいくらいなので, その意味でも数学的にどうこうというのはおすすめできることではありません
@Yonus_Mendox @kbl_30 ただ無限次元の線型代数として把握していれば色々なことを 統一的に理解できて楽な部分はあると思っているので, その辺について今度東大かどこかで話したい (そして動画化したい) とは思っています. 忙しくてそちらの話は全く進められていないのですが
@phasetr なるほど. 言い換えれば, 物理にとって関数解析は「無限次元の線型代数」に過ぎないので, 大抵はアナロジーで充分, ということになりますか.
物理を数学的に厳密に, とか息まく新入生などがいるかもしれないが, そういう人はとりあえず私を見よう. 物理も数学も中途半端な出来損ないの醜いキメラだ. こうなる覚悟がある者だけ数理物理に来よう. 来るなら歓迎はするが勧めることはできない.

2013年5月14日火曜日

Hilbert 空間から始めるよく分からない数学 セミナー初回の内容をもう少し詳しくした


なかなか時間が取れなくて非常にアレなのだが, 大体話したいことはピックアップした. Twitter で この辺 から適当に呟いたのは下にまとめる.

その他, あとで動画にもする予定で, そこではさらに詳しく話す予定なので, それに合わせて今から詳しい内容も作っておきたい. 特に特殊関数周りの具体例を色々あげておきたいと思っている. 今すぐに見たいという向きもあろうから, 参考文献を軽くあげておこう.

全体的な話として, まだ買っていないのだが「直交多項式入門」がかなり気になっている.


とりあえず触れようと思っているのは, Legendre 多項式, Legendre 陪関数, Hermite 多項式, Laguerre 多項式, Fourier 級数のあたりだ. ちなみに今はじめて知ったのだが, Chebyshev 多項式は この PDF によると, 計算機の中での応用があるらしい.

Legendre や球 Bessel については この PDF が参考になるかと思う. 自分が知っている話, ということで物理への応用について話す予定で, 正にそういう話だ. Laguerre は例えば この PDF を検討している. 上記多項式もそうだが, Hermite についても手元にある本含め, まだ資料をあさっている.

今すぐ参考文献を知りたい向きは, 基本的には偏微分方程式を解くところで使うので, その辺で探すといい. 「物理数学 Legendre 多項式」などで探せば色々出てくる.

Fourier は熱方程式, 波動方程式, 電磁気学あたりで探すといいだろう, 数学の本ではあるが, 逆問題を通じた応用的な色彩が強い本として, 波動方程式への応用については下記の本の前者を, 熱方程式への応用については後者を参考にすると楽しいだろう.


物理への応用に関してよい参考書は今探しているところだ. 波動の本でもいいが, 電磁気 (電磁波) からの話が個人的に気に入っているというか感覚が掴みやすかったので, その辺で探すといい. もちろん, 自分の専門に近いところ, 自分にとって分かりやすいところで探すのが一番いい. いいのがあったら教えてほしい.

多項式から話題を変えるが, 例えば変分というのがある. 変分原理として物理の各所で現われるが, 量子力学で基底エネルギーを出すのに使うこともある. 実係数の微分方程式への数学的応用ということでは Brezis の本が定評がある. もちろんかっちりとした数学の本だ. Hilbert 空間を中心に議論されている. 最近演習問題も追加された英語版も出版されたので, 買うならそちらを買った方がいいかもしれない. 東大の微分方程式系の研究室での学部 4 年のセミナーでも使われることがあるようなので, そのくらいきちんとした本だ.


また, 何度も紹介しているが, 解析力学というか幾何学での変分ということで次の本が比較的分かりやすく, しかも面白い.


読んだことはないのだが, 物理での変分原理については次のような本もある.


これまでの微分方程式の話とは大分変わるが, 作用素論につなげるので, 量子力学とスペクトルの話もしたいと思っている. これについては日合-柳本はもちろんのこと, 数理物理としては新井先生の本がいい.

   
量子力学での変分に関する数学的に精密な話も書いてある. 他には, 作用素の関数やユニタリ表現に関する話も大事だ. 作用素の関数については先日ワヘイヘイオフで詳しい話を聞かせろ, という要望を受けたので, 別途早めにまとめようと思っている.

では以下, Twitter での発言を抜き出しておく.
Hilbert 空間から始めるよく分からない数学のセミナー的なアレの原稿, いい加減作ろう. イントロでずっと固まっているが, そろそろ具体化したい. イントロだけはもう少し線型代数全般について話をしたい 
まず超大雑把に言って教養でやる線型代数らしい線型代数と, 微分方程式方面と関わる方面の話と, 関数解析または作用素論的な抽象論みたいな感じの話がある的な話をする 
加群への展開とか, Lie 群への展開とか数学として取り逃すところは色々出てくるが, この辺は私の数学力的に手に負えないところが出てくるので色々ある, とだけ言って逃げる. ただ表現論とFourierと, みたいなところと量子力学とかは少し触れたい 
Hilbert 空間の抽象論と作用素論的な展開と量子力学との関係的なアレはあとで詳しくやるから, 軽くこなす. まずは有限次元の方か 
有限次元と言ったところで専門に近い所で見ても色々あるし困る. とりあえずハバードだとか, 直接的に研究に結び付くくらいやばい, という話はしよう 
あとは数値計算でも使う的な話は入れよう. 微積分との絡みで平衡点近傍の安定性とかそんな話もしよう 
脱線するが, 平衡点近傍の話, 多分力学系とかそういうところでも使う. あまりきちんと勉強していないが, 山本義隆の解析力学にも解説あるし, ゆきみさんいわく常微分方程式と解析力学にも解説あるらしい 
これは適当な線型化から系の性質を調べるとかいう話で, 微分積分や力学とも深い関係がある. 機械工学とかその辺でも確か出てくるはずとかそんな話をしたい
あと標準的なコースの重要性はきちんと言わないといけない. 行列式と固有値, 固有ベクトルあたりは何をネタにしよう. 物理の各所で出てくるが. 固体物理というか連成振動とかその辺か. あと統計学での主成分分析とかそういう話か. この辺, 具体例を仕入れる必要がある 
固有値, 固有ベクトルは量子力学とかその他物理でも色々展開があるという話はしよう. 物理の話ばかりしているのもどうかという気はするが, 応用はそれしか知らない無学な市民だった 
Googleのページランクみたいな話もしよう. 確率との関係とかエルゴードとか言っておくと響く向きには響くだろう. これ, 数値計算とも関係するかなりクールな話なので盛り込みたい 
とりあえず有限次元はこんなものか. 無限次元というか微分積分への接続として平衡点近傍の話をもってくる方がいいか. あとは微分作用素と積分作用素の線型性は必ず触れる. 我が魂 
@aki_room 毎回2時間くらいのを4回くらいの予定です. ヒルベルト空間とその上の作用素論を3回でスペクトル分解までやろうという無茶な企画. まともに回るか分かりませんが,とにかく一度やってみようという無茶企画です 
http://tinyurl.com/d6ggdkr 【phasetr 【参考】 http://www.ulis.ac.jp/~hiraga.yuzurugf/LA/matlab/gallery.shtml】 
@JosephYoiko ありがとうございます. 例を作って図示まで自分でやるのは結構手間なので助かります 
関数解析的な意味での無限次元の線型代数, 何を話そう. 時間があるから適当に抜粋するが, ネタとしては色々書いてためておこう. まずはブログの方にも書いたTaylorと微分作用素の関数と並進とかその辺か 
あと微分作用素の固有値展開からのFourierか. Fourierは高校でやった三角の積分が直交関係を表す的な話は入れないといけないだろう 
今回, 個別の話をやっている余裕はなかろうがLegendreやらBesselやら, 量子力学とか電磁気周りでの微分方程式を解くときにも出てくるという話も盛り込みたい 
これは個別の関数の相手もそれはそれで大事なのだが, 理屈としては線型空間論で一括処理できるのだ, という認識を持つことで数学的, 精神的な負担を減らすことを目的に, 必ず触れるようにしたい 
あとアレだ, モノによっては多重極展開とか応用上の意味があったりもするから, 単なる数学ではない部分もある的なアレ. 変分とか無限次元の微分とかいう話はすると楽しいかよくわからないが, ネタとして書いておこう 
イントロはこんなものか. ネタ多すぎるので確実に削るが, 他にもどこかで話すなり, 最終的に動画にするときには盛り込むからいいか. あとスペクトルの話はきちんと触れ直そう 
関係ないが, 今日の math-phys の arXiv に非可換調和振動子に関する廣島先生と佐々木さんの論文が出ていた. これはこの間の埼玉大のセミナーでも少し話したが, 若山先生が最近やっているやつで数論というかゼータと関係があるやつ
考えてみれば, Hubbard や Google のページランクについては動画を作ったのだった. それも紹介しておこう.

2013年5月11日土曜日

(楕円型) 非線型偏微分方程式という言葉が通じずに衝撃を覚えた記録

ここ で次のようなしょうもないことを呟いたら RT 経由で個人的に衝撃的なリアクションを頂いた.
図解雑学 楕円型非線型偏微分方程式
リアクションというのは これ だ.
非線形楕円型偏微分方程式とは
語順が変えられている上に線型の字も変わっているが, とりあえず次のやり取りをした.
@_handyfox 楕円型の偏微分方程式と非線型偏微分方程式を両方調べて頂ければ良いのですが, とりあえずhttp://www.encyclopediaofmath.org/index.php/Non-linear_partial_differential_equation とか 
@phasetr ありがとうございます。 何だかとっても特殊なものかと思ってました^^; 組み合わせなのですね、こんなサイトがあるのも、知りませんでしたヽ(´∀`) 
@_handyfox 楕円型はともかく,非線型の「線型」は線型代数の線型なので, 特に難しいことないと思ったのですがそれはともかく,流体のナビエストークスだとか応用上大事な方程式がたくさんあります. 学部くらいで出る方程式は,非線型だと扱うのが大変なので線型化した物を扱うのが主です 
@phasetr はい、私ら電気系学科の出身だと、電磁気学で習うような代物だと思います。 非線形は記憶にないだけかもしれませんが、やらなかったような気がいたします。 「楕円形」がよくわかりませんでしたが、式でわかりましたw 
@_handyfox 一応書いておくと,楕円型(楕円形だと意味が変わってしまいます.formではなくtypeの意味なので) というのはラプラシアンみたいなものです 
@phasetr メモメモφ(∇^ )気を付けます。 ラプラシアンですか、感覚的になんとなくつかめます。
正直, ありとあらゆる意味で分かってもらえていないと思っているのだが, それはともかく, 電気系の方に楕円型はともかく「非線型」が通じないというのは衝撃的だった. 楕円型も勝手に字を変えられていること, それはそれで衝撃なのだが.

非線型光学というのがあり, レーザー, 結晶や光ファイバーなども関係があるし, 非線型素子という言葉もあるくらいなので電気の人なら馴染みがあると勝手に思っていたのだが, そうでもないようだ.

別にリプライ先の方が不勉強だとか愚かだとか言いたいのではなく, 他学科における (非線型の裏にある) 線型性に関する認識, 想像以上に低いのでは, という危惧を抱いたからだ. 例えば機械工学周りの人なら流体などで非線型の方程式をがんがんぶん回すので, 同じ感じで線型・非線型という言葉はある範囲の工学系の人にはかなり自由に使ってよさそうと思っていたが, 結構まずそうだ. ある範囲には電気系も入っていると思っていたので想定外である. 電気系と言っても広いと言ってしまえばそれまで, とも言える.

だからどう, というのもあまりないのだが, 何かどこかでやるときの参考になるかもしれないと思い, メモを残しておきたい.

2013年5月5日日曜日

応用数学だとか数理工学だとかの何かアレ


経済とか物理について Twitter で これ とか これ みたいな呟きしていたら, こんなツイート を見つけた.
数学から工学に移ったときは都落ちしたような悲哀を少し感じていたものですが 「工学の問題にどうやって数学を使うか」という問題はやってみると中々面白いです。 ノイズ、精度、計算コストの制約があるので単に数学的に解けば良いわけでもない。 そういう事がわからず、最初はかなり空回りしました。
前にも書いたが, 応用数学というべきか数理工学というべきか, 工学での数学というべきかよく分からないが, つどいあたりでこの辺, 紹介してみたいと思っている. 参考にしたいのはこの辺.

  
あと Google のページランクや符号理論の話とかしてもいいのか, とふと思った. 興味がある向きはページランクは これ とか, 符号理論は これ とか参考にしてほしい. 次のような本もある.

 
折角だしこの辺もどこかで話そう. 動画も改めて作りたい.

2013年5月4日土曜日

経済や物理で必要な数学についてのやりとりまとめ:微積分と線型代数をきちんとやろう


Twitter で これ とか これ みたいな呟きしたら教官含めいくつか反応があったので, 折角だから記録しておく. まず上の元呟きを転記しておこう.
https://twitter.com/gametheory4/status/324829386643763200 よく分からないのだが経済,本当に数学必要なの 
数学関係者, 経済の数学というと無駄に確率微分方程式を押してくるが, そんなのを使っている経済の人, 実は経済学内部では異常者だったりしないの
適当にやりとりをまとめておこう.
https://twitter.com/gametheory4/status/324829386643763200 よく分からないのだが経済,本当に数学必要なの
【経済学部生間の数学力格差についてっていう論文かきたい((o(∇^)o))】 
@phasetr ゲーム理論とか必要では. 
@phasetr 勉強するのにも高校+αの微積分と線形代数は必要なのでは? 後、確率微分方程式とかゲーム理論とか使う分野もありますし。 
@functional_yy ゲーム理論の難しさ, 数学の難しさというより現実とすりあわせた仮定を設定する難しさという印象ですが素人なのでよく知らないというアレ. あと皆が皆ゲーム理論必要なのでしょうか. これもよく知らないので 
@hymathlogic 統計学ができる程度の能力を持たない大学生は一人残らず射殺すべきという見解です 
@hymathlogic 正確には統計学が必要な学部学科,という条件下で 
@phasetr 統計学ができる程度の数学力,と書いた方が良かった 
@phasetr 分野により使う数学も変わってきますね. 統計, 確率, 微分方程式, ゲーム理論, 認識論理(論理学)など.
やりとりその2.
@hymathlogic 統計学ができる程度の能力を持たない大学生は一人残らず射殺すべきという見解です 
@phasetr 統計学ができる程度の数学力 #とは 
@greengrimghost 教養程度の微分積分と線型代数が使える.「理解」は問わない
@phasetr なるほどその程度なら
やりとりその3:教官陣と.
@phasetr https://twitter.com/phasetr/status/324845187148943361 とhttps://twitter.com/phasetr/status/324838051627032576 と見比べると, 相転移Pさんは,物理学も経済学も異常な一部を除けば数学はいらん,という主張(もしくはそういう数学の定義)という理解で良い? 
@tetshattori 経済の方は確率微分方程式とか無茶なのばかりよく出てきますがそこまで無茶なことしないと経済できないの,という話です. 物理に関しては微分積分と線型代数の守備範囲なめてんのか,という話です. この辺を極端な形で表現しました 
数学以外の数学はとても難しいのです。(^^;; RT @phasetr: @tetshattori 経済の方は確率微分方程式とか無茶なのばかりよく出てきますが そこまで無茶なことしないと経済できないの,という話です 
@tetshattori 社会学にとって最低限必要な範囲の統計学が処理できる程度の数学力を持っていない学生は 問答無用で殴り倒すことを前提にしています 
@phasetr つまんないこといっちゃうけど,「何が数学か」とか「どのように使ったら使ったと言えるか」とか, その手の問いは(研究においては)してもしゃあない気がします @kyon_math 
@tetshattori @kyon_math 一応,背景としては新入生が線型代数は何に使うの, という感じで苦しんでいるのでとりあえず物理(と物理を使う工学)では大事だし, 教養の線型代数と微積分できれば相当範囲の物理できますよ,みたいなことを言っておこう,という感じです 
@tetshattori @kyon_math 細かいこといえばきりがないというのはいつもの話で, 細かい話が気になる人たちから突っ込みが来るのは当然として, そういう層に向けたメッセージではないので,今回のような分かっている人からの突っ込みは別途処理ということで 
@tetshattori @phasetr 「数学をどのように使ったら」と言うのはとても大切で、そのような視点からの発言です。 誤解のないように。 
@phasetr その文脈ならば経済学は,微積線形に凸解析(分離定理)を加えておけばかなり,かと (それでゲームとファイナンスが少しやりやすくなる)
余談として これ とか これ も足しておこう.
数学から工学に移ったときは都落ちしたような悲哀を少し感じていたものですが 「工学の問題にどうやって数学を使うか」という問題はやってみると中々面白いです。 ノイズ、精度、計算コストの制約があるので単に数学的に解けば良いわけでもない。 そういう事がわからず、最初はかなり空回りしました。 
@各位 Twitterで極端な話をすると教官陣から突っ込みを受けるし現在進行形で私が突っ込みを受けているので, それが怖い向きは十分に注意するように. あとRTで回ることまで念頭に置くように

2013年4月26日金曜日

Twitter まとめ:微分積分と線型代数からの突然の幾何学と解析力学

「自然な~」「自然に~が定義できる」というのは本などでよく見かける言葉だが, 初学の段階では何がどう自然なのか全く分からないこともよくあり, 大変腹立たしい. 今回, ここ で「自然な直交座標」というので悩む若人がいたので, 図々しくも老人が出しゃばった話をまとめたい. 今見たら流れを把握せずに変なことを言っている部分があったので猛省している.
自然な直交座標っていうけど逆に不自然な直交座標ってなに?私の発想力じゃ思いつかん 
@dream_taro 正規じゃない場合とか? 
@zomi1202 あー、なるほど。でもそれだったら正規直交座標って書いてくれればいいのにね 
@dream_taro あるいは違うかも。どういう文脈? 
@zomi1202 重積分するよー、暗黙のうちに自然な直交座標が入ってるのを仮定してるよー。って感じ 
@dream_taro んん?? 座標入ってるってベクトル空間に入れる、ということを想定してるのかな?? 
@zomi1202 文脈みたらやっぱり正規直交座標ってことっぽいと解決した 
@dream_taro @zomi1202 微妙なところですが,普通(1,1)/√2,(1,-1)/√2 みたいなのが「自然でない直交座標」ですね. むしろ(1,0),(0,1)みたいなのを指して「自然な」というのであって,それ以外が全部「不自然」ですが,微妙な点があってアレです 
@phasetr @dream_taro んーと、よく理解できてないのですけど、 その"不自然"という用語は既に別の座標(基底)が定まってる事を前提としてるのでしょうか? 
@zomi1202 そうです.既に基底を取っているところに別のを取ってくるから不自然に見える,という感じ. 基底を取り替えれば不自然だった方が自然になるので「微妙なところ」と表現しました. はじめから座標を入れていなければ出てこない話です. きちんとやると幾何の話になって大変で面白い 
@phasetr 幾何というと全然分からないのですが、微分形式の周辺のお話ですか? 
@zomi1202 座標に依存しないで議論を展開するという根本的なところです. 微分法に関しては,直接的には微分形式というよりベクトル場かと思いますが
@phasetr ふむふむ。 ベクトルって早々と座標導入しちゃう本多いですけど、あえて入れずに論じるの楽しいですね。 (今読んでるベクトル解析の本がちょうどそういうのでした) 
@zomi1202 座標に依存したくない、という気持ちが分からないとつらいので難しいところです。 物理でも大事な話ですが
自然な直交座標系については上で書いた通りだ. 線型代数の話になる. この辺で既に微分積分と線型代数の根本的な結び付きが出てきているのだが, その辺は適宜勉強されたい.

それはそれとして, 座標系に依存しないで解析学を展開しようと思うと幾何学が出てくる, という話だ. 初学者にとっては出てきた結果が取った座標系に依存するかどうか, という話そのものがよく分からないと思う. 具体的に考えてみるとこういう感じだ. 3 次元の Laplacian を自然な直交座標系と極座標系で書いてみると次のようになる. \begin{align} \triangle_{\mathrm{o}} &= \frac{\partial^2}{\partial x^2} + \frac{\partial^2}{\partial y^2} + \frac{\partial^2}{\partial z^2}, \\ \triangle_{\mathrm{p}} &= \frac{\partial^2}{\partial r^2} + \frac{2}{r} \frac{\partial^2}{\partial \theta^2} + \frac{\cos \theta}{r^2 \sin \theta} \frac{\partial}{\partial \theta} + \frac{1}{r^2 \sin^2 \theta} \frac{\partial^2}{\partial \phi^2} . ORG-LIST-END-MARKER \end{align} 引用のために添字をつけたが, 当然同じ作用素だ. 何も知らずに \(\triangle_{\mathrm{o}}\) と \(\triangle_{\mathrm{p}}\) を見て同じ作用素と思えるか, という話. 化け物ならいざ知らず, 普通は無理だろう. 「見かけに騙されずに同じものは同じと思いたい」という欲求が「出てきた結果が取った座標系に依存するかどうか」という問題だと思ってほしい. Laplacian の定義については Riemann 多様体上での定義を参照されたい. Riemann 多様体自体の定義を把握するだけでも死ぬ程辛いだろうから初学者にはお勧めしないが.

上で微分作用素の話にしたが, 当然微分方程式も関係してくる. 物理でも同じような要求は出てきていて, それが解析力学の基本的な発想にもなっている. 「見かけに騙されずに大事なことを見抜く」というのも大事だが, もう 1 つ, 面倒くさそうな (見かけの) 方程式を上手く変換していって解きやすくする, という方向もある. 変換していった先と元の方程式が同じなら簡単な方で解けばいい, となって無事に話が終わるのだが, 本当にそうやっても大丈夫か, という保証を与えるのが解析力学の要点で幾何学的に大事なことでもある.

詳しくは解析力学で学んでほしいが, 量子力学で簡単な例を出そう. 水素原子の Schrodinger 方程式を考える. \begin{align} H = \triangle - \frac{e}{r}. \end{align} 詳しい部分は省くが, Coulomb ポテンシャルは球対称性を持っているし, Laplacian も球対称性を持っている. (本当は考えている空間の対称性も大事だが, 今は \(\mathbb{R}^3\) 全体で考えていることにしてとりあえず不問にする.) したがって球対称性を重視した座標系で書いた方が記述がすっきりする (だろうと思える). そこで Laplacian は極座標系で書いた方がいいのではないの, という発想が出てくる. これをやっても大丈夫, という保証をつけるのが解析力学・幾何学的発想だ. 解析力学は機械工学などでも大事になると聞いているので, 関係各位は頑張って勉強されたい.

工学の人でも読めるような本は知らないので, 関係各位はお勧めがあれば教えてほしいのだが, とりあえず物理の理論系や数学の人向けに読んで面白い本だけは紹介しておこう. どの本だったか忘れたし内容も忘れたのだが, 坪井先生の本のどれかに, 「現代的な幾何学ではベクトル場と微分形式を概念的に分離したことが画期的な成果だ」という一文があった記憶がある. どう大事なのかいまだに全く把握できていないので分かる人は教えてほしい.

         
新井先生の本は物理を元ネタに対称性の数学を議論している. 最後に超対称性まで出てきて無茶苦茶と言えば無茶苦茶だが, かなりアドバンストな所まで扱っているとも言えるので, 読んでいて楽しい本ではなかろうか.

山本義隆本は物理の人から見た解析力学の本だが, 数学的にもある程度のレベルまできちんと書いた本だ. 多様体論をきちんと使っているので, 物理の人の多様体論入門にもいいかもしれない. はじめて解析力学を学ぶのには死ぬ程きついと思うが, 私が幾何学できなさすぎるだけかもしれない.

読んだことはないが評判はいいので深谷先生のベクトル解析と解析力学の本を入れておいた. 読んだ人は感想教えてほしい.

上で少し書いた坪井先生の本, どれだか忘れてしまったので, それっぽいのを全部挙げておいた. 前書きに書いてあったはずなのだが, 本を持っていないし近くに置いてあるところもないので確認できていない.

多様体論自体でも丁寧な本として松本先生のも挙げておこう. まだるっこしいと言えばまだるっこしいと言える. 以前宇宙賢者とも少し話したが, 実多様体論は 1 の分割だとかで技術的なところがとても面倒くさい. 複素多様体をやった方がストレートに幾何幾何したところに行ける感じはあるが, よく分からない. ただ, 複素多様体だと多変数関数論がはじめに出てきて, そこでちょっとアレ感がないでもない. あと層係数のコホモロジーも微妙にアレ, という気もする. 結局何にしろつらかった.

Riemann 多様体のいい本, よく知らないのだが, 幾何学的変分問題はかなり読みやすい本なのでこれはお勧めしておこう. Riemann 多様体の勉強にもなるだろう, と前書き的なところにも書いてあったので, Riemann 多様体の基本的なところは多分おさえてあると思っている. 変分は解析力学でも出てくるし, 変分自体, 物理でとても大事な切り口なので, 数学的にきちんとやってみたいと思ってしまった人はやってみると面白いかもしれない.

2013年4月19日金曜日

@教官陣 もう少し理工系教養の線型代数のイントロをきっちりやれ

線型代数で苦しむ工学徒を 1 人救ってきた. あとでも役に立ちそうだからまとめておきたい. きっかけはかわずさんの これ を見て, 線型代数で Twitter 検索したことにはじまる.
"要するに線形代数とは「連立一次方程式」についての学問なのである。"というのを見たのだけど、 数学知らないしそんなに興味もないような人が言ってたら「う~~~ん、まあ、そうですね」で済ませる程度には正しいと思うのだけど、 うううううううってなっている
そしてこのようなツイートを見つけた.
線形代数って将来何に使うんですか 目的わからんから全然やる気起きない
そしてこの辺 からやり取りがはじまる.
@puentu http://phasetr.blogspot.jp/2013/04/hilbert_9.html 例えば(線型の)微分方程式を解くときに使います. 電気回路で出てくるフーリエ級数も線型代数として理解できます. グーグルの検索アルゴリズムのページランクへの応用もありますhttp://www.nicovideo.jp/watch/sm7599426 
@drizzt1233 @puentu 正確には土木とかなのかもしれませんが,建築でも構造計算用の(大規模)数値計算で線型代数を使います. 数値計算でかなり線型代数を使うはずなので,数値計算やる人には必須教養という印象です. 私は物理への応用がメインなので,それ以外はあまり詳しくない 
!!線型代数とかで検索してプロデュースしまくるTwitter活用術というのを思いついた!! 
線型代数はありとあらゆる対象を殴るための道具である 
@phasetr ほう難しそう…機械系に進むとしても結構使うものです? 
@puentu シミュレーションや機械制御で微分方程式を数値的に解く(コンピュータでシミュレーションする)ことになるかと思いますが, そういうときに使うはずです. http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_deail/q1316803553 やはり大規模計算で出てくるようですね 
@phasetr 参考URLまでありがとうございます!納得できました 
@puentu 理論面でも連続体の力学(流体や弾性体)で大事な応力がテンソルとして出てくるのですが,これもやはり数学としては線型代数の範疇です.理論の独学はつらいでしょうから,専門課程の教官に数値計算あたりでどう使っているかを知るために参考書を紹介してもらってはどうでしょう 
@puentu 理論面でも連続体の力学(流体や弾性体)で大事な応力がテンソルとして出てくるのですが, これもやはり数学としては線型代数の範疇です. 理論の独学はつらいでしょうから,専門課程の教官に数値計算あたりでどう使っているかを知るために参考書を紹介してもらってはどうでしょう 
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_deail/q1316803553… (笑)が割と真剣に泣ける 
一人, 線型代数に苦しむ工学徒を救ってきた 
とりあえず理工系大学の教養の講義に限定しておくが, 微分積分はともかく, 各学科用に線型代数がどこでどう使うのかくらいは初回の講義でフォローしてあげることをもう少し真剣に考えた方がいい. あとそのくらい情報共有しろ @教官陣

言いたいことは上の引用の最後の部分に尽きるが, 単に物理や工学に迎合しろというのではない. むしろ数学としての線型代数, 線型空間論を全力でぶん回してほしいと思っているくらいだ. もちろん役に立つから, というのもあるがもっと強調したい理由がある. それは数学としての線型代数は数学科以外だと独習が難しいだろうからだ.

具体的な行列式の計算などは確かに直近で役に立つことで, 必要なことではあるが, むしろ必要だからこれは各専門で嫌でもやる. だが, 線型空間論は必修などの強制力がない限りなかなか出来るものではない. 一回, 何らかの形で触れておけば記憶にフックができる. 一生使わなければそれでいいが, 使うことがあったときに何もない状態から該当する数学を引っ張るのはかなりつらい. そこに対する救済策だ. だからこその必修であって教養の講義なのだと思っている.

あと, ここ で何とかしようとしているのは, この辺を補うためであって, 逆にいうなら個人的にはその辺に活路があるという感じもする. また色々考えよう.


追記

記述不足で kururu_goedel さんから突っ込みを頂いてしまった. この辺 や この辺 から辿れる. 当然のご指摘であり, 大変申し訳無い.
@phasetr 相転移Pさんはなかなか厳しいなぁ、今更だけど。 応用の一覧表とかあればそれなりにフォローできるけれども、一つ一つ調べていくのは時間的に辛いです。 それに、そういうテストにでないことって言ってもガンスルーされることが多い気が。 
@phasetr ガンスルーされた上で、既に触れたことを「こういうことを言って欲しかった」とか言われるのはなかなか悲しい。 まあ時期が来ないとわからないことってあるのでしかたないんですけど。 
@phasetr それと、「計算は各学科でやるから」は、多分そういう方針でやると他学科の人たちに怒られるだろうなぁ。 もし本当に計算練習は自分でやってねってつもりでやっていいなら随分と楽なんですけど。 
@kururu_goedel 中で一応きちんと書いたつもりですが、数学側での完全カバーは無理なのでその他も協力しろ、 というのと、教官側に押し付けるのも無理があるので、それ以外も何か考えろ、という話です。 そして自分も何かしようと 
@kururu_goedel 教官でもないのでアレな学生まで対応していられませんし、大勢へのアクションも難しいですが、 できる範囲でできることはします。 あとタイトルは色々考えて、品がなくて嫌だなと思いつつも強い感じの釣りっぽくしました。 これについては人任せにばかりする気はないですし 
@phasetr ああ、そこ完全に読み落としてました。 教官の情報交換が足りないのは確かでなんとかなって欲しいですね。 自分の学科での使われ方をちょっとでも紹介してくれるとかなり違うかと。 
@kururu_goedel 勘違いしていました。 別の記事かtwitterで言ったことを今回の記事にも書いたつもりで、ろくに書いていませんでした。 ただ、何にしろ数学の教官にだけ押し付けるのは無理に決まっているので、その辺は多少なりとも自分でやれることはするという話。 追記します
応用の一覧表はあまりにも辛いが, 物理と物理を一定以上基礎にしている工学についてはちょろちょろまとめていきたい. 上で書いたように, 数学の教官に任せるには無理がありすぎるので, できることはこちらでも随時やっていく.

線型代数と量子力学は Togetter のこれ とか Amazon のこれ などはまとめてある. そのうちまた統計学まわりでのまとめなどもしたいが, そのためには統計学を学び直す必要もありつらい.

時期が来ないと分からないことがスルーされる, というのは分かる. 今ちょうど, 大学 1 年に通じるかは不明だが, それでもやってみようと思って Hilbert 空間論のセミナーの内容を考えている. 私も講義で言われたことに全く気付かず, あとで独自に到達したことというのは多分たくさんある. 意識にすら登らないから全く覚えていないが, 私が受けてきた教育を思えば, その辺はきっちり伝えてくれていたはずだから.

計算はある程度はやらないとそもそも身につかないから, 数学の講義でも触れる必要はあるだろうが, 最後は学生自身が頑張るしかない部分がある. やはり各専門への接続を意識した計算を出す工夫は必要だとは思うが. 大規模な計算や数値シミュレーションの話自体は手計算できる範囲を越えるので講義やレポートで触れられるレベルではないが, ただ実際に将来使うことは伝える必要がある. 大体の学科では実験の処理で統計学を使うだろうし, そこでの固有値の話などはきちんとする必要はあろう.

学部 4 年から修士くらいで, 実際に数学で困っていることについてアンケート取ったりしてほしい. それを学科内で学部生に伝えるくらいのこと, 各学科でやってもいいのではないかと思う.

問題は色々ある. 私にも手助けできることはある.

2013年4月16日火曜日

役に立つ数学という話, いい加減うんざりだ

新入生向けということで次のようなツイート があった.
この春、大学に入学した人:一般教養の数学の線形代数は、一生に一度の機会だと思って真面目に勉強しよう。 数学専攻以外でも機械学習/制御理論/信号処理などなどでも必要。 将来30,40歳になって機械学習について知りたくてPRMLを読みたいと思っても線形代数勉強してないと辛いよ。
この辺に関してタイムラインでいくつか反応があった. そしていつも言っていることではあるが, いい機会なので簡単に見解をまとめておきたい. Twitter の呟きとしては この辺 からはじまる.
https://twitter.com/tmiya_/status/19965623822192641 線型代数も知らないのに研究しようとか頭おかしいとしか思えない 
線型代数は役に立つし私の専門だが、私は役に立たない 
https://twitter.com/zusanzusan/staus/321114419142733824 工学での便利さは使っている当人たちが一番良くわかるというか、 むしろ当人たちにしか分からないから自分たちで何とかしてくれ感ある。 物理と関わるところでの話なら分かるが触れたところない部分ではどうにもならない 
あと役に立つからとか便利だから、とかいうのもういい加減どうにかして欲しい。 何の役に立つ、と言われたからこんな役に立つ、と返したら、自分はそんなの関係ないと言われるの、もううんざりだ
まず工学で何の役に立つ, という話だが, これはやはりやっている当人達から情報を出してもらうしかない. もっというなら, 自分達で学生を教育してもらうしかない. 学問ごとにどんな数学をどう使うかは大きく違うからだ. 例えば, 建築や土木, 機械工学などでは微積分で大事なのは実際の色々な計算だろう. ただ, 情報では \(\varepsilon-\delta\) 論法のような論理的な側面の方が大事だと聞いた. 同じ微積分であっても学問によって強調したい部分が変わってくるようなのだ. これは各専門内できっちりやってもらうしかない.

また, 上記の機械学習だと大事なのはむしろ統計学ではないのか. 統計学の中で使うから線型代数が大事なのだと思うのだが, 実際にどうなのかはやはりやっている人しか分からない. こういう感じで門外漢にはやはり見えない部分がある. また, 数学の人間にカバーさせるのには限界がある理由として, 多分本を読んでも線型代数を使っている場所が良く分からないだろう, というのもある. わざわざ線型代数に一章を割いていたりすれば使われていること, そしてそれを強調したいということは分かるが, 大抵は色々なところでちょこちょこ使われているという感じだろう. こういうときにその学問での線型代数の使われ方をうまくピックアップするのは不可能に近い. いちいち講義を担当する学科に合わせて色々な本を読み込んで講義しろ, というのは簡単だがどう考えても色々な意味で無理だ. また, 将来全く使わないとしても, 一度は数学科の数学に触れてもらいたいと思う数学科の教員なら, やはり応用が大事と言われても数学としての線型代数を伝えたいと思うだろう. その辺のバランス取りや調整は難しく, 各専門課程できっちりと教育する方が速い.

ちなみに, 物理や関係する諸工学での線型代数なら私でもある程度カバーできる. 物理学科だったので物理の中でどう使うか分かるからだ. その辺をやろうというのが今色々考えている「Hilbert 空間から始めるよく分からない数学」だ.

そしてもう一点, 根本的に「数学が役に立つ」という話, やめにしてほしい. 例えば実例として, 以前 Twitter で「数学が何の役に立つ」と言っていた浪人生がいた. 彼/彼女に, それこそ線型代数が Google 検索技術としてページランクに使われているという話をしたら, 「自分は Google のページなんて使わない」と返ってきて唖然とした. ちなみにその後に「頭のいい人達はもっと社会を何とかしろ」みたいなことを言っていた. その頭のいい人達が数学を色々使って役に立つをしていることもある, という話だったのだが.

「数学が何の役に立つ」「こんなところで役に立ちます」「そんなのは私には関係ない」というやりとり, 実は頻出だ. 理由は何だか知らないが, やりたくないというなら素直にそう言ってほしい. そうすればこちらも「ああそうですか. 大変ですね」とさらりと華麗にスルーできる. 役に立つかどうかとかいうどうでもいい話をしたり吹っ掛けてくるの, ただただ不愉快だからやめてほしい. そういうのは実際に役に立てている人達, 特に数理工学やら応用数学の人達に聞きに行ってほしい.

あと, ページランクの話は前に動画を作った. これ だ. 興味のある向きはご覧頂きたい. 私は読んでいないが, 次のような本もあるので, 紹介だけはしておこう.





追記

後で見たらこんなの もあった.
この春、大学に入学した人:一般教養の数学の解析は、一生に一度の機会だと思って真面目に勉強しよう。 数学専攻じゃないのにε-δ論法とか何の役に立つかと思ってるかもしれないけど、 ここで∃とか∀とかの使い方を理解しないと将来Coqとかで証明付きプログラムの開発をするとき苦労するよ。
Coq 使う人どれだけいるの, という感じだが, 使う人は使うしまあいいだろう.

2013年4月9日火曜日

Hilbert 空間から始めるよく分からない数学のリアルセミナーをやりたいので東大数理各位にご協力頂きたい

この間 TL で新入生が線型代数何ぞ的なこと言っていたのもあるので, 新入生向けに線型代数の世界を見せたい. 私が話せるのは解析学周辺しかないが, ないよりはましだろう, ということで. 大体, Hilbert 空間と線型作用素を基本に話す予定. モチベーションを高めることを目的に概論的な話で 4-5 回くらいに収めたい. というわけで, 東大数理の学生で, 話すための部屋確保に協力して頂ける方を募集している.

  
やる予定の内容を書いておきたい. 基本的には抽象論をやる. 作用素論方面の話に行ってスペクトル定理くらいまでやりたい. 作用素環などで大事になる方向だ. 非可換幾何への展開でまた \(L^2\) などとの関係が返ってくる. あと, \(L^2\) のような話は具体的な話はもちろん大事だが, これはイントロで少し触れるだけにする.

まずイントロでする予定の話. 線型代数は (数学内部または少なくとも物理と物理に近い工学で) 役に立つという話はされるだろうが, あまり具体的な話はされない (時間がない) だろうから, その辺の話から入る. 新入生向けなので, まず Hilbert 空間は何ぞというところを話す. 高校でもやった三角関数の積分が実は Hilbert 空間で意味を持つというところ, 微分積分と線型代数の交点というか親玉みたいな話としての関数解析で大事な空間という話をする. また, 物理でそれなりに色々な数学が出てくるが, 線型代数という視点でクリアで統一的な理解ができるから大事だよ, 的な話をする. 微分作用素, 積分作用素の線型性とかも話す必要がある.

物理または工学上大事な数学的道具立てとして大事な微分方程式があるが, 初等的な方程式なら具体的に解ける. 「線型の微分方程式」という中で既に線型性が出ているので, そういうところで解析と線型代数の関わりみたいな話がしたい. これを解く中で現われる直交多項式の話の「直交」も線型代数由来の話で, これが Hilbert 空間の話という感じで. 量子力学の数学的構造 I の 1 章の演習問題にいくつか書いてあるので, 一応参考文献として挙げておこう.
  
また, Taylor 展開と作用素論ということで \(e^{ipx}\) の話もしよう. 簡単に説明しておくとこんな感じ. \(f(x)\) を原点周りで Taylor 展開するとこうなる: \begin{align} f(x) = \sum_{n=0}^{\infty} \left( \frac{d}{dx} \right)^n f(0). \end{align} どうでもいいが, 量子力学っぽく \(p = -i d/dx\) と書こう: \begin{align} f(x) = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{n!} \left( i p \right)^n f(0). \end{align} ここで指数関数の Taylor 展開は \begin{align} e^x = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{n!} x^n \end{align} となる. ここで Taylor 展開の \(\sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{n!} \left( i p \right)^n\) は \(x\) に \(ip\) を代入したものと同じ形をしていることに注意して次のように書き換えてみる. \begin{align} f(x) = \left( e^{ipx}f \right) (0). \end{align} 指数関数に微分作用素を叩き込むという荒技を披露したが, 作用素論を使ってこれが正当化できます, みたいなことも言いたい. また, 作用素の指数関数 \(e^{ipx}\) は Taylor 展開で定義してしまうと解析関数に対してしか定義できないが, \(x\) だけずらす作用素と思えば一般の関数に対して定義できる. ここでユニタリ作用素とかそういう話になる. あと \(x\) だけずらす作用素 \(e^{ipx}\) の無限小生成子としての運動量という所から, 解析力学と量子力学の関係がどうの, みたいな話もちょろっと触れたい.

以上大体イントロで話す予定のこと. 2 回目から実際にもう少し踏み込んだ話をしていく. まずは Hilbert 空間自体の話をする. 「ヒルベルト空間と線型作用素」には Banach 空間の話もあるが, 時間的に多分カットだろう. 演習問題になっている定理にも少し触れたい. 完備性の話などもあるので, 証明もポイントをおさえて触れていきたい.

引き続き 2, 3 章を力づくでやっていく. 非有界作用素はゴツ過ぎて触れられないが, スペクトル定理はやりたい. スペクトル定理は無限次元版の対角化だ. スペクトル測度や解析関数カルキュラスとか出てきてやばいのだが, むしろ色々な数学との関係を話す機会として採り上げたい. Stone の定理と量子力学の話とかも一応入れる予定.

参考文献をまとめておこう. 1 つの展開としての作用素環方面, 特に (非可換) 幾何方面ということで, 数学会で PDF が公開されている 夏目-森吉 の「作用素環と幾何学」も紹介しておこう.

   

触れる予定はないが, 微分方程式関係と共に関数解析をやろうという感じの本も紹介だけはしておこう. こういう具体的な方から学ぶのが好きな人は頑張ってアタックしてみてほしい. また, こちらに興味があるという人は声をかけてほしい. トークしろと言われると困る部分はあるが, 一緒に勉強しようというなら時間さえ合えば付き合いたい. そしてプロデュースしたい.

  

2013年4月6日土曜日

Hilbert 空間から始めるよく分からない数学 5 やや番外編 何で線型代数で連立一次方程式扱うの?

先日, 数学科 (志望の) 大学新入生が線型代数で連立一次方程式扱うの, あれ何なの, 何の意味あるの, という風なことを呟いていた. 究極的には「数学を学んでいくうちに分かる. むしろある程度やらないとどうしても大事だ, という感覚は掴めない」と言わざるを得ない部分がある. ただ, そう言って初学者が持つ当然の疑問に (できる範囲で) 答えないのも問題だ. それも数学科の学生ともなれば尚更. というわけでできる範囲の返答をしてみよう.

次の二本立てとしよう.
  1. 連立一次方程式.
  2. 線型性という視点の獲得.
私の知る範囲ということでだが, 前者は応用向き, 後者は数学としても大事だが, 数学以外にとっても決定的に大事だ. 少なくとも数学科としては 2 を学ぶために取っ付きがいい題材として連立一次方程式を選んでいるというのが一番ではないか, という気がする. Hilbert 空間から始めるよく分からない数学に組み込んだのは, この 2 の部分の役割の説明にもなるからだ.

まずは当初の疑問に対して, ということで連立一次方程式についてだが, これについて私が直接知っているのは例えば微分方程式の数値解法との関係だ. コンピュータはダイレクトに連続量を扱えない (らしい) ので, 微分方程式という連続的な対象を適当に離散化して数値計算に落とし込むようだ. 全てかどうかまでは勉強不足で知らないのだが, 少なくとも線型の方程式なら連立一次方程式に帰着する. 応用上, シミュレーションなどは大事なので, そこで微分方程式を解く必要があり, そういうところで基本的な役割を担う.

あと, 数学的なところでいうなら, 取っ付きの良さが挙げられるだろうか. 連立一次方程式という「簡単な」対象を題材に線型代数の基本的なところを学ぶというのは, 1 つの見識と言えないことはない. 抽象論に行く前に具体的なところで感覚を掴むことは大事だから. 連立一次方程式を解く中で色々な代数的特徴の幾何的な解釈も交じえながらやると, またもう少し視野も広がる. ただ, これだとあまり何の意味があるの, というところに答えられている気はしない.

少し話は変わるが, この辺, 私が半端に物理から数学に行ったためにあまり数学科の教育事情を知らないので困るのだが, 実際のところ数学科での数値計算やシミュレーションの教育はどうなっているのだろうか. 組み合わせ論や計算代数などコンピュータ上でも厳密な計算ができる対象については, 実際に研究でも使われることはあるようだが, 微分方程式などの近似計算としての利用の場合はどうか. 元京大で早稲田に移った西田先生 (衝撃波の専門家と聞いている) は数値計算援用証明の開拓という部分もこめて, 数年前に解析学賞をもらっていたので, この辺の教育も充実しつつあるのかもしれない. ちなみに私はといえば, 学生時代全くプログラミングはやっていなかった.

2 の線型性という視点の獲得というところについて考えよう. 上で「線型の」微分方程式という話をしたが, 微分方程式という「代数」とは一見全く関係ないところにその名前が出ているところからして既にやばい. 解析学の話題の中にも線型性という視点が自然に入り込んでいる. このように数学を学ぶ上で線型性というのは基本的な見方, 言葉として決定的に重要なのだ. 例えば私の数学上の専門だが, 微分作用素 \(d/dx\) は線型写像 (普通線型作用素という. 物理だと線型演算子という) だし, 積分も線型写像と思える. この辺を徹底的にやろうというのが作用素論だ. 量子力学との深い関係もあり, 正にそこが私の専門になっている.

色々あって簡単に話しきれることではないのだが, 他にもいくつか例を挙げておこう. 線型代数の対象は線型空間とその上の線型写像だが, 群の表現論では群を線型写像に写し取って研究する. 群という別の代数的対象を線型代数を使って調べるということがある. 線型代数をフックにしているので, 線型代数の理解は前提としてある. また, 群が特に Lie 群になっているとき, この Lie 群を線型化した対象としての Lie 環という対象がある. 「線型化」という手法があると言ってもいい.

触れていると大変なことになるが, 群の表現論も物理への応用がある. 無限次元ユニタリ表現論は量子力学の基本と言ってもいい. これ自体は知らなくても物理は余裕でできるが, 一応使ってはいるので言葉くらいは紹介しておこう.
また, 線型代数の発展として加群というのもある. 加群も色々なところで出てくる. 大学 1 年には無茶な要求だが, 線型代数は係数が体になっているのだが, 加群は係数を環にしている. これのおかげで (数学内部での) 応用の幅が大きく広がる. 第 3 回の関西すうがく徒のつどいで聞いたが, ホモロジー代数への応用ということでいうなら, 最近は画像処理などへの工学的な応用もあるようだ.

加群の話はありとあらゆる意味で全く知らないのだが, 聞いたところによると射影加群はベクトルバンドルと言った幾何の話とも深い関係があったり, \(D\) 加群という代数解析での大事な対象が正に加群だったりする.

うまく答えられている気は全くしないのだが, まとめると, 線型代数は線型性という視点の獲得が一番大事なことで, 連立一次方程式という慣れ親しんだ題材でそれを学ぶことができるということだ.

2013年3月21日木曜日

Twitter まとめ:零空間 N は (線型) 写像の核 ker だった悲しみ


ささくれ先輩がセミナーで喋っていたようなのだが, それについてブルブルエンジン兄貴と梵さんが Twitter 上で会話していた. 困っている人がいるかもしれないし, 折角なのでメモしておきたい. この辺 から始まる.
記号の使い方に非難でまくりのセミナー 
@alg_d 先輩のやつですか? 
@bonnou_bonjin はい。「作用素のカーネルはKerで」「カーネルはNだろなにいってるんだ!!」 
@alg_d 小文字のkerを使う方の市民 
@alg_d カーネルがNの気持ちがわからない人生だった・・・ 
@bonnou_bonjin それな 
@alg_d @bonnou_bonjin ゼロに落ちる的な意味でのnullのNから来ていると思っていたのですがどうなのでしょうhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%B6%E7%A9%BA%E9%96%93
@phasetr あーなるほどと思いながらも日常的に使っていないからカーネルはkerという感じが強いですね
私自身は核を ker と書く. これは新井先生の本の影響だ.



ついでにいうと, 像の方も Im や im ではなく ran と書く. ホモロジーあたりをやるとき, 時々こっそりと Im ではなく ran と書くのだが, これはこれで気持ち悪くて結局 Im とか書きつつ, 核だけは ker と先頭を小文字にしていたりする.

追記

Twitter で次のようなコメント を頂いた.
@phasetr kernelをNと書くのはフランス語のnoyau(核)に由来しているのでは?
よく分からないが確かにフランス語由来かもしれない. 実際, 整数の ℤ はドイツ語の Zahlen が由来だったはずだ. 何か文章にしておくと指摘をしてもらえるのは実にありがたい.

2013年3月12日火曜日

Twitter まとめ:抽象的な内積の定義のモチベーション


内積について少しやりとりをしたのでまとめておきたい. この辺 からはじまる.
内積の定義で複素共役を取ったら順序が入れ替わる、みたいなやつなんで要請されるんですか 
こーしーしゅわるつ、三角不等式が成り立つために必要とか? 
@wa_ta_si_ コーシー・シュワルツをどう思うかによりますが,|<a,b>|のように絶対値をつけるなら コーシー・シュワルツも三角不等式も複素共役は必要ありません. 内積の片方に複素共役をつけるのは<a,a>≧0にしたいからです. 同じベクトルの内積をベクトルの長さにしたいので 
@phasetr Cn の場合にベクトルの長さを定義できるように内積を考えると一方を複素共役にすることになる。 そうすると Rn の内積で<x,y>=<y,x>なのが Cn では<x,y>=<y,x>*になる。 それを一般の内積の定義に要請するということなんですね…。ありがとうございます 
@wa_ta_si_ 変なこと書いた気がするので念のため言っておくと、三角不等式と内積の複素共役は関係ありません。 内積から長さを定義したいと思えば確かに関係はあるのですが、 三角不等式自体は長さに関係する話であって、一応内積とは別です 
内積というやつがわからなくなってきて泣いてる 
まず、内積というのは距離とか直交とかを定義するために導入する。 だから少なくとも正定値性は必要として、まあ線型性も必要だろう。 実数の場合なら対称性も必須か。複素数ならそれがエルミート対称性になるのも自然?
内積はベクトルの長さと 2 つのベクトルがなす角度を定義するために使う. 係数体が複素数のときに長さを決めたい場合, ⟨a,a⟩=∥a∥2 にしたいので, 実数では必要なかった複素共役をつける. こうすると一般に内積の値が複素数になる. 複素数でも cosθ=⟨a,b⟩/∥a∥⋅∥b∥ として角度は定義できるが, 三角関数の角度が複素数になってしまい, 実数のときと同じように「2 つのベクトルがなす角度」というのを考えるのは難しくはなるが, 直交というだけなら内積 0 と言えばいいので直交性だけはきちんと定義できるし, 意味がある.

正定値性だが, 時々半正定値の内積を考えることはある. そういう場合でも半正定値内積の値が 0 になるベクトル全体で商空間を取ってしまえば正定値内積を考えることはできるので, 普通はこの処理をするだろう. 作用素環での GNS 構成定理では実際にこういう処理をして内積空間を作る.

あともう少しいえば, 不定値の内積を使うこともある. 物理でいうと相対論が関係するところだ. 対応する数学としては Lorenz 多様体とかそんな話になる. 実のときの対称性, 複素のときのエルミート性については, 一番単純なユークリッド空間での内積がこの性質を持っていてそこをモデルにしているから, というのが答えだろう.

何にせよ, 具体的な話を抽象化したその先で得られた結論だけを学ぶ形になってしまうので, 初学者にとってはそう簡単な話ではない. 誰かの何かの参考になるかと思い, ここに記録しておく.

2013年3月7日木曜日

数学科および物理学科での数学教育についての雑感:数学者 Hans Freudenthal (1905 - 1990) の紹介文を見て


Twitter を色々見ていたらこんなの を見つけた.
@yujitach やはり「線形」には違和感が(違う)。 ちなみにFreudenthalは1990年に普段散歩してる公園のベンチで死んでいるのを子どもに発見されたそうです。 http://www.fisme.science.uu.nl/en/freudenthal.html
Freudenthal, 名前だけは聞いたことがあるので Wikipedia で少し調べてみたが何をやっていたのか正直なところよく分からなかった. 20 世紀前半の仕事だというのに今一つよく分からないというの, 何となく衝撃的だったが, 例えば量子力学も一応成立は 1925 年と 20 世紀前半の話なので, 20 世紀前半の話が既に破滅的に難しいというのを再認識した. 最近『数学まなびはじめ』を読んで時代的に数学者に落ちる戦争の影を見たので, 上記 URL にはその点からも感慨深い文がある.
面白かったのはむしろ教育に関わる部分だ.
As a teacher he acquired international fame and significance as the founder of realistic mathematics education, which is based on problems taken from day-to-day experiences rather than on abstract math rules. Single-handedly Freudenthal saved Dutch education from the American teaching method of New Math, which was introduced in many countries from 1960 onwards. This formal, logic-based method turned out to be unsuitable for most students.
Freudenthal preferred to send his students on a tour of discovery. His motto was that you learn mathematics best by re-inventing it. His students were not given abstract bare problems to do but well chosen practical problems from daily life, and in solving these they gradually developed mathematical understanding. In addition, Freudenthal thought the recognizability of the problems would lead to the students automatically becoming more interested in mathematics.
独力でアメリカの New Math 運動からオランダの教育を救ったという猛烈に格好いい話に目が向く. 何の本だったか忘れたが, 小平先生は娘さんが New Math に巻き込まれて酷い目にあったとかで批判的な文章を書かれていた覚えがある.
学部は物理学科であって正規の数学教育 (?) を受けたのは修士からであり, 修士ではある程度具体的な問題を念頭に置いて勉強していたので, 学部レベルの数学科の数学についてはよく分からないこともあるが, 物理学科で数学を学ぶときの苦労ぐらいは書いておきたい.
物理学科はあくまで物理をやるところなので, カリキュラムに組み込まれた数学も物理のための数学に集中する. (歴史的な経緯もあり私の大学の物理学科では実数論, 集合論, 位相空間が必修だったが, とりあえずこれは抜かす.) 物理のための数学とはいうが, 正直, 具体的にどういう数学をどこでどう使うという話はあまりされず, 結構雑だった気がする. 私が単純に聞き落としていた, 聞いてはいたが全く実感が持てなかった, 本当に話されていなかった, 物理で出てくる数学的問題を解決するための数学なのでその元の数学の話が分かっていないといけないためそもそも物理・数学ともにある程度まで進まないと話すのは不可能, などいくつか原因はあろうが, 今になって考えるとかなりつらい思いをした学生もいたのではないかと思う. 私に関していうなら, 数学を数学として楽しめたという理由以上に毎日訳が分からず目の前の勉強を必死になってやっていて, そんなことを考える余裕もなかった, というのが実情という感じがある.
通じづらいと思うので「物理で出てくる数学的問題を解決するための数学~」という部分について簡単に触れておこう. いくらでもあるのだが, 一つは私の専門でもある線型代数だ. 大雑把過ぎるので, さらに具体的なものとして線型空間論を挙げておこう. 少なくとも初等物理では線型の微分方程式がたくさん出てくる. 「線型の」と言っているくらいなのだから当然線型代数が関係しているのだが, これに気付いたのは学部 3 年くらいだった気がする. 量子力学でも重要なので講義でも多少触れたのではないかと思うが, 全く記憶にない. 量子力学は学部 3 年のとき本当にやばいくらいに何も分からず, 学部 4 年で新井先生の本で数学的に復習しつつ整理してやり直したという感じであって, 講義で何かを身に付けたという覚えすらない.
話がずれたが, 線型代数だ. 力学の講義でも出てくる方程式 (運動方程式) は大体線型で重ね合わせが成り立つことを使っているので, その時点で死ぬ程線型代数を使っているのだが, これも気付いたのは大分あとのはずだ. 無論線型代数の講義で学んだ記憶はない. ちなみに多体系の安定性みたいな話をするときにポテンシャルを Taylor 展開して Jacobian の行列の正値性に帰着させる話も線型代数だが, これも学部 1 年当時に本当に線型代数だと認識できていた自信はない.
話がずれっぱなしなのでさらに戻して「物理で出てくる数学的問題を解決するための数学~」のところだ. 上記の例では (偏) 微分方程式の線型性という話をしている. 微分方程式自体あまり馴染みがないので, 微分方程式と言われてもあまりピンと来ない. 運動方程式は学部 1 年の力学でも嫌でも出てくるのでまだいいが, 偏微分方程式となるとつらい. 物理で偏微分方程式を使うというと当然色々あるが, 電磁気学を例に, と言ってもその電磁気 (の数学的取り扱い) が分からない. 電磁気となるとベクトル解析も必要だが, こうやって線型代数の必要性を感じるために他の数学, さらには物理 (の数学的取り扱い) まで知っていないといけない (ご利益が感じられない) ので, 結局学び始めの段階で具体的な応用の話がしづらくて困る, という話がしたかった.
他の大学は知らないが, 私の大学では学部 1 年次に物理学演習だか何か (講義名を忘れた) という名の数学の演習の講義が必修であり, そこで通年の (教養の) 線型代数や微分積分の講義とは別に必要な数学をトピックごとにやっていた. そこでも実際の応用はあまり話された覚えはない. ただ「とにかく使うことだけははっきりしているから, 泣こうが喚こうがやれ」という雰囲気はあった覚えがある.
色々書いていたら何が書きたかったのか分からなくなってきたのだが, 数学を学ぶことに具体的なモチベーションがあるはずの物理学科ですら, 「必要だからやりなさい」という感じで学習段階であまり具体的な応用の仕方を伝えられることはなく, 結構つらかったという感じのことが言いたかった. Twitter で言ったのだかブログにも書いたのか忘れたが, 物理ですら道具とする工学部だともっとつらいのだろうな, と思っている.
そして更に元に戻ると, 学部の数学科ではどういう問題意識で進めていくのかよく分からないという話になる. Freudenthal は抽象的な問題よりも日々出くわす実際的な問題を出題し, それを解くことで数学に慣れ親しませたとあるが, これはどういうことなのだろう. この辺, 数学者は数学的自然の中に生きている感があって何となく羨しく感じた.
もちろん今となっては「日々出くわす実際的な問題」みたいな感じはある程度分かる気はするのだが, 必ずしも大学の数学に親しんでいない, 特に学部 1 年生をどう励ましていくのかというところに興味がある. ある程度慣れた学部 3 年とか, 研究を目指す修士の学生にそういう感じで学ばせていくところにはイメージが湧くのだが. 数学科の修士を出たにも関わらず, (学部の) 数学科は不思議なところだという感覚がいまだにある.
あとこれも前から思っているのだが, 微積分やベクトル解析に関し, 純粋な数学の人の物理抜きの理解の仕方というのがとても気になる. ベクトル解析だと多様体上の解析というか, Stokes の定理とそこからの展開というイメージの仕方はあると思うが, 私は 2-3 次元でのベクトル解析は物理というか電磁気のイメージなしには最早理解できない. 理解できないというか, 真っ先に電磁気的なイメージが広がってしまうので, 何というか「純粋な数学」として感知できない. こういうの, 数学の人はどう思っているのだろう.
それはそうと, 3/16-17 の関西すうがく徒のつどいでは正にこの辺の「具体的な問題を通した数学学習」というイメージで, 色々な (反) 例を紹介する講演をする. それで Freudenthal の話が気になった次第であった.
ついでにいえば, 数学科に限らず, 物理でも結構「具体的な数学」というのが結構穴になっている感じがあるので, その間隙を縫うことがしたいなとはずっと思っている. ニコニコでの動画での目的の一つはそこにあるのだが, 数学的に極端過ぎるので, もう少しクッションになれるのを作りたい.

2013年2月1日金曜日

線型代数と表現論・圏論

Twitter で 保型表現と Galois 表現 という PDF を見かけた.
中身は数論なのだが, その中で表現論や圏論, 線型代数に関する部分が面白かったのでそこだけメモしておきたい.
数論部分については分からないので, 触れない.


長くなるが, 個人的に面白いと思った部分を引用しておこう.
面倒になったので引用しないが, 3.2 節にも線型代数と表現論ということで大事な記述がある.
興味のある向きはそちらも参照されたい.



より現代的な視点からは, 表現論の重要性は何と言っても理論の線形化にある.
ブルバキはかなり早くから線形代数の重要性を強調したが, もちろん,
必ず体系的に解ける唯一の問題としての連立一次方程式, すなわち完全に信頼できる方法論としての
線形代数の強みは周知の通りであろうから, ここでは圏論的な視点を強調しておく.
線形代数 (体 \(K\) 上の有限次元ベクトル空間の理論) は, 代数的構造の見通しのよい理解と操作のひな型となった.
圏論の方法は, ここの数学的対象 (集合とその元) を直接分析するよりも, それらの間の相互関係,
つまり構造射の集合を理解しようとする.
共通の構造を持った対象の全体 (圏) という文脈の中に置くことによって,
個々の対象の役割, ひいては本質がよく見える, という考え方である.
古典的な数学的結果も, それが対象の具体的な表示の仕方に依存しない結果であれば,
圏の性質, あるいは圏と圏の間の関手の性質として表現することができる.


体 \(K\) を固定し, \(K\) 上のあらゆる有限次元ベクトル空間のなす圏を \((\mathrm{Vect}/K)\) で表すことにしよう.
圏 \((\mathrm{Vect}/K)\) の対象は \(K\) 上の有限次元ベクトル空間であり, それらの間の射 (構造射) は \(K\) 線形写像である.
この圏の対象の同型類は, 次元という自然数の不変量で完全に決まる.
つまり, 同型類の集合から自然数の集合 \(N\) (0 を含む) への全単射がある.
各 \(n \in N\) に対して \(K^n\) (数ベクトル空間) という具体的な対象を構成でき,
これらの対象への同型を決める (基底を選ぶ) ことで任意の対象・射の具体的な表示が得られる.
対象 \(V\) から \(W\) への集合は加法群の構造を持ち,
部分対象・商対象・核・像・余核・余像・準同型定理・直和・完全系列が定式化できる Abel 圏になる.
さらに任意の短完全系列は分解し, 実際あらゆる対象は 1 次元の対象の有限個の直和に分解される (半単純性) .
\(K\) が代数的閉体ならば, 自己準同型射も直和分解 (対角化) されたものと簡単なベキ零元の和に書ける (標準形) .
さらに内部テンソル積・内部 Hom ・双対対象が定義されるのでテンソル圏, とくに淡中圏になっている.
これらの操作 (\(\otimes\), \(\otimes\), Hom, *) の他に, 対称積 \(\mathrm{Sym}^n\) ・外積 \(\wedge\) など,
対象から新しい対象を構成する標準的な操作がいくつか定義できる
(強いて言えば, 対称群 \(S_n\) の各表現に対応するベキ等元に応じて作られる) .
各対象 \(V\) の自己同型群は一般線形群 \(GL (V)\) であり, さらに各対象に最高次形式 \(\wedge^{\mathrm{dim} V} V \cong K\)
(行列式) ・内積・交代形式・エルミート形式などの付加構造を定義した圏を定義することもでき,
それらの圏での自己同型群は特殊線形群・直交群・斜交群・ユニタリ群などの古典群になる.
だいたいこの程度が, 数学科で学ぶ線形代数の全体であり, これで l \((\mathrm{Vect}/K)\) は完全に理解されたと感じられる.
つまり, これ以上 \((\mathrm{Vect}/K)\) に関して解かれるべき問題はないようだ (これは驚くべきことかもしれない) .
この \((\mathrm{Vect}/K)\) の理論 (線形代数) の, 数学を記述する方法論としての威力は絶大であった.
幾何学では位相空間や多様体の圏から \((\mathrm{Vect}/K)\) への関手 (コホモロジー理論) がいくつもの深い結果をもたらし,
空間上の関数の貼り合わせ (局所・大域原理) やベクトルバンドルの理論は,
開集合の圏から \((\mathrm{Vect}/K)\) への関手 (層) として記述され,
微分形式や多様体上の調和解析 (Hodge 理論) などの理論が見通しよく理解された.


さて, われわれのテーマの視点からは, \((\mathrm{Vect}/K)\) とは, 自明な群 \(G = \{1\}\) の
有限次元表現のなす圏に他ならない.
その意味では, 表現論とは線形代数の一般化である.
表現論が, 数学的理論を記述し理解するための言語として機能する所以がここにある.
一般に, 群 \(G\) の, 体 \(K\) 上の有限次元ベクトル空間への表現, すなわち \(G\) の作用が定義された \(( \mathrm{Vect} / K )\) の
対象のなす圏を \((G-\mathrm{Rep}/K)\) と表そう.
この圏の射は, \(G\) の作用と整合的な \(K\) 線形写像 (表現の間の準同型写像) である.
繰り返すが, 自明な群は自明にしか作用できないから, 自然に圏同値
\(({1}-\mathrm{Rep}/K) \cong \mathrm{Vect}/K)\) がある.
そして, \(G\) が有限群で \(K\) が標数 0 の代数的閉体の場合, 上に素描した
\(\mathrm{Vect}/K\) の理論がほぼそのまま \((G - \mathrm{Rep}/K)\) の理論に一般化される, というのが, 有限群の表現論の基礎である.
とくに, 0 と自分自身以外に部分対象を持たない既約な対象 (既約表現) が
既約指標 (共役類の集合の上の関数の空間の直交基底をなす) によって分類され,
任意の対象は既約対象の直和に分解すること (半単純性, あるいは完全可約性) が基本定理になる.
既約な対象はもはや 1 次元とは限らないが, その自己準同型は \(\mathrm{Vect}/K)\) の既約対象
(1 次元ベクトル空間) と同じく定数倍のみである (Schur の補題) .
しかし, この \(\mathrm{Vect}/K)\) から \((G-\mathrm{Rep}/K)\) への一般化によって, 理論の構造的な操作に新たな自由度が加わる.
すなわち, 群 \(G\) を変えるという自由度である.
群準同型 \(f : G \to H\) が与えられると, \(H\) の表現は \(f\) で引き戻すことで自然に \(G\) の表現になるから,
Abel 圏の間の加法的関手 \(f^* : (H-\mathrm{Rep}/K) \to (G-\mathrm{Rep}/K)\) ができる.
とくに \(G\) が \(H\) の部分群で \(f\) が包含写像の場合は \(f^*\) は表現の制限 \(\mathrm{Res}^H_G\) であり,
その左随伴関手は表現の誘導 \(\mathrm{Ind}^H_G\) である (Frobenius 相互律) .
単に一つ一つの準同型 \(f\) による引き戻しを考えるだけでなく, あらゆる準同型 \(f\), さらには剰余群 \(G/H\),
直積群 \(G \times H\) など群の圏におけるあらゆる操作に付随して,
異なる圏\((G-\mathrm{Rep}/K)\) たちの間の関手を考えることができる.
このようにして, 群の理論が線形化される, すなわち線形代数の言語で記述される,
いや線形代数という理論そのものの一般化として理解される.
これが表現論の考え方である.
理論のパースペクティブがより高次になっているという意味で, 表現論は群論に従属するものではなく,
群論を発展させた理論であるという面がある.
これから, 表現論による理論の記述の強みを解説していきたいが, その前にわれわれの興味 (代数的整数論) に
沿った具体的な対象を導入していくことにしよう.


追記


kyon_math さんから次のようなご指摘を頂いた.
触れたことがない正標数の話なので正直全く勘が働かなくて分からないが,
他の方には即参考になる可能性もあるのでメモしておく.
ちなみに これ と これ.



@phasetr K が代数閉体でない場合でも, 半単純元と冪零元は定義できてジョルダン分解が成り立ちますね.


@kyon_math @phasetr 群の表現の既約分解については, 有限群であることを仮定した方がいいかも.
有限群の場合, 表現の既約分解は代数閉よりも標数の制約の方が大きい (マシュケの定理).
代数閉でも標数が正だとその表現論は難しい. (still in progress)


あと Maschke の定理は これ.
恐るべし正標数.


2013/02/02 追記
kyon_math さんから さらに教えて頂いた.
あとで読もう.

@phasetr ああ, 吉田さんのだったんですね.
吉田さん, かなりぶっ飛んでるからなぁ (もちろんいい意味で)
駒場中高等部向けのガロア理論の講義録も見っけた. http://bit.ly/XsPy0U
あわせてガロア理論の基本定理について http://bit.ly/Xcw2E5

2013年1月21日月曜日

数学,物理,数理物理での内積関係の記法,記号


Twitter で少しやりとりしたので簡単にまとめておこう. どういう意味で取るかはかなり微妙なところだが「初学者」には分かりづらいようだから.
面倒なので全部関数空間で考える. 定義域は適当に \(\Omega\) にして,関数は \(f\), \(g\) あたり. 作用素(演算子) は \(A\) にする.

数学での記法

複素共役を \(\bar{f}\) として,内積は次で定義する. \[ \langle f, g \rangle := \int_{\Omega} f(x) \overline{g(x)} dx. \] 左の引数(第一引数)を線型にして右の第二引数を反線型にしたい,という人情を表す. 内積自体には次のような記号を使う: \((f, g)\) ,\((f|g)\) ,\(\langle f, g \rangle\) ,\(\langle f | g \rangle\) . 多分一番最初の記号が一番一般的だろう. 私自身は \(\langle f, g \rangle\) を使っているが,これは勉強した本である量子力学の数学的構造と Bratteli-Robinson の記号を踏襲したことによる. 作用素の共役は \(A^*\) のようにスターで書く.
全く関係無いが大学一年の頃,演習の質問でスターを「雪印」と呼んだ友人がいて, 「これはスターと読みます.」と突っ込まれていたことを想起した.

物理での記法

複素共役を \(f^*\) として,内積は次で定義する. \[ \langle f | g \rangle := \int_{\Omega} f(x)^{*} g(x) dx. \] 演算子の共役は A^{\dag} と,ダガーで書く.

数理物理での記法

端的に言って滅茶苦茶だ:数学の記法と物理の記法のチャンポンになっている. 同じ人でも時と場合によって記法を変えることがある. 例えば新井先生は数学系の論文では \((f,A^* g)\) で複素共役もバーを使う数学よりの記号だと思うが, 物理の人が多そうな文献では物理の記法を使う. 分類の仕方が微妙なところだが,数理物理の文献では大体数学の記法である中, 内積の第一引数を反線型に取ったりする.
ちなみに私自身はチャンポンの記号を使っている. これは Bratteli-Robinson の記号を踏襲したことによる. 内積は第二引数を線型に取る物理の記法だが,複素共役と作用素の共役は数学の記法だ. 見ると分かるが,量子力学の数学的構造と Bratteli-Robinson でも記号が違う.