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2014年4月8日火曜日

書泉グランデMATH, 【『解析力学講義』齋藤 利弥著】とか面白そうな本を推薦しまくってくるのでつらい

書泉グランデ MATH, 面白そうな本をがんがん宣伝してくるのでつらい.



復刊入荷しました 『解析力学講義』齋藤 利弥著 4000 円外税 (日本評論社)
名著『解析力学入門』を全面的に改め,
書き下した本書は, 数学的側面に力点がおかれた力学の解説書である.
類書では, あまり扱っていない"制限三体問題""ポアンカレの定理"などを懇切ていねいに解き明かす.


これほしい.
制限三体問題と Poincare, 一度きちんと勉強してみたい.

2013年8月3日土曜日

ニュートン力学での力の定義とは

大学生とハートフルなやりとりをしてきたのでその記録をしておく. この辺からはじまる.
ニュートン力学において, 力の定義とは…? #相対論前日祭 
@zomi1202 運動量の時間変化じゃね 
@dream_taro やっぱそっちから定義した方が合理的だよなあ. 
@zomi1202 そうすると運動方程式はどういう意味になるのでしょうか 
@phasetr 系を閉じたときに力の和が 0 になるという要請でしょうか…? 
@zomi1202 @phasetr すみません, もうちょっと考えます. 
@phasetr ずっと考えてますが, 定義と捉えるのかなと思いました. 
@zomi1202 運動方程式は物体の運動の様子をとらえる (運動の軌跡を求める, 積分する) のが本来の役割のはずですが, 力の定義式としてしまった場合, 前者についてどう認識すればいいのかという話です 
@zomi1202 すみません. きちんと書かないといけなかった:「運動量の時間変化=力」は運動方程式と式としては同じです. 見かけだけでいうなら運動方程式を力の定義式だとしているわけですが, そうなると運動方程式から「力から軌跡を求める」という意味がなくなりかねません 
@phasetr (その"意味"の感覚が僕に無いのかもしれないのですが) 運動の軌跡が先に決まってて力が定義されて, 各要素 (重力だとか電磁力とか) は後付でいいのかなとか思ってたのですが, 山元さんにも指摘されてかなりムリがあるなあと今は思ってます. 
@zomi1202 言ってしまったらつまらないのでどうしようかと迷っているのですが, 実際には軌跡を既知としてその軌跡を描くための力が何か, という, まさに「力の定義式」として使われることはあります 
@zomi1202 それはニュートンの仕事で, 惑星が楕円軌道を描いて太陽の周りを公転することが実験的に分かっている状況で, この軌道を描くにはどんな力が働いていればいいかというのを求めるのに運動方程式を逆向き (力の定義式) として使っています 
@zomi1202 なので, 実際に「運動の時間変化=力」は 2 つの使い方がされているわけですが, 力学を考える上で一番大事な式の位置づけがあいまいで, 同じく大事な概念である力もあいまい (求めるものなのか既知とするのか状況によって変わる) なのが困るわけです 
@zomi1202 そこまで認識したうえで「運動量の時間変化=力」を力の定義式とするのが「合理的」といったのか, というような質問です. 応用上はどうでもいいと言ってもいいですが, 力学をやる上で一番の基礎なので, そこが適当だと物理にはなりません 
@phasetr いえ, その辺は全く考えずに, 単に数学的なモデルとして簡単に定義しやすいな, という意味で使いました. 位置づけの重要さがよく分かりましたので, もう 1 回考えてみます. 高校時代からぼやっとしてて分からなかったところなので, ありがたいです. 
@zomi1202 ここを突っ込んで考える余裕を与えられているのが物理学科の特権です. 実数論やる暇があるのが数学科というのと同じです. それぞれの学科にそれぞれの特権がありますが, これはまさにそういうところなので思う存分考え抜いてください 
@phasetr ありがとうございます. 絶賛堪能してます.
y_bonten さんのこのツイート なども参考になる.
「質量×加速度=(その物体にかかる) 力」を力の定義式と見たとき, 正確には「合力」の定義しかなされていない. このことをどう解決するか, とか.
これはとても大事な指摘で, 解析力学の目的の 1 つ にもなっている. 解析力学は, 力学で一番大事であるにも関わらず曖昧な位置付けになっている運動方程式の論理的地位を明確にする試みとも言える. この辺については山本義隆・中村孔一の『解析力学』が詳しくて面白い. ただし, 簡単に読める本ではない.



そういえば, 解析力学のゼミ的なアレ, いつ始まるのだろう. ゆきみさんとの物質の安定性ゼミ的なアレも都合つけないといけないし, つどいの原稿作りもしないといけないし, DVD 制作も積んだままだった.

2013年5月22日水曜日

解析力学は一般論・抽象論を組み上げる必要があって難しいという話

Twitter で hisen_kei さんと ゆきみさんが解析力学のセミナーをするとかいう話があったので, 思ったことを書いておく. 物理が非専門の人が読むのにいい本を全く知らないので, ハイパー困るのだが, とりあえず私が読んだ本は山本-中村だ.



物理として学ぶ段階ですでに一般性が必要になってつらいので, 特に非専門家が勉強するときには, まず自分の知っているところ・使うところに特化して勉強し, そこを突破口にして学ぶのがいい. 力学系の議論は機械工学でも使うようだが, 数学的にそこに特化した本としては次のような本がある. 読んだことはないので, 質については保証できないが, (数学として) 何が問題かというところは把握できると思う.

  
ここではむしろ, 本を紹介するよりも, 解析力学の特徴を紹介することで学習の一助としたい. ちなみに『力学と微分方程式』の書評に次のような記述があって面白かった.
力学系の本は本書の他にもいくつか出版されていますが、 これほど読みやすく、分かりやすいものはないでしょう。 初学者がつまずきそうな点には、しっかりフォローが入っています。練習問題の解答もついていますし、入門書として適当だと思います。 
ただし、本書は数学者が書いていることもあって数学的で、 物理学的な色はあまり濃くありません。 ですから、物理大好き☆物理命☆みたいな人にはあまり向かないかもしれません。 (この点は他の本もある程度共通していますが…。) 
しかし、逆に言うと、「ほとんど物理を勉強したことがないけども力学系の知識は必要。 困ったなぁ…。」と密かに悩んでいる経済学や生物学などを専攻する人には、 間違いなく最高の本です。 経済理論や生物学の本などにも、 巻末の付録に力学系の申し訳程度の解説が付いていたりしますが、 今後の動向を考えると、 やはり本書のようなものを読んでおいたほうが良いでしょう。 教養・アイデアの種として、物理学の知識も得られますし。
数学の本は物理的な感覚が使いづらくハードルが高いという印象があった. だが, 逆に物理をあまり知らなくても読める (自分の専門に引きつけて解釈をつける) と思えば, かえっていい場合もあるのかと. 数学的にやばすぎると別のハードルが上がりまくるので, きちんと選ぶ必要はあるが.

タイトルで解析力学で一般性が大事だと言っているが, それを説明していこう. 例えば 3 次元の Laplacian を自然な直交座標系と極座標系で書いてみると次のようになる. \begin{align} \triangle_{\mathrm{o}} &= \frac{\partial^2}{\partial x^2} + \frac{\partial^2}{\partial y^2} + \frac{\partial^2}{\partial z^2}, \\ \triangle_{\mathrm{p}} &= \frac{\partial^2}{\partial r^2} + \frac{2}{r} \frac{\partial^2}{\partial \theta^2} + \frac{\cos \theta}{r^2 \sin \theta} \frac{\partial}{\partial \theta} + \frac{1}{r^2 \sin^2 \theta} \frac{\partial^2}{\partial \phi^2}.  \end{align} 何も知らずに見たとき, この 2 つが同じ演算子 (作用素) だと思うのはまず無理だろう. こうした見た目に左右されずに本質的な部分を見抜く必要がある. そのためには本質的な部分が何か, もっというなら本質とは何かということをきちんと意識する必要がある. 大事な部分を抜き出し一般化し, 議論をクリアにするために必要があれば抽象化までかける. 抽象化して議論自体はクリアになっても, 今度はクリア過ぎて何がなんだかさっぱり分からなくなる. そこを埋めるために適切な具体例をいくつも知っている必要がある. 物理に使うにはこの具体と一般・抽象を両方きちんと知っておかねばならないため, 負担がどんどん大きくなる.

このあたりをもう少し具体的にしてみよう. 物理で大事な概念として保存量というのがある. 具体的に運動量を考える. Lagrangian を 1 つ取ろう:\(L = - p^2/2m\) でも想像してくれればいい. これに対して空間並進群 \(\mathrm{R}^3\) の作用を考えると, この作用に対して Lagrangian は不変になるとする. このとき空間並進群に対する保存量が定義され, それが運動量になる.

これが次に一般化される. 任意の Lagrangian \(L\) を取り, 任意の群 \(G\) を取る. \(L\) が \(G\) の作用で不変なとき, 一般に \(G\) に対応する保存量が定義できる, となる. ここで考えられる限り最大に一般な Lagrangian と群を取る必要がある. なぜなら, 新たな理論を構築したりする場合, どんな Lagrangian, どんな群が出てくるか分からない. そうした場合にも使えなければいけないからだ. 非相対論のときにしか使えないとかいうのでは話にならない. 群も非相対論の状況では Poincare 群や Lorenz 群は視野に入らないが, こういう群作用がある場合にだって使えなければ意味がない. まだ見ぬ場合も含めていつでも使えるようにするため, できる限りの一般性を担保する必要がある.

また結果は普通の力学だけでなく, 適当な場の理論にも使えると嬉しい. 実際電磁場の Lagrangian なども考えられる. 場に対しても使っていきたい. 特に場の量子論を場合を考えると電荷に由来する \(U(1)\) ゲージ不変性も出てくる. 既知の保存量であっても, それに対応する対称性は何か, という議論だってしたくなる.

逆にいうと, 解析力学にはここまでの射程距離があるのだが, この射程距離を持つにはそれだけの頑張りが必要になる. それが解析力学がつらい理由だ. 当然一気に, 頭から本格的な本を読もうとするとつらい. そこで冒頭に戻る:自分が使うところから徐々にやっていき, 突破口を作っておいて必要がある範囲をまずおさえる. その後必要があるごとに勉強していく感じでやるのがいいだろう. 物理学科なら, カリキュラム的な都合もあるし, 学科の特性もあるのである程度はじめからきちんとやらなければいけないが, それは専門なので当然だ.

何に限らず (大学で) 学ぶ内容が簡単ということは全くないのでどこかしらで頑張る必要はある. ただ, 特に非専門家が勉強するときに困る部分というのは専門でやる場合と違う可能性があるので, そこはどうしたらいいか分からず惱むところ. 困るな, というところで歯切れ悪く記事を終える.