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2013年6月11日火曜日

線型系の数学的処理と非線型系の数学的処理:複素数の利用的なアレ

ゆるふわ quantum 美少女の議長さんが 次のようなこと を言っていた.
交流回路とかでよくあるけど、物理量(というか実数値しかとらないもの)に複素数値をとることを認めて 微分方程式を立式して求解した上で改めて実部をとる、みたいなのあるけど、 あれの前提となる「微分方程式が関数の実部と虚部でそれぞれなりたってる」のって線形系だけだよね、たぶん…
あと これ.
例えば安直な例ですが、 \(df/dx= \sqrt{1-f^2}\) みたいな非線形微分方程式、 \(f=\sin x+c\) なのはいいとして右辺が必ず実数値をとるであろうことを考えるとfの虚部に関して恒等的にゼロ、 以外の解がなさそうに見えるけど \(\sin(ix) = i \sinh (x)\) でもいいんじゃね、とか
そして ここ からはじまるやりとりをした.
@hisen_kei あまりきちんと覚えていませんが, 非線型光学では本当にはじめから実の解だけを考えてそこで処理をしないといけないとかいう話を聞いたことがあります. Maxwellは線型ですが,確か境界条件で非線型性が入るとかいう話だったはず 
@phasetr ていうか自分で例を出してなんですが、これ左右でi倍の差が残るような 
@hisen_kei 元の方程式,真面目に考えていないのですが右辺が複素数を取ってはいけない理由がない (\(f^2\) であって \(|f|^2\) とかではない)ので,それだとまだ変な解出せるような印象
例に挙がった方程式の方は別にいいのだが, 線型の方程式に非線型の境界条件を入れるというのは数学としても面白いらしい. Rayleigh-Jeans だかでも境界条件として非線型性が入ってきて, 非線型偏微分方程式の問題として面白くなりそうだ, という話を聞いたことがある.

特に何かを主張したいということはなく, ただそう聞いただけの話だった.

2013年5月6日月曜日

Twitter まとめ:解析力学, 電磁気学, 相対論と幾何学の関係などを簡単にまとめてみた


ぼんてんぴょんさんと力学, 解析力学まわりで少し話をした. 参考になる向きもあろうかと思うのでまとめておく. この辺 からはじまる.
ふと思いついたが、剛体を考えるとき、質量のあるところだけに質点があるのでなく、 剛体の外側にも質量ゼロの質点が(空間全体に)分布していて、 これらが剛体との位置関係を保ちながら動くと考えれば、「そこに質点があるか」を気にしたくないときに記述しやすくなるのではないだろうか。 
@y_bonten 状況良くわかっていないのですが、いわゆる場の理論はその感覚近い気がします。 電荷がなくても電場なりが空間にきちんとあるみたいなそんな感じ 
@phasetr ありがとうございます。 確かに、電荷から解説が始まっても、いつの間にか電場のほうが主役に躍り出ていきますよね。
あとこの辺.
座標系にまつわる問題が古典力学の理解の大きな壁になっていることは間違いないと思う。 「ある座標系で考えると煩雑になりすぎて実質無理」という状況はともかく、同じ現象をどの座標系で考えたって、 表現が異なるだけで辻褄が合わないといけない。それを確認するのが勉強だと思うのだが(以下略 
@y_bonten それ、正に解析力学です。 相対論でも大事で、多様体論の基礎にある思考でもあります 
@phasetr なるほど、では同じ心がけでそのあたりの分野も勉強してゆけば良いわけですね。 意を強くしました。 
@y_bonten 多様体論自体が解析力学を起源にしています。 シンプレクティックのあたりです。 相対論も座標変換による方程式の変換の問題という面があるので 
@phasetr そうなのですか! こういうロードマップを示していただけるのは本当にありがたいです。 
@y_bonten その辺をもっと積極的にやろうと思ってブログ始めました。 Twitterでもときどきやっていましたが 
@phasetr よく読ませていただいています。 今後も期待しております。
こういうと嫌がる数学の人もいるのだが, 解析力学と電磁気学は数学に影響を与えている. 上で書いた通り, 解析力学は多様体論の母体になっている. 電磁気学は物理のゲージ理論の一番簡単な例だが, このゲージ理論は数学のゲージ理論につながっている. またベクトル解析は電磁気学を整備する中で発展した数学で, ベクトル解析は多変数の解析学で大事だが, より強く幾何学でも de Rham 関連でとても大事.

あまりまともに物理の本を読んでいないのであまり詳しく参考書を挙げられないが, 一応知っているものは挙げておこう. 有名なだけで読んでいない本も挙げるので, ご注意頂きたい.

       

山本義隆の解析力学は物理の本だが, 物理の初学者が読むと間違いなくつらいので, もう少し物理として簡単な本を読んでからにした方がいい. 実際, 学部 2 年時の私にはつらかった. ただ内容が豊富なので面白いのは間違いない. また, 素粒子など幾何学が必要な人が手始めに読む本としてもいいのかもしれない. そちらはよく分からないので何とも言えないが.

深谷先生の本は読んだことがない. 評判はよいのでとりあえず挙げておいた.

太田浩一の電磁気学だけ読んだ. マクスウェルは読んでいない. 電磁気学の方は相対論や量子力学との関係についての話題があり, 色々なつながりが見えて読んでいて楽しい. ベクトル解析や Fourier なども適宜解説されている. 物理の中で数学を学ぶ, という点でもそれなりに使えるだろう. ただ, それなりにハードな本なので読みこなすのはしんどい.

理論電磁気学は計算が丁寧なのがいい. 特に電磁波や散乱周りは計算が物凄い面倒なのだが, そういうところで参考になる. 計算できないなんて軟弱な, と思う向きもあるだろうが, 専門というわけではなく速習が必要だったり, 久し振りに復習するときにさっと計算を確かめたい場合などには重宝するだろう. また, 物理を楽しみたい, という向きで計算も頑張りたいが一人はきつい, という向きもあろう. そういうところにとってもこういう本があるのはいいことだと思う. 実際に色々書いてみると分かるが, 細かいところは面倒なので飛ばしたくなるので, 結構こういうところは適当になりがちだ. 専門書だと計算をきちんと追い切らせることも大事な訓練なので, 余計に省かれる傾向にあるから.

2013年3月7日木曜日

数学科および物理学科での数学教育についての雑感:数学者 Hans Freudenthal (1905 - 1990) の紹介文を見て


Twitter を色々見ていたらこんなの を見つけた.
@yujitach やはり「線形」には違和感が(違う)。 ちなみにFreudenthalは1990年に普段散歩してる公園のベンチで死んでいるのを子どもに発見されたそうです。 http://www.fisme.science.uu.nl/en/freudenthal.html
Freudenthal, 名前だけは聞いたことがあるので Wikipedia で少し調べてみたが何をやっていたのか正直なところよく分からなかった. 20 世紀前半の仕事だというのに今一つよく分からないというの, 何となく衝撃的だったが, 例えば量子力学も一応成立は 1925 年と 20 世紀前半の話なので, 20 世紀前半の話が既に破滅的に難しいというのを再認識した. 最近『数学まなびはじめ』を読んで時代的に数学者に落ちる戦争の影を見たので, 上記 URL にはその点からも感慨深い文がある.
面白かったのはむしろ教育に関わる部分だ.
As a teacher he acquired international fame and significance as the founder of realistic mathematics education, which is based on problems taken from day-to-day experiences rather than on abstract math rules. Single-handedly Freudenthal saved Dutch education from the American teaching method of New Math, which was introduced in many countries from 1960 onwards. This formal, logic-based method turned out to be unsuitable for most students.
Freudenthal preferred to send his students on a tour of discovery. His motto was that you learn mathematics best by re-inventing it. His students were not given abstract bare problems to do but well chosen practical problems from daily life, and in solving these they gradually developed mathematical understanding. In addition, Freudenthal thought the recognizability of the problems would lead to the students automatically becoming more interested in mathematics.
独力でアメリカの New Math 運動からオランダの教育を救ったという猛烈に格好いい話に目が向く. 何の本だったか忘れたが, 小平先生は娘さんが New Math に巻き込まれて酷い目にあったとかで批判的な文章を書かれていた覚えがある.
学部は物理学科であって正規の数学教育 (?) を受けたのは修士からであり, 修士ではある程度具体的な問題を念頭に置いて勉強していたので, 学部レベルの数学科の数学についてはよく分からないこともあるが, 物理学科で数学を学ぶときの苦労ぐらいは書いておきたい.
物理学科はあくまで物理をやるところなので, カリキュラムに組み込まれた数学も物理のための数学に集中する. (歴史的な経緯もあり私の大学の物理学科では実数論, 集合論, 位相空間が必修だったが, とりあえずこれは抜かす.) 物理のための数学とはいうが, 正直, 具体的にどういう数学をどこでどう使うという話はあまりされず, 結構雑だった気がする. 私が単純に聞き落としていた, 聞いてはいたが全く実感が持てなかった, 本当に話されていなかった, 物理で出てくる数学的問題を解決するための数学なのでその元の数学の話が分かっていないといけないためそもそも物理・数学ともにある程度まで進まないと話すのは不可能, などいくつか原因はあろうが, 今になって考えるとかなりつらい思いをした学生もいたのではないかと思う. 私に関していうなら, 数学を数学として楽しめたという理由以上に毎日訳が分からず目の前の勉強を必死になってやっていて, そんなことを考える余裕もなかった, というのが実情という感じがある.
通じづらいと思うので「物理で出てくる数学的問題を解決するための数学~」という部分について簡単に触れておこう. いくらでもあるのだが, 一つは私の専門でもある線型代数だ. 大雑把過ぎるので, さらに具体的なものとして線型空間論を挙げておこう. 少なくとも初等物理では線型の微分方程式がたくさん出てくる. 「線型の」と言っているくらいなのだから当然線型代数が関係しているのだが, これに気付いたのは学部 3 年くらいだった気がする. 量子力学でも重要なので講義でも多少触れたのではないかと思うが, 全く記憶にない. 量子力学は学部 3 年のとき本当にやばいくらいに何も分からず, 学部 4 年で新井先生の本で数学的に復習しつつ整理してやり直したという感じであって, 講義で何かを身に付けたという覚えすらない.
話がずれたが, 線型代数だ. 力学の講義でも出てくる方程式 (運動方程式) は大体線型で重ね合わせが成り立つことを使っているので, その時点で死ぬ程線型代数を使っているのだが, これも気付いたのは大分あとのはずだ. 無論線型代数の講義で学んだ記憶はない. ちなみに多体系の安定性みたいな話をするときにポテンシャルを Taylor 展開して Jacobian の行列の正値性に帰着させる話も線型代数だが, これも学部 1 年当時に本当に線型代数だと認識できていた自信はない.
話がずれっぱなしなのでさらに戻して「物理で出てくる数学的問題を解決するための数学~」のところだ. 上記の例では (偏) 微分方程式の線型性という話をしている. 微分方程式自体あまり馴染みがないので, 微分方程式と言われてもあまりピンと来ない. 運動方程式は学部 1 年の力学でも嫌でも出てくるのでまだいいが, 偏微分方程式となるとつらい. 物理で偏微分方程式を使うというと当然色々あるが, 電磁気学を例に, と言ってもその電磁気 (の数学的取り扱い) が分からない. 電磁気となるとベクトル解析も必要だが, こうやって線型代数の必要性を感じるために他の数学, さらには物理 (の数学的取り扱い) まで知っていないといけない (ご利益が感じられない) ので, 結局学び始めの段階で具体的な応用の話がしづらくて困る, という話がしたかった.
他の大学は知らないが, 私の大学では学部 1 年次に物理学演習だか何か (講義名を忘れた) という名の数学の演習の講義が必修であり, そこで通年の (教養の) 線型代数や微分積分の講義とは別に必要な数学をトピックごとにやっていた. そこでも実際の応用はあまり話された覚えはない. ただ「とにかく使うことだけははっきりしているから, 泣こうが喚こうがやれ」という雰囲気はあった覚えがある.
色々書いていたら何が書きたかったのか分からなくなってきたのだが, 数学を学ぶことに具体的なモチベーションがあるはずの物理学科ですら, 「必要だからやりなさい」という感じで学習段階であまり具体的な応用の仕方を伝えられることはなく, 結構つらかったという感じのことが言いたかった. Twitter で言ったのだかブログにも書いたのか忘れたが, 物理ですら道具とする工学部だともっとつらいのだろうな, と思っている.
そして更に元に戻ると, 学部の数学科ではどういう問題意識で進めていくのかよく分からないという話になる. Freudenthal は抽象的な問題よりも日々出くわす実際的な問題を出題し, それを解くことで数学に慣れ親しませたとあるが, これはどういうことなのだろう. この辺, 数学者は数学的自然の中に生きている感があって何となく羨しく感じた.
もちろん今となっては「日々出くわす実際的な問題」みたいな感じはある程度分かる気はするのだが, 必ずしも大学の数学に親しんでいない, 特に学部 1 年生をどう励ましていくのかというところに興味がある. ある程度慣れた学部 3 年とか, 研究を目指す修士の学生にそういう感じで学ばせていくところにはイメージが湧くのだが. 数学科の修士を出たにも関わらず, (学部の) 数学科は不思議なところだという感覚がいまだにある.
あとこれも前から思っているのだが, 微積分やベクトル解析に関し, 純粋な数学の人の物理抜きの理解の仕方というのがとても気になる. ベクトル解析だと多様体上の解析というか, Stokes の定理とそこからの展開というイメージの仕方はあると思うが, 私は 2-3 次元でのベクトル解析は物理というか電磁気のイメージなしには最早理解できない. 理解できないというか, 真っ先に電磁気的なイメージが広がってしまうので, 何というか「純粋な数学」として感知できない. こういうの, 数学の人はどう思っているのだろう.
それはそうと, 3/16-17 の関西すうがく徒のつどいでは正にこの辺の「具体的な問題を通した数学学習」というイメージで, 色々な (反) 例を紹介する講演をする. それで Freudenthal の話が気になった次第であった.
ついでにいえば, 数学科に限らず, 物理でも結構「具体的な数学」というのが結構穴になっている感じがあるので, その間隙を縫うことがしたいなとはずっと思っている. ニコニコでの動画での目的の一つはそこにあるのだが, 数学的に極端過ぎるので, もう少しクッションになれるのを作りたい.