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2014年6月8日日曜日

作用素環周辺の数学・物理・数理物理の話:表現論とか何とか

久々に物理に近いところの話をしたので.


\(p\) 進大好き bot と.



純粋状態って言うと, 「物理の純粋状態」と「物理の純粋状態 2 つの pairing で表される作用素環の純粋状態」のどっちのことか分からんな.
両者は違うものだよね?


@non_archimedean よくわかっていないのですが後者, 必ず作用素環的な純粋状態になるのでしょうか.
「物理の純粋状態」の定義も気になるところですが


@phasetr 物理の方は物理量を表現する作用素が作用しているヒルベルト空間の正規ケットベクトルのつもりでした.
それのコピーの (と書き忘れました) 2 つのブラケットで表される作用素環の純粋状態とどう対応するのか,
という話ですが, 冷静に考えて GNS 構成がありましたね.


@phasetr 暗に「物理のヒルベルト空間は可分である」ことを課して書きました.
非可分なときも純粋状態が正規ケットベクトルだと思っていいのかよく知りません.


@non_archimedean 適切な回答になっているかよくわからないのですが考えをブログにまとめておきました
http://phasetr.blogspot.jp/2014/05/p-bot.html


@phasetr どうもありがとうございます!
また言葉足らずだったのですが, 僕が作用素環論と比較したのは,
物理量が有界な領域でしか値を持たない状況のみを考えていたからでした.
つまりここで対応する作用素環は物理量が表現する有界作用素が生成する最小の C*環の意味でした.


@phasetr 量子論的には非有界な物理量のほうが自然だと思われますが,
非有界物理量を集めても作用素環にはならないため作用素環的な純粋状態が定義できるかよく分からなかったです.


@non_archimedean 代数的場の量子論の物理サイドの定式化からすると,
実際には有界な範囲でしか観測できないのでその現実を取り入れた理論, と言う言い方をします.
数学的実対応としては \(e^{itA}\) とかレゾルベントを考えることで非有界 (自己共役) 作用素を有界にします


@non_archimedean レゾルベントの方は数年前に Bucholz が少しやり始めましたがやっている人はほぼいません.
指数に載せる方を Weyl 代数といって, いわば代数解析にもある Weyl 代数の無限変数版です.
表現論的に微妙な問題があって同じとは言いづらいですが


@non_archimedean あまり多くはないですが,
定義域などを適当に制御した非有界作用素がなす環それ自体を研究している人もいます
http://kaken.nii.ac.jp/d/r/00161795.ja.html


@phasetr 定義域を制限する定式化もあるのですね!
レゾルベントで非有界作用素を見るのは古典的なボレル関数解析がそうなので結構歴史が深そうですね.
Weyl 代数というのは初めて聞きました.


@non_archimedean 定義域の制限は, 量子力学で言うなら \(C_c^{\infty}\) が大体の作用素の共通の定義域に取れることをイメージしつつ,
場の理論でもある程度そういう風にできる話はあるからそれを使ってやってみようという感じです


@phasetr 「大体の」というところがどことなく深いですね.
物理量はおおよそ可微分緩増加関数や微分作用素の組み合わせになるといった感じの経験則がありそうですね.
(フラクタルのように各点微分不可能な関数に対応するような物理量があっても面白そうですが)


@non_archimedean クーロンポテンシャル \(1/r\) とかレナード=ジョーンズ・ポテンシャル \(r^{-12}-r^{-6}\),
2 体系のクーロン相互作用 \(1/|r_1 - r_2|\) などがあるので微分可能性が必ずしも期待できず適当な特異性を持つことはよくあります


@phasetr あ, それくらいの特異性についてはあまり気にしていませんでした.
実は最近, スピン構造付きリーマン多様体 (≒重力場 + スピン場) を量子化して \(Z_p\) が得られる的な論文を読んでいて,
そこでは可微分関数に類するものがないので物理量が激しくガタガタ動く感じだったので.


@non_archimedean 私の分野だと非有界作用素のさらに無限和 (粒子が無限個あるのでクーロンだとしてもその無限和が出てくる)
とかそういう部分の制御で手一杯で, そこまで突っ込んだことができていません.
あまり面白い方向の話に乗れず申し訳ないのですが


@phasetr さらに無限和ですか・・かなりハードな解析ですね.
それでもとても参考になりました.
ありがとうございます.


あなちゃんと.



そういえば Entanglement Entropy って C^*環の言葉で定義されてるの


@anairetta 調べといて教えてね


@ad_s_c 数学的にも面白そうな気がしますよね. とうことでよろしくお願いします.


@anairetta @ad_s_c http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1859-05.pdf
量子スピン系くらいなら一応あるにはあるらしいですが,
物理で期待されるレベルの理論が展開できているかはかなり怪しいのではないでしょうか.
いつもの話ですが


あなちゃんその 2.



え, 難しいんですか. . .


@anairetta かなり雑ですが少し書いておきました
http://phasetr.blogspot.jp/2014/05/p-bot.html
難しいと言うより物理の定義をきちんとうまく吸い上げられる純粋状態の数学的な定義がよくわからないと言う感じなのではないかと


@anairetta 最近, 田崎さんも論文を書いていたりしますが,
量子統計で純粋な平衡状態とかあるのでそういうのもきちんと勉強しないとアレっぽいと思いつつ全く出来ていないのでうまく説明出来ないのですが


@phasetr 量子統計の方では, 考える環を「マクロ物理量のなす環」に制限すると熱平衡状態が純粋状態として表せる,
という話があると聞き及んでいますが, その時の純粋状態というのはヒルベルト空間の元に対応するもののことをいっているはずで, (つづく)


@phasetr このときは 環が小さすぎるせいで熱平衡状態と区別できない純粋状態を構成できてしまう, ということですね.


@phasetr 数学的にどうなっているのかよくわかりませんが,
たぶん環 \(A\) の \(B (H)\) への表現をとってきたときに,
等価なものの間で \(A\) の純粋状態が \(H\) のベクトル一つでかけたりかけなかったりする, ということだと思います.
たしかに一般の \(A\) にここらへん状況を調べるのは難しいでしょう.


@phasetr 僕が気にしていたのはたぶん環が \(B (H)\) そのものである場合なんだと思います.
その場合には by def な気がするのであのような発言をしてしまいました.


@anairetta ありがとうございます.
量子力学の場合だと環が \(B (H)\) 全体と思ってやってもある程度どうにかなる部分はあるらしいのですが,
場の理論だとそれがまずいとか言う話で, いまだに (私が) あまりきちんとわかっていないと言う状態です


@anairetta 私はあまり一般の環には興味なくて,
具体例に対する環というか表現と言うかもっと強く作用素論に興味があるのですが,
まず最低限必要な基底状態・平衡状態きちんとありますかレベルの研究なので,
そんな詳しい所まで研究進んでいないと言うイメージです


@phasetr 場の量子論だと赤外紫外の正則化がいるので, 簡単にいかないことは想像がつきます.
エンタングルメントエントロピーのほう, 資料ありがとうございます.
こちらは場の量子論の場合は物理レベルでも満足の行く定義がない状態なので数学としてはどうしようもないだろうと.


いろいろ思うところはあるが結局これなのだ.



数論方面と言うか他の分野の数学, 格好いい話がいろいろ出てくるようで羨ましい.
それでも一番知りたい, やりたいのはあくまでも今やっている死ぬほど地味なことだが.
一度気になってしまったらもう駄目なのだ.
そういうものらしいのだ

2014年3月30日日曜日

数理物理の魅力と相転移の魅力: 数学と物理と数理物理と

Ask.fm から.
まずは質問.



二つの質問になってしまいますが,
主観的なもので結構ですので,
数理物理の (特に物理や数学それ自身と比較しての) 魅力および相転移現象の魅力がどこにあると感じてらっしゃるのか教えていただけませんか.


今考えるとあまりきちんと回答していない気もするが
とりあえず回答.


数学と物理, 両方好きで両方やりたいという単純な所です.


もちろんどちらか一方でも死ぬほどきついので,
本当に「研究」しようというなら,
どちらも半端な出来損ないになる可能性を視野に入れつつ
それでも踏み込む決意と覚悟が必要ですが.
もうあまり詳しく覚えていませんが,
相転移は大体田崎さんの影響です.


数学的には「特異性の数理」が非常に好きです.
色々あって学部一年の頃から数学的には超関数だとか
ある意味でかなり特異性の強い数学とずっと戦っていて,
結局今でも「場の理論の超関数論」と銘打って研究しているので
三つ子の魂百まで感あります.


話がずれましたが, 興味だけなら代数幾何の特異点論とか,
ブラックホールだとか, 特異性が絡む話は大体何でも興味があります.
極限で特異性が出てくる現象がとても好きで,
熱力学的極限とそこからの相転移がとても気にいっています.
相転移をやるなら人類が最大精度で扱えるのが
磁性関係だから磁石を扱う方向に行ったと言う非常に単純な動機です.


もちろん水が凍るとかもやりたいですが, アレは即死レベルだし,
シュレディンガーで磁性も即死コンボです.


磁性だととりあえずイジングですが, イジングは
(相対論的) 場の量子論の繰り込み処理との関係もあり,
数学的に量子統計と場の理論の相性がいいこともあって,
手始めにやりやすいところから, と思って
場の理論方面の勉強をしていて, 相転移自体とは
大分離れた赤外発散を修士では主に勉強していたのですが,
修論の為のネタ探しで考えたら一応磁性もできるわ,
と言う感じで磁性 + 赤外発散みたいな
特異性に特異性が重なって死ぬほど面倒臭い代わりに
趣味ばっちりな所を見つけたのでそこで今も
色々やっています.


物理的には素直な拡張でも数学的には全く
別の話を絡ませたりしなくていけなかったり,
逆に数学的には共通部分が多いのに物理としては
ちょっと遠目の所にアプローチできたりするのが
今の分野の面白いところですが,
一旦話が難しくなりすぎて死んだ分野なので,
一般にはお勧めしていません.


ただその分やっている人も少ないので,
すぐに世界のトップ 10 くらいに入れますし,
実際に多少しぼるだけでいわゆる
オンリーワンでナンバーワンにもなれます.


大学のアカポスゲット的な意味でこのご時世に
いい結果がすぐに出る保証は全くできないので,
決しておすすめはしませんが.

2014年3月28日金曜日

量子力学の数学に関する文献など: あとセミナーもしよう

また Ask.fm.
質問はこれ.



量子力学の数学的な基礎を勉強したいのですが,
どのような分野を勉強すれば良いのか教えてください.
ご面倒でなければ参考になる本についても教えていただきたいです.


色々なところで言っていたりするのだから
それ見てよ, という気もするが, 一応回答.



量子力学の数学的基礎も超大雑把に言って,
作用素論系と偏微分方程式系に別れるような感じがあります.


私がやっているのは作用素論・作用素環系ですが,
それについては例えばニコ動に置いてある http://phasetr.com/services/niconico/
量子力学・量子統計周りの話を眺めてみて下さい.


参考文献ですが, 作用素論系では
http://phasetr.com/services/references/ にある
新井朝雄先生の本がベストです.


微分方程式関係だと Lieb がリーダーです.
Lieb-Loss の Analysis が基本的な文献と言っていいでしょう.
量子力学というより量子多体系, 量子統計の色彩が強いですが,
The Stability of Matter in Quantum Mechanics もお勧めです.
ちなみに両方とも新井先生の本ほど簡単ではありません.
とくに Analysis は関数解析くらい知っている, と思って
読んでいると痛い目を見ます.


色々な不等式の最良定数評価がかなり早い段階から出てきて,
前から順番にきちんと読もうと思うと 3 章が
最良定数含め, とてもきついです.
面白い本ではあります.


あと, 作用素論との関係が強い (作用素論的性質の解析に使う) という
イメージがあるのですが, 確率論からのアプローチもあります.
これも新井先生の本をまず読むのがいいです.
その次は Simon の本あたりでしょうか.


場の理論に行くなら Betz-Lorinczi-Hiroshima を読まねばなりませんが,
これはかなりきついです.
確率弱者の私は読めません.


関東近郊の方なら適当にゼミやるのに誘って頂ければ,
話す方含め相談のります.


Twitter でもいいですが, メール phasetr@gmail.com にでも
適当にご連絡・ご相談頂ければ.


メルマガの方で時々触れることを考えているので,
ご興味ある向きは ここから 登録されたい.

2014年1月8日水曜日

田崎さんと原さんは早く Ising の本をまとめた方がいいのでは, と思った方の市民

数学的な統計力学の本とかいうアレがあったので.
数学的に書かれた統計力学の本読みたみ
@slip001 このツイートしばらくしたら相転移 P のリプライが来そうな気がする笑
@wr_r イケメン相転移 P さんからのリプレイとかうれしい\(// ∇//)\
@slip001 @wr_r 学生のころ田崎さんに聞いたことがありますが, 最低限私よりも数学できないと読めないような本で, しかもめちゃくちゃ読みにくい本しかないです. 強いていうなら新井先生の本ですが, あれは「量子統計の数学」であって「数学的な色彩の強い物理の本」ではないので
@slip001 @wr_r 滅茶苦茶読みづらいといったのが http://www.amazon.co.jp/dp/9810238622 です. 田崎さんが若い頃からある本ですが, 碌なものではないのでお勧めはしません.
@slip001 @wr_r http://phasetr.blogspot.jp/2013/11/4.html にある Bratteli-Robinson が量子統計の数学で一番有名でかつ読みやすい本です. ただ数学科レベルで関数解析できないとだめで, 量も膨大なので拾い読みできるだけのモノがないとつらいです
@slip001 @wr_r 近刊とうわさの田崎・原のイジングが一番読みやすい (読みやすくなる) はずです. もちろんイジングに特化した話になりますが, 相転移・臨界現象を学ぶにはいいはず (と信じている)
@slip001 @wr_r Bratteli-Robinson は私も必要なところしか読んでおらず, それも本当に適宜つまみ食いという感じが強いです. 必要なのである程度はまとめて読んだところとそうでないところの差が激しいので. 原・田崎の完成を待つのが一番無難という感
@slip001 @wr_r あとおそらく一番根本的な問題として, 基礎的な部分で色々な数学的困難を抱えていて数学的にきちんと議論できる統計力学の話題自体ほとんどないので, 最低限の勉強をした後はもうほぼ研究ベースの話になってしまうでしょう. それも物理としては無残なのに数学的に辛い話
新井先生の量子統計の本はこれ.



Ruelle のがこれ. ただ, 読むのはやめた方がいい.



また以前関連する動画も作ったので, 興味がある向きはご覧頂きたい.
  1. 春香誕生祭+緑なP・実解析P・パラPリスペクト1/5 量子統計の数学的基礎
  2. 春香さん誕生祭+色々リスペクト2/5 ルベーグ積分と関数解析1
  3. 春香さん誕生祭+色々リスペクト3/5 ルベーグ積分と関数解析2
  4. 春香さん誕生祭+色々リスペクト4/5 テンソル積と多体系
  5. 春香さん誕生祭+色々リスペクト5/5 平衡状態の定義について
あとこの辺.
(量子) 統計がどれだけつらいかというと, 平衡状態の定義をするだけで作用素環の至宝, 冨田-竹崎理論が必要になるというところ. 今となってはそこまで絶望的に学習が困難という話ではないが, 物理的にあって当然の概念のために作用素環の基礎理論を 1 つ用意する必要がある程度に処理が面倒というアレ
@phasetr あと修士修了後しばらくやっていて全然できなくていったん止めた話だが, ハバードモデルの基底状態の存在とかもかなりきつい. 要は具体的なモデルを何か取ってそれを詳しく調べましょうみたいな話も格子模型のレベルでほぼ絶望. スピン系が扱えることが既に奇跡と言っていいのでは感
@phasetr 基底状態の存在という話では, 場の理論での【発散の困難】的な話題も絡んでくるし, 物質の安定性の観点からの基底エネルギーの評価 (エネルギーの示量性とも関係) とか, 基本的なところで問題山積みでどうにもならない
@phasetr 「基礎が分からなくても応用はできる」というアレがあるかもしれない, と思われても, 具体的なモデルの解析はもっと難しいので手がつけられる簡単なところから, というそこの段階で詰まっているのが現状なのでどうにもならない
@phasetr むしろ問題をいくつかあげるから研究してほしい
本当, 誰か研究に協力してほしい. 

2013年11月21日木曜日

場の量子論と解析数論: p進大好きbotからの質問に答える方の市民

我らが p 進大好き bot から質問を受けた方の市民だ. 私は Fock 空間上, 非相対論的場の量子論や量子統計をやっているので物理として相対論が絡む話はあまりよく知らないし, 数論方面もさっぱりなのだが, 多少知っていることはあるのでまとめてみた.
@phasetr なるほど. ボゾンとフェルミオンに対応する Fock 空間の有界作用素のスペクトルに強い離散性を課しているのは量子論からくる妥当な制約なのでしょうか? 固有値の整列性から総和的概念と相性がよくなって数論につながっているように見えるので少しその仮定の意味が気になりました.
まず強い離散性 (トレースクラスの仮定) だが, 物理的には不十分なことこの上ない. 「物理はともかく (今の数学の水準で) 数学的に面白い話ができるのはこの場合」という割り切りと思ってもいい. 物理としてスペクトルが離散的になるのは 2 つの場合がある.
  1. \(\mathbb{R}^d\) 上, 調和振動子などの特別な場合 (confined system).
  2. 有界領域上での Hamiltonian.
前者だが, 調和振動子など大事な系はあるものの物理としては本当に特殊な場合だ. 場の理論でも調和振動子が一番の基本だし, 調和振動子は決定的に重要な系ではあるけれども. 若山先生の非可換調和振動子など, 「調和振動子」は数学的に数論との関係がかなり深いようなので面白い. ただし, 物理的には散乱がないという決定的な欠点がある. すごく大雑把にいって, 散乱は Hamiltonian の連続スペクトルの部分に対応する. 非破壊検査など散乱を基礎にした応用はたくさんあるし, ミクロな系, 特に素粒子を実験で見るときは散乱で見るため, 散乱がないのは物理としては困ると言ってもいい.

ちなみに調和振動子のように (原点から) 距離が離れるとポテンシャルが大きくなる (ので粒子があまり遠くに行かない) 系を confined system と言う. 数学的な一般論として, 「Laplacian + 最高次が偶数の多項式ポテンシャルが入った Hamiltonian」のスペクトルは離散的になる. (新井先生の『量子現象の数理』にも証明がある. ) Confined system を「Hamiltonian のレゾルベントがコンパクト作用素になる」と定義している文献もある.



後者だが, 証明や条件を忘れたものの, 有限系ならそれなりに一般的に言えたはずだ. コンパクトな Riemann 多様体の Laplacian は離散的という一般論があるが, 大体そういう感じ. もちろん, 一般には Laplacian に適当な摂動を入れるので離散性が保たれるかは自明ではないが, 頑張るとそれなりに一般に言える. 量子統計や場の理論でも, いったん有界系でトレースを使いながら理論を作っておいて, 最後に物理として標準的な \(\mathbb{R}^d\) への極限 (熱力学的極限) を取る, ということをする.

後者についてはもう 1 つ決定的な事実がある. 前者とも関係するが, 一般に無限系の Hamiltonian には連続スペクトルがあるのでトレースは取れない. 物理だと平衡状態は \(\mathrm{Tr} (A e^{- \beta H}) / \mathrm{Tr} (e^{- \beta H})\) で定義するが, これは無限系では意味をもたない. つまり数理物理としては無限系の平衡状態を定義するところから始める必要があるが, これがなかなか大変だった. ここをきちんと議論するために Haag-Hugenholtz-Winninkの有名な仕事 が出たのであって, 量子統計の数理物理に対する冨田-竹崎理論の重要性が出てくる. 冨田-竹崎理論というか平衡状態周りでも 数論における相転移とかいう Bost-Connes の結果 があるので, それはそれで数論的にも大事なようだが, こちらは難しくて読めなかった. p 新大好き bot はセミナーで読んだらしいので, 興味がある向きは p 進大好き bot に聞こう.

もう一個.
@phasetr ついでに 4 章で \(L_S\) と \(Q_{S,+}\) に対する指数定理のようなものが示されているのも興味深く感じました. フレドホルム作用素 \(S\) に対して \(L_S\) や \(Q_{S,+}\) (そして \(d_S\)) に何らかの物理的意味付けがあるのでしょうか?
こちらについてはあまり知らない. \(L_S\) は (自由場の) 超対称的 Hamiltonian, \(Q_{S,+}\) は超対称荷 \(Q_S\) の分解ということくらいは知っているが, この辺の物理自体には詳しくない. 超対称荷自体何なのかあまりよく分かっていないが, 「荷」とつくのは大体保存量であって, 物理的には普通とても大事な量に対してその名前をつける. だから大事なのだろう, くらいにしか分からない. \(d_S\) については, Proposition 4.1-4.2 にあるように「ボソンを消してフェルミオンを作る」というそのままの意味があるが, これ以上の詳しいことは知らない. 超対称性はボソンとフェルミオンの対称性なので, 正に超対称性を司る作用素が \(d_S\) という話ではある. それが幾何学的にも大切な外微分になっているというのは確かに面白い.

これ とか これ とか これ とか これ とか, 量子力学のレベルでは超対称性と指数定理というのは大きなテーマになっている. その場の理論版としてこの辺の話があり, さらに数論的な要素すら持っていたという感じなのだと思っている. 量子力学での話からすれば多様体上で何か議論したいところだが, 無限次元多様体の議論をいきなりやるのはつらいので, まっすぐなところで下調べしよう, というのが新井先生のこの辺の研究の動機の 1 つでもある. 『Fock 空間と量子場 上』の 6 章のまとめのところにその辺の話が書いてある.



物理としてはむしろ, この辺の兼ね合いから超対称的な理論が数学として幾何学的な拘束を受ける (はずな) ので, 数学 (幾何学) 的に意味が明快なところから逆に物理を見つけていくときの指針として使うのだろう. とくに素粒子では数学的な制約からあるべき物理 (モデル) をしぼっていくというのはよくある. 例えば「理論は Lorenz 対称性を持たねばならない」とか「繰り込み可能でなければならない」とか「漸近的自由でなければならない」とか. 素粒子物理として数学的指針は決定的に重要らしいのだが, 数学的にはそこを逆に使って物理的な洞察から衝撃的な数学的関係を見つけてくるのが楽しいということで色々な交流があるという認識だ. ミラー対称性とか何とかそのあたりもそう.

知っているのは大体このくらい.

2013年10月14日月曜日

物理と関数解析: LSZ やら物質の安定性やら

時々話題にするが 物理と数学, とくに関数解析というネタについてまたやりとりしたので, 記録しておく.
ある物理については関数解析の知見が本質的だったとかそういうシーンって何かないのかな
@wr_r LSZ は弱収束が大事で数理物理が先行した, 世にも珍しい例です
@phasetr どういうことでしょう.
@wr_r 場の理論の散乱をみるには演算子の収束ではなく行列要素の収束を見ないと駄目, という話です
@phasetr なるほど, それはおもしろいですね. ちょっと調べてみたら, 相転移 P のブログで今年の 2 月 7 日に取り上げていたんですね. 他に数理物理が先攻したような話ってどんなものがありますか.
@wr_r 最近というか現代的なところではそれ以外ないという理解です. 数理物理勢しかしていないこととしては物質の安定性があるでしょうが, あとはよく分かりません
@phasetr 少なそうとは思っていたのですが, そこまででしたか……. 数理物理は今研究されてる物理の手前の数学をやっているということなのでしょうか. それと, 質問ばかりになりますが, 物質の安定性というのは例えば基底状態がちゃんと存在するかとかそういう話でしょうか.
@wr_r 私が今やっているところだと, 学部三年の量子力学てやるような話をやっています. 物質の安定性は, 多体系のハミルトニアンの基底エネルギーが粒子数で下から抑えられるかという話で, 量子論のはじまり, 電子軌道の安定性の一般版です
@phasetr なるほど〜, それでは物理の人間は数学やる前に物理やってという話になるわけですね. 物質の安定性については, 確かにそういう問題は聞きませんでした. 面白い話をどうもありがとうございます.
@wr_r 物質の安定性はとりあえず http://arxiv.org/abs/1111.0170 である程度様子が掴めます. あと http://arxiv.org/abs/math-ph/0209034 とか
@phasetr リプライに今気付きました. ありがとうございます! 時間見つけて読んでみますね.
物質の安定性については物理的にもとても大事だと思っていて, 研究したいとも思っている. 物理的にはこれ以上ないほど簡潔明瞭な上に fundamental の方の意味で基本的で本当に気にいっている問題だが, 数学面でかなりきつい. 難しい数学を使うというわけではなく, 評価のための不等式の技巧が死ぬ程きついというタイプ. 微積分しか使わないと言い切ってもいい程度ではある. こういうと Lieb や周辺の人達がこう色々と言ってくる可能性はあるが, とりあえずいいだろう. 原さんなどは納得してくれると理解している. arXiv にもあるが, Buchholz の散乱に関するレビューで LSZ の経緯とか色々書いてあった記憶がある. 興味がある向きは探して読んでみよう.

2013年5月9日木曜日

RIMS の小嶋先生の論文 Derivation of Born Rule from Algebraic and Statistical Axioms を眺めてみた


別冊数理科学で小嶋先生が「無限量子系の物理と数学」というのを出すようだが, その小嶋先生の共著論文である.


Ojima-Okamura-Saigo の Derivation of Born Rule from Algebraic and Statistical Axioms だ. 小嶋先生の論文, モチベーション自体は強く物理に根ざしているが中身は完全に数学で, 読むのは死ぬ程つらい. 院で数学科に進学して, 数学上の専門は作用素環で同じはずの私ですらつらいので, 大抵の物理の人には読めたものではないだろう. 小嶋先生, たいがい滅茶苦茶に一般的な状況を扱うのが特徴だ. イントロで dually とかすぐに出てくるので, またそれか感ある. 12 ページと短かいので, 興味がある向きは直接読まれたい. ここでは私のメモとして残しておく:内容にあまり責任持てないので, 専門家はきちんと自分で読んでほしい.

アブストを読むと, Born ルールが出てくるような新たな作業仮説 (公理系) を提案したというのが主旨だ. いつも通り代数的場の量子論の枠で議論される. セクターと因子状態 (factor state) が大事という話. 因子は中心が自明な (von Neumann) 環のことで, 状態はその上の特殊な線型汎関数だ.

統計的な話を何とかしようというところで, Kolmogorov 流の定式化だと, 確率変数として関数を取らなければならないからうまくない, という話が出てくる. 量子力学ではこう色々と非可換な量を扱いたいから, ということだ.

2 節では代数的場の量子論の基礎となる数学を解説する. 3 節ではセクターが出てくる. セクターは一般化された相を表す概念で, ミクロな構造のマクロな特徴付けを表す量だ. 4 節で測定の話になり, 5 節で Born のルールを導出する.

2 節の題名は量子確率論だ. 数学だと可換だったのを非可換にしたときによく「量子~」と呼んだりする. 相当の濫用だと思うが, 深く気にしてはいけない. 必ずしも物理と関係しているわけではない, ということも強調しておこう. ここでは単位つきの *-環を考える. Twitter ではよく「単位元は甘え」とか言っているが, von Neumann 環なら単位元がなくても中心極大射影を単位元と思ってよくなるので, von Neumann 環の場合は普通単位元の存在を仮定する.

あと状態 (state) の定義だとか代数的確率空間の定義などをする. 代数的確率空間というのは, 単に単位元つきの *-環と状態の組を指している. Riesz-Markov-Kakutani の定理から, 可換な \(C^*\) 環上の状態は確率測度と思える. これの非可換版を考えているというだけだ.

代数的場の量子論でどうやって物理での普通のアプローチ, つまり Hilbert 空間を基礎にした定式化を復元するか, という話が GNS 構成定理・GNS 表現という話になる. これが定理 2.1 だ. von Neumann 環上の正規状態 (normal state) というのが出てくるが, これは Lebesgue の単調収束定理が成り立つような状態だ. 可換な設定ではないので, 状態から本当に積分論が復元できるかが分からない. もちろん復元できた方が色々とアナロジーも使えて便利なので, 復元できるような設定として von Neumann 環では大体正規状態を考える.
3 節でセクターの解説が始まる. quasi-equivalence (準同値) という概念が定義され, これを使って表現が disjointness を定義する. そして因子状態の準同値類としてセクターが定義される. 因子状態は単純にその状態の GNS 表現 (から作る von Neumann 環) が因子であることだ. 因子状態は準同値でないなら disjoint という強烈な定理があるので, それも併用している.

準同値を考えるのは, 代数的場の量子論が表現論を主軸に据える理論だからだ. 普通量子力学だとユニタリ同値で議論するが, 場の理論はこれでは足りない. 表現を取り替えて議論する必要がある. そこで表現をまたぐような概念として準同値が必要になる.

興味がある向きには物理的な議論として高橋先生の本の第 5 章の fixed source model を読んでほしい. ちなみに新井先生の「フォック空間と量子場」の 12 章がこれの数学的な解析で, 物理的に期待されるのと同じ現象を示す. さらについでにいうと, 13 章で議論される Nelson モデルも同じような振舞いをする. これは赤外発散が原因だ.

   
状態 (またはその GNS 表現) の disjointness はマクロな識別可能性を表すことになっていて, そこでセクターはマクロな分類の指標となっている. 作用素環をフルに使った文脈で相転移を議論するとこの辺が良く分かるのだろうが, 私自身は不勉強で全然分かっていない.
Subcentral measure とか色々出てくるのだが, この辺はさっぱりだ. 慣れで何となく気分的に納得してしまっているのはよくない. 中心が古典的な話に対応しているという話をしたあと, 測定の話が出てくる.

4 節の測定の話は全く分からないのでお手上げという悲しみ.

6 節で上記の「無限量子系の物理と数学」が引用されていた. 日本人以外のアクセス, 死ぬ程悪いな, という印象を受けた. 汎関数積分 (経路積分) の方の構成的場の量子論の論文で, 時々ロシア人 (多分) がロシアの教科書を引用してきたりして悲しみに包まれることがあるが, それを想起した. 何かもうさっぱり分からないが, 先日話題になった小澤先生の測定の文献も参照されていたりしたことだけメモしておこう.

代数的場の量子論で (とりあえず) 有界作用素だけ扱っていればいいのか, とかそういう疑問もあろうが, それは別の機会にやろう. Summer School 数理物理 2013 量子場の数理の予備知識みたいな感じでやれば, タイムリーでいいかもしれない.

2013年4月30日火曜日

表現論 (文学ではない) と解析学:入門的なアレ

解析系の学生が表現論をちょっとやってみたいとかいうので, いくつかアタックしやすそうなラインを勧めておいた. この辺 だ.
@yukimi_go まずはストーンの定理とか半群理論とかやるといいのでは 
@yukimi_go フーリエ解析も表現論なのでその辺からやって行く手もある説 
@yukimi_go 色々ありますが,PDFだとhttp://web.sfc.keio.ac.jp/~kawazoe/SK%20awazoe.pdf とか http://krishna.th.phy.saitama-u.ac.jp/joe/sotsu/Yoshnaga2009.pdf. はじめから調和解析と言えばよかった説. あとこれも参考にhttp://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c147f6ab740cf0c0968882d347f3bb0
表現論は私自身もよく知らないのだが, 専門は \(C^*\) 環論の表現論と強弁することがある. また対称群周りの表現論はボソン, フェルミオンとの関係で使うし, \(\mathbb{R}\) のユニタリ表現は時間発展との関係で出てくる. Lorenz 群や Poincare 群も相対論的場の量子論で使う. Haar 測度などもまともに勉強したことないが, 勝手に使っている. どこかで勉強したいとはずっと思っているのだが.

     

小林, 大島先生のは東大数理でも使うレベルの本格的な本だ. 第一分厚い. 色々書いてあるので眺めていて面白いのは間違いない. 杉浦, 山ノ内本は数学というより物理向けの本だろう. 数学的にきちんとした本だが, 山ノ内先生が物理の人で, 表現論周りのことをしていて物理の人でも読める本を, ということで書かれた本だった気がする. 読んだことはないのだが, 読んでみたいということで入れておいた. あとは新井先生の本で, 量子力学, 場の理論周りの話が書いてあるので入れておいた.


2013年3月13日水曜日

Twitter まとめ:数学の作用素論と数理物理の作用素論


数学の人がいう作用素論と数理物理というか量子力学周辺の作用素論は少し違う. 知っていることについて少しまとめておこう. 私は数理物理というか量子力学, 場の量子論周辺の作用素論の人間であり, 数学側の動きを完全に知っているわけではない. 実際にはもっと色々あるだろうから, 参考程度に思ってほしい. このあたり からはじまる.
作用素論っておもしろそうなにおいするけどいまいちどんなのかわからんぽん 
@yuki_migo 数学の人がいうところの作用素論は有界作用素の話のようですね. 正規作用素というのがありますが, それを一般化したhyponormalとかそんなのを議論したりする模様. 日合-柳の本に多少書いてあります. その他には行列不等式とかその辺も多分作用素論 
@yuki_migo 物理系というか私の周辺の作用素論だと, 量子力学とかその辺の具体的なハミルトニアンの解析をします. 坊ゼミではその辺の話をします
上に引用した日合-柳の本はこれだ.

4 章までしか真面目に読んでいないのだが, 非常にいい本でそこまででも十分に価値がある本だ. 証明も丁寧に書いてあり, とても良い本なので紹介しておきたい.

前書きにもある通り, 作用素環関係の話題はほとんどないがその方面にいくとしても役に立つことはあるだろう. 日合先生の方は実際に作用素環もやっている. Hilbert 空間中心なのだが, 1 章では Banach 空間のこともきちんと書いてある. 関数解析の基本的な定理は全ておさえてあるので, これで関数解析の勉強もできる. その場合は付録もきちんと読む必要があるけれども. あとで書くが, この付録がまた良くできているので付録も絶対に読んでほしい.

2 章から作用素の話に入る. ここからは特に『量子力学の数学的構造』の 1 と重なる部分が増える.

上掲書よりも議論がすっきりしているので, 読みやすいと感じる人もいるだろう. ただポイントとなるスペクトル定理が『量子力学の数学的構造』と『ヒルベルト空間と線型作用素』で違う証明になっている. どちらとも味があるが, 私は『ヒルベルト空間と線型作用素』の, Riesz-Markov-Kakutani の定理を使う証明方が気に入っている. 『量子力学の数学的構造』の方は余計な道具を持ち出さないストイックな感じで, それはそれで良い. 両方勉強しておくとなおいい. あと『ヒルベルト空間と線型作用素』の方は有界作用素の functional calculus に関する議論が役に立つ. これは作用素環でも非常に役に立つ議論なので, これで慣れておくと便利だ.

3 章はスペクトル定理だ. 作用素論の至宝であり, 量子力学への応用上も決定的に重要なのできちんとやってほしい. 『量子力学の数学的構造』では 2 巻にまわっている Stone の定理も一緒に証明されているところがまたいい.

4 章はコンパクト作用素の話だ. 量子統計などで形式的に使うことはあるが, 実際にはあまり使えない. ただ, 一度はきちんとやっておくべき内容ではある. Fredholm 理論は応用上色々なところで出てくるようだが, そういうところでも使える. 超対称性とかそういうところで出てくると聞いている.

5, 6 章は作用素論の進んだ話になる. あまり真面目に読んでいないので書けることはない. ただ, 今, 作用素論で研究されていることの基礎的なところに触れているようなので, そこに興味がある人は学んでおくときっと役に立つのだろう.

そして付録だが, これが恐ろしくいい. Hahn-Banach, Riesz-Markov-Kakutani, Krein-Milman, Stone-Weierstass, Gelfand-Naimark の定理という, 関数解析の至宝とも言える定理が非常に丁寧に議論されている. Riesz-Markov-Kakutani の定理は汎関数が積分で書けるという一連の定理の基礎となる話であり, 証明も込めてきちんと学んでおくべきだ. 「正値超関数は測度である」という超関数論の有名な定理もこれとほぼ同じ証明だ. 他にも確率論で Brown 運動を構成するときにも使える. Krein-Milman は端点集合に関する話で, 作用素環で純粋状態の議論をするときに魂となる.

話がずれまくって『ヒルベルト空間と線型作用素』の書評になってしまったが, よい本なので関数解析の初学者にも最適なので, 興味がある人は是非参考にしてほしい本だ.

それで作用素論だが, 微分方程式関係でも多少「作用素論の結果」として出てくることがある話がある. Sobolev 空間の埋め込み関係で埋め込み写像がコンパクト作用素になるという話があるが, それは上でも少し書いたコンパクト作用素の話になる. 微分方程式で定評のある本, Brezis の本でも Fredholm の択一定理が載っていたので, 使うことはあるのだろう. 微分方程式は不勉強なのであまり言えることはないのだが.

数学の作用素論で行列不等式がある, と書いたが, これは専門書がいくつかある. 和書だと最近出た本で面白そうなのがあったので紹介したい. 買うだけ買ってまだきちんと読んでいないのだが.

行列不等式は量子統計, エントロピー関係でも時々出てくる. 作用素環レベルで無限次元版があったりするのであなどれない.

数理物理というか量子力学の作用素論だが, こちらは具体的な非有界作用素の解析をするのが中心になる. これはやはり新井先生の本を勧めるしかない.
  
議論は恐ろしい程丁寧で内容もしっかりしているのだが, 正直, Hilbert 空間論や関数解析の数学としての入門には向かない. 少なくとも上記 3 冊全部読めば基礎はカバーできるのだが, 関数解析として体系だった紹介はされていないので, 要領が悪い. あくまで量子力学用に特化した内容で, 量子力学のために必要なことをある程度具体的な問題を通して学ぶ本と言った方がいい.

はじめに書こうと思っていたことと大分違ってしまったが, まあいいだろう. 量子力学関係の話については, 3/24 の埼玉大でのゼミ で話す予定なので興味がある方は参加されたい.

2013年3月4日月曜日

Twitter まとめ:高校生とのハートフルなやりとり 数学あるある 2000 年の恋編


先日こんなネタ を呟いた.
数学あるある 2000年越しの恋
これが高校生に RT されていたため, 数学ガールの読者のようで, その辺を関係づけるときっと楽しいだろうと思い, 折角なのでちょっと話しかけてみた. 今回はそのハートフルなやり取りをまとめておきたい. 大体この辺 から始まる.
@lovemath0218 http://https://twitter.com/phasetr/status/307862438148206592 の元ネタが何だか分かりますか? 
@phasetr ごめんなさい、元ネタは分かんないです(><;) 
@lovemath0218http://http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%9A%E8%A6%8F%E3%81%A8%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%B9%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E4%BD%9C%E5%9B%B3#.E4.B8.8D.E5.8F.AF.E8.83.BD.E3.81.AA.E4.BD.9C.E5.9B.B3数学ガールのガロア理論の巻に角の三等分問題がありましたが,その辺です. 古代ギリシャの頃からあった問題で解決が1837年なので,だいたい2000年です. 
@lovemath0218 2000年経って解決されたのをもって2000年越しの恋が成就,という感じで適当に呟きました. さらにいえば恋は実ったところからこそが始まりとも言えるわけで,その後のガロア理論の深い展開は色々あります. 専門ではないので私は詳しくないですが 
@lovemath0218 あと,純粋な数学ですぐには思いつかないのですが,他に,例えば物理で2000年かかってまだ解決されていない問題があったりもします 
@phasetr 2000年経っての解決を意味してるのは予想出来たんですが、さすがに角の三等分問題まではたどり着かなかったですね(><;) 
@phasetr 色々教えてくださってありがとうございます(´▽`) 2000年かけても解決されない問題、何だかワクワクしますね(笑) 
@lovemath0218 超我田引水ですが,磁石が何故存在するか,というのも2000年レベルで未解決の問題です. 私はこれに関する数学を研究していました. そういう問題,意外とその辺に散らばっています 
@phasetr そうなんですか!? また色々調べてみます((((゜▽゜))))
Galois 関係というか代数をほとんど知らない (分かる分からない以前の問題) なので何ともいえないのだが, 微分 Galois 理論 といった議論もあるし, 代数幾何などとも関連する方向での展開も色々あると聞いている. その辺は Twitter で代数または代数幾何系の人に聞くときっと色々教えてくれる.

天文だの何だの色々あるだろうが, 物理関係でも 2000 年クラスの問題はある. 上にも書いた通り, 磁石の問題は 2000 年の時を経てもいまだに解決されていない. 興味がある向きは【シリ*MAD支援】線型代数と多体電子系【アイマス教養講座】 などをご覧頂きたい. Hubbard モデルという磁性体の簡単なモデルについて説明している.

また Bohr-van Leeuwen の定理 というのがある. 古典論の範囲では磁性体が存在しないというように (適当に) まとめられる. どうでもいいが, 上記 Wikipedia の記事中, 次のような記述があったが相対論をどう思っているのかとても気になる. 普通, 相対論は古典論に入れる. 古典論というのは非量子論という意味で使うのが普通で, 相対論は量子論とは別枠だ. 相対論的量子力学とか相対論的場の量子論というのがあるので, マッチする部分があるけれども.
この定理の発見の重要な点は、古典力学の範囲では反磁性、常磁性、強磁性などの磁性を説明できず、 それらを説明するには量子力学と相対性理論が必要不可欠であるということである。
量子論の物理入門というのは明らかに私の能力を越えているが, 量子力学というか場の量子論と量子統計の数学なら私の専門だ. ここについてもいくつか動画を作ったので, 興味がある向きはご覧頂ければ幸いだ. まず量子統計だが春香誕生祭+緑なP・実解析P・パラPリスペクト1/5 量子統計の数学的基礎 から続く 5 連作がある. 全部で 90 分程度あった気がする. 作りかけでアレだが【理工学M@ster祭り2nd】量子力学の数学的基礎1-1.概論 というのもある.

また, 量子電気力学入門として【シリ*MAD】レーザー:電子がうたう歌 というのも作った. レーザーという「身の回り」にあるものだが, 原理的には場の理論が必要になる. こちらは数学分はほとんどない (つもり). アイドルとレーザーの感じをうまく絡められた感があり, 個人的にはかなり気に入っている.