【動画】今週発売のブルーバックス『大栗先生の超原理理論入門』, 著者の大栗先生からメッセージ動画アップされました, こちら→http://youtu.be/UY6cXpTTKJQ動画内では大栗さんの他, Schwarz と Green で出てきている. 大栗さんの肉声が聞いてみたいという向きは是非見てみよう. 本も面白かったし, 興味がある向きは読んでみよう.
大栗さんが楽しそうに本を書き, そして研究しているのが伝わってくる.
相転移P @phasetr のブログ.ニコニコやYoutubeに投稿した動画の紹介をしたり,Twitterでのまとめをしたり.専門は数学・数理物理:構成的場の量子論,厳密統計力学.
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超弦理論の研究から, 空間の「次元」が変化してしまうという驚くべきプロセスが発見されました.何にせよ, のっけから空間の次元の話を押し出してきていて, 心を掴みに来ているな, という感じ. ふと思ったが, 時間は何で 1 次元扱いなのだろう. 不公平感溢れる.
P.6超弦理論, ブラックホールの温度という話も出てきたし形式的には多体系の理論になると思っているのだが, 温度はどう扱っているのだろう. 形式的に「絶対零度」の世界の理論なのだろうか. 京都の小嶋先生あたりの相対論的場の理論での非平衡状態に関する研究あるし, 温度が入ると Lorenz 不変性が壊れるとかいう話というのを聞いたので, その辺気になる. Curved spacetime 上, 普段私が触っているフラットな時空での対称性の議論がどこまで使えるかがまず問題なので Lorenz 不変性の話はいいとして, 温度の扱いは気になった. 超弦レベルでの温度の定義とかまた修羅の世界っぽいが, そもそも意味があるのかどうかが気になる.
温度とは分子の平均エネルギーの表れにすぎません.
P.7超弦というか相対論的場の量子論を含む素粒子関係, 理論が異常なくらい綺麗なので時々驚く. 私は一応物性回りで, 綺麗になり過ぎないぎりぎりのところで, しかも現行人類に扱える範囲の対称性は持っているところを狙っているので, (不勉強で関連する物理がよく分かっていないこともあり) 綺麗すぎると物理として大丈夫なのか, というのが気になるが, 真っ向から逆を行っている感じ, 何ともいえず, 面白い. 数学的整合性を軸に議論するというの, AQFT では基本中の基本ではあるけれども.
そして, この理論が数学的につじつまが合っているかどうか確認していく作業の過程で
P.8次元が決まるというの, 確かに面白いし魅力的. 普段好き好んで \(d\) 次元で考えている私が言うのもアレだが.
第 4 章では, 超弦理論では「空間の次元が決まる」理由を明らかにします.
P.12超弦だと物質の基本は (昔ながらの) 粒子とするのではなく弦だと思うという話だが, 少なくとも何故「点」では困るのか, というところから始まる. ここまで書いて思ったが, 脱線が多過ぎて本の筋が何なのか見えなくなりつつある感想文になってしまっていて実にアレ.
私たち素粒子物理学者はこうした問いかけを心に抱き続けたまま, 大人になってしまいました.
P.32
先日も著名な天文学者と話しているときに「大栗さん, 超弦理論と超ひも理論というのは, 同じものだったのですか」と聞かれて, びっくりしました.
P.37よくあるアレだが, 超弦くらいの無茶な話をするなら, もう「光は波やら粒子やらといった (古典的な) 存在ではなく量子という別の何かであって, 常識的な見方は捨てるように」と言い切った方がいいのではないか. 「物理学者は保守的」という記述もある中, 保守的な人間ですら常識を捨てざるを得ないほどよく分からないということ, もっと強調していいと思う. その上でさらにどうしようもなくなって弦のような何かというところまで行き着いた, という話ではないのか.
光は「波」であり「粒」でもある
P.42Feynman ダイアグラムがぽんと描かれていて爆笑した. この辺きちんとやったことがない方の市民なので, これ見ても何故無限大になるのかさっぱりだが, 無理矢理ぶっこんで来る気概, 尊い. あとで弦のダイアグラムも出てくる.
これをファインマン図で表すと, 図 2-3 の左のように, 電子が自ら発した光子を吸収する現象と表現することができます. これによって電子の質量が無限大になってしまうのです.
P.46この周辺でくりこみの話が議論される. 階層構造のおかげでくりこみが上手く働くのだが, 重力を考えないといけなくなるとここが難しくなるという話.
自然界の階層構造
P.53ここ, さらりと書かれているが凄まじい. 最後, ブラックホールの話が出て次章となる.
先ほども述べたように, 自然界に階層構造があって, よりミクロな世界の理論のほうが基本的であるというときには, 空間的な距離がきちんと測れることを前提をしています. 距離が測れなければ, よりミクロな世界とは何を意味するのかさえわかりません.
中略
重力と量子力学が統一される世界までいくと, それよりもミクロな世界は存在しないと考えられているのです.
P.58 コラム 思考実験数学だと「思考」が外れて本当に実験ができる. 理論と実験の区別, 特にないのが数学のいいところ, ということで牽強付会に数学につなげていきたい.
街中を散歩していても, 食事中でも, 思考実験はいつでもどこでもすることができます.
P.72弦の話に入って早々に光と重力が弦で統一的に理解できるという無茶がぶっこまれる. さらりと猛スピードでやってくるのでびっくりだ.
光子は「開いた弦」の振動
閉じた弦は重力を伝える
P.78弦理論だと boson だけ, 超弦だと fermion も含む, ということらしい. 超空間とかグラスマン数の話が出てくる. 物理の人はよくグラスマン数というが, 数学だと普通は外積代数という. Lie 代数と Lie 環, 作用素代数と作用素環のように, この辺, どういうところから言葉の使い方の違いが出てきたのか前から不思議に思っている. 外積代数に関しては, はじめに見つけた人の名前を出す物理の人の言い方がいいとは思うし, Lie 代数についても環ではなく代数の方が正確だからこれも物理の言い方の方がいいと思うが, 物理の人の言葉遣い, 無茶苦茶な方が普通なので, こう色々なものを感じる. 数学は数学で, 量子化・量子何とか・エネルギーなど物理用語を魔解釈することはあるにはあるのだが.
弦理論と超弦理論の違い
P.95正面切って聞かれると答に窮する疑問だが, 超弦だとこれが出てくるという戦慄すべき話が語られる. 大栗さん自身次のように書いている.
なぜ三次元なのか
P.95超弦理論という「理論」を「自然法則」と言っていいのかはよくわからないが, 次元を決めてしまう理論が凄まじいのは間違いない. これではじめて知ったのだが, これなら超弦理論に夢中になる人がいるのも道理だという認識に至った. この章では 25 次元の話なども出てくる. ここに興味がある向きは是非きちんと本を買って読んでみてほしい. あと, ここの特に超弦理論の計算のところ, 参考文献つけてほしい.
次元の数が決まるというのは, 物理法則としては前代未聞のことです.
P.111散乱理論が作れない中で出てきた AQFT や GQFT の動き・目的は正にここだったのに, 物理の人から「公理的場の理論の物理への寄与は任意に与えられた正数よりも小さい」とか言われていた, というのをふと想起した.
超弦理論の研究で, 数学的な整合性が大きな導きの意図になっているのはそのためです.
P.150これ, 本当に \(SO(32)\) なのだろうか. 本当に「Infinity cancellations in SO(32) superstring theory」というタイトルで, Green-Schwarz だしこれだろうか. Yang-Mills にしろ, 本当に回転なのか. 何故球面上の話がそんなに大事なのだろう. そもそもゲージがよく分かっていないというところがあるから仕方ないのだが. ぎりぎり BCS と BEC を知っている (分かっているわけではない) が, そこでも「向き」が大事なようだし, 何か向きの話なのだろうな, という漠然とした感覚はあるが, それでいいのかよく知らない.
「三十二次元の回転対称性だ」
P.158Calabi-Yau からの Witten が来た. Witten は「量子力学は 20 世紀の数学を彩ったが, 21 世紀の数学は場の量子論の数学になるだろう. 超弦理論は本来 22 世紀の数学なのに間違って今世紀に出てきてしまった. 私はこちらで頑張るが, 場の量子論界隈は 21 世紀の数学をきちんとやっておくように」のようなことを言ったと聞いている. それならほぼ死んだ状態の場の量子論界隈の数理物理に人を回すよう手配してほしいと思っているのだが, 全く実現しない. 困ったものだが, そのおかげで私も大学出てしばらく経つのに場の理論の数学界隈から取り残されずに済んでいるのでつらい.
カラビ-ヤウ空間によるコンパクト化
P.160この条件とか凄く気になる. あと Calabi-Yau, 問題自体は大分前 (20 世紀初等くらい) から出ていたと思っていたが, かなり最近だというのを確認してちょっとびっくりした. 解決自体は Yau だからそれ相応の年代というのは知っていたが. 数学的な発見の時代と物理的な利用の時代が時期的にかなり近いというかほぼ同時進行なのも奇跡的で面白い.
コンパクト化したときにその条件をぴったり満たす六次元空間が, 六年前の一九七八年に数学者によって見つかっていたことを知りました.
P.162トポロジーからクォークの世代数が決まるという話, 意味不明で凄まじい. トポロジーというか幾何から物理が決まるというの, P.130 あたりの Aharonov-Bohm でもあるにはあるのだが, 結局この辺触ったことほとんどないからぴんと来ないというか戦慄する感じはある. Aharonov-Bohm も物理というより数学関係, CCR の表現論として触ったところが強いので, そういうのもいけないのだろうけれども.
カラビ-ヤウ空間の幾何学で, 素粒子模型が決まる
P.169あまり書いてしまうとよくないかと思って省略した. これは凄まじい. それは超弦理論に, Calabi-Yau に夢中になると理解.
カラビ-ヤウ空間が与えられることで答えの出る問題は, 実は素粒子の世代数だけではありません. 後略
P.170この記述の意味は以前 Twitter で大栗さんに直接聞いたことがある. ここで周辺の話についてちょっと書いておいたので興味がある向きはご確認頂きたい. 大栗さんから Twitter で頂いたお返事は別途引用しておこう. よくある存在だけは分かっているが性質がよく分からないというアレだ.
距離の測り方すらわからない
@phasetr コンパクトなカラビ‐ヤウ多様対については、 計量テンソルが存在することは証明されているが、その具体的な形がわかっていないということを噛み砕いて述べたものです。
P.172言いたいことは分かるが, 何というか, 結果的にゲルマンが目利きだったという部分が強調されているような感じでちょっと嫌. 結果的に超弦が駄目な結果になっていたとしても, それに賭けて心血注いだ Schwarz とそれをサポートした Gell-man の志は尊い. いいたいことが上手くまとまらないが, 言いがかりに近いアレだ.
ゲルマンはのちに, 「超弦理論のような絶滅に瀕している分野のために, 保護区を設けたのだ」と語っています.
中略
ゲルマンのような目利きが見守っていたからこそ, シュワルツも自由な心と集中力を持って研究ができ, 真のイノベーションを起こすことができたのです.
P.184大栗さん, 超弦理論の発展の生き証人という感じで実に羨ましい. 研究者になりたかったと改めて思わされる.
大事件が起きたのは, その数ヶ月後でした. 第一次超弦理論革命と同時に研究者人生をスタートした私は, バークレイで研究室を立ち上げようとしていたときに, 第二次超弦理論革命に直面することになったのです.
P.196これ, どういうことなのだろう. 参考文献知りたい. 数学的・物理的に読めるかどうか, 読む時間が取れるかはともかく.
空間の次元を高くすると, 二種類の粒子の数を合わせることができなくなるからです.
P.203数学的に何が足りなかったのだろう. それが無性に気になる. 超弦ではなく場の理論だが, こういう「物理に必要な数学を見つける・作る」という問題, 自分の専門ということもあるから.
当時はまだこの研究に使える数学的な道具が限られていたことも, 理由の一つでしょう.
P.204円の半径が変わるというはともかく, 結合定数が変わるというのはどういうことなのだろう. ある物質というか場の結合定数が大きいときの問題というにしても, 結合定数変わるのだろうか. 裸の結合定数とかその辺の話? それは超弦理論でもまだ何かあるということか. 光学格子上の BEC のように, 結合定数を変化させられるのだろうか.
円の半径が, 力の大きさになる
P.207
結合定数が大きければ大きいほど複雑化し, 計算が困難になると思われていた超弦理論が, その極限では一〇次元空間の超重力理論になるという, きわめてシンプルで美しい理論になっていたわけです.
P.214 column超弦界隈は現在進行形で色々あるようだが, 私の専門の量子統計・場の量子論でも色々あるし今もある. 特に作用素環への影響は顕著だ. 熱力学・統計力学で一番基本になる概念である平衡状態の定義そのもので新しい数学が生まれたことがある. 正確にいうと数学での発展と物理での発展が同時に起こって一体になって進んだ経緯がある. 有名な話でバトンルージュでの国際会議で, 後に冨田のモジュラー理論 (冨田-竹崎理論) と呼ばれる理論に関する冨田稔のプレプリントが出ていたのだが, Haag-Hugenholz-Winnink による平衡状態の定式化に関する話もあった. プレプリントを見ると出てくる式がやたら似ていて不思議なこともあるものだ, と思っていたら, 実は数学的には同じ話だった, という荒木先生の話があった. 最近量子統計界隈でそういう動きはないように思うが, 相対論的場の量子論, AQFT ではまだまだ動きがある. 非相対論的場の量子論 (構成的場の量子論) だと新しい数学と言えるのかは分からないが, 数学的研究は進んでいる. 超弦は人がたくさんいるので, 興味がある向きは是非こちらにも来てほしい.
そもそも, 素粒子論や超弦理論の新しい発展が, 既存の数学ですべて理解できるとはかぎりません. 研究をしながら, 新しい数学を作っていくことも必要になるでしょう. そして, このような研究から新しい数学分野が開けていくこともあります.
P.229ブラックホールの温度, どう定義しているのだろう. ブラックホールの熱力学というのを聞いたことはあるが, 実際に何をやっているのかは知らない. 「p-ブレーンも温度を持つ」という記述があるが, p-ブレーンの温度もどう定義しているのか気になって仕方がない. P.230 で「開いた弦の運動によって説明できた」との記述があるが, 平衡系の計算みたいなことをしているのだろうか. ブラックホールに平衡系の理論は適用できるのだろうか. とりあえず適用してみて一致することが分かった, という話? 素人がすぐに思うことを専門家が突っ込まないはずがないので, きちんと議論はあるのだろうし, それを知りたい.
ブラックホールの温度が説明できるようになったのです.
P.234また名前だけは知っている重力ホログラフィーと AdS/CFT が出てきた. AdS/CFT, この辺の話だったのか.
重力のホログラフィー
P.239何だか知らないが「温度が本質的なものではない」というのにイラっと来た. 自分の熱力学・統計力学への過剰な思い入れを感じる出来事だった.
温度も, 空間も, その中に働く重力も, 本質的なものではない.
P.242理論で予言できた現象が実験で再現されるという話, 無条件に胸が高鳴る.
この現象は, 重力のホログラフィー原理を使って予言されていました.
P.252数論幾何をやっている nolimbre さんの「位相空間は甘え」という言葉を想起した.
私「空間とは, どのような種類の集合なのですか」
数学者「近いものと遠いものの区別がつくような集合です」
P.261これまでの記述は時間変化のない現象ばかりだったということ, 意識していなかったので「ほー」という印象.
超弦理論のこれまでの研究は, 九次元空間のコンパクト化のような, 時間的に変化しない現象に集中してきました. しかし, 宇宙の始まりの問題に超弦理論を応用しようとすると, 超弦理論において時間がどのように扱われるべきかについて, 深く考える必要があります.
P.269難しくなりすぎて研究者が離れて, 今では滅亡の危機に瀕している構成的場の量子論とは大違いだ. 非相対論的場の量子論の方ならもう少し何とかなる気はする. 4 次元 \(\phi^4\) の自明性ですら手が負えず, QED は Dyson が 50 年も前に存在しないだろうという兆候を見つけたきり多分何も動いておらず, かといって QCD もどうにもならない. (量子) 統計方面でも, Heisenberg や Hubbard ならもう少し何とかなる気はするが, Ising だと大体悪魔のような問題しか殘っていなくて, 革命的な展開が 2-3 は必要という印象がある. 超弦理論, 羨ましい.
学生が大学院に入学してから超弦理論の論文を書けるようになるまでの年数が, 私が大学院生だった三〇年前も現在も, 変わっていないことです.
P.270もちろん注目はするが, 少し研究者をこちらに分けてほしい.
超弦理論はまだまだ発展途上の理論です. それは研究者にとっては, 挑戦すべき問題がたくさんあるということでもあります. この分野のさらなる発展にご注目下さい.
8月20日にブルーバックスから『超弦理論入門』を出版することになりました。 これに先立ち、講談社では読者モニターを募集しているそうです。 募集締め切りは日本時間で今週の8月2日正午で、感想文の締め切りは8月18日だそうです。 https://eq.kds.jp/bookclub/3526/とりあえず私も応募してきた. 大栗さん, 村山さんが最近頑張っているので, 超弦周りは色々本があるが, 物性周りで何かこういう動きないだろうか. 数学でももっとやってほしい.
過去の Strings 会議の講演者と講演内容の変遷と一望できるページをつくりました.http://member.ipmu.jp/yuji.tachikawa/stringsmirrors/statistics.htmlどう見ると面白いのだろう. そういうのが少しあるだけでも門外漢には嬉しいのだが, と思ったところで, 自分もそういうのを作っていくべきなのだな, と思う方の市民であった.