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2013年10月14日月曜日

物理と関数解析: LSZ やら物質の安定性やら

時々話題にするが 物理と数学, とくに関数解析というネタについてまたやりとりしたので, 記録しておく.
ある物理については関数解析の知見が本質的だったとかそういうシーンって何かないのかな
@wr_r LSZ は弱収束が大事で数理物理が先行した, 世にも珍しい例です
@phasetr どういうことでしょう.
@wr_r 場の理論の散乱をみるには演算子の収束ではなく行列要素の収束を見ないと駄目, という話です
@phasetr なるほど, それはおもしろいですね. ちょっと調べてみたら, 相転移 P のブログで今年の 2 月 7 日に取り上げていたんですね. 他に数理物理が先攻したような話ってどんなものがありますか.
@wr_r 最近というか現代的なところではそれ以外ないという理解です. 数理物理勢しかしていないこととしては物質の安定性があるでしょうが, あとはよく分かりません
@phasetr 少なそうとは思っていたのですが, そこまででしたか……. 数理物理は今研究されてる物理の手前の数学をやっているということなのでしょうか. それと, 質問ばかりになりますが, 物質の安定性というのは例えば基底状態がちゃんと存在するかとかそういう話でしょうか.
@wr_r 私が今やっているところだと, 学部三年の量子力学てやるような話をやっています. 物質の安定性は, 多体系のハミルトニアンの基底エネルギーが粒子数で下から抑えられるかという話で, 量子論のはじまり, 電子軌道の安定性の一般版です
@phasetr なるほど〜, それでは物理の人間は数学やる前に物理やってという話になるわけですね. 物質の安定性については, 確かにそういう問題は聞きませんでした. 面白い話をどうもありがとうございます.
@wr_r 物質の安定性はとりあえず http://arxiv.org/abs/1111.0170 である程度様子が掴めます. あと http://arxiv.org/abs/math-ph/0209034 とか
@phasetr リプライに今気付きました. ありがとうございます! 時間見つけて読んでみますね.
物質の安定性については物理的にもとても大事だと思っていて, 研究したいとも思っている. 物理的にはこれ以上ないほど簡潔明瞭な上に fundamental の方の意味で基本的で本当に気にいっている問題だが, 数学面でかなりきつい. 難しい数学を使うというわけではなく, 評価のための不等式の技巧が死ぬ程きついというタイプ. 微積分しか使わないと言い切ってもいい程度ではある. こういうと Lieb や周辺の人達がこう色々と言ってくる可能性はあるが, とりあえずいいだろう. 原さんなどは納得してくれると理解している. arXiv にもあるが, Buchholz の散乱に関するレビューで LSZ の経緯とか色々書いてあった記憶がある. 興味がある向きは探して読んでみよう.

2013年6月3日月曜日

1 文字 1 文字に万感の思いを込めて式を書こう:不等式の記号に思いを寄せて

高校までは不等号というと \(\leqq\) 一択だったが, 大学に入ると \(\leq\) や \(\leqslant\) という不等号が出てくる. 特に \(\leqslant\) は大 2 病的な感じで使いはじめる者もいたことだろう.

また書く量が減るから, ということで \(\leq\) を使う人もいる. \(\leqslant\) も斜めにシャシャッと書く感じで書きやすそうだし, そういう意味で \(\leqslant\) を使う人もいそうだ.

だからどうということも特にないのだが, 私は \(\leqq\) を愛用している. ご多分に漏れず \(\leqslant\) を使ってみようと思ったこともあるのだが, 癖でずっと \(\leqq\) を使い続け, 結局そのままだ.

今になって思うと画数も多いこの不等号 \(\leqq\) がとても気に入っている. 基本的に記号や式は万感の思いを込めて書くものだ. 苦闘の末得られた結果を綺麗にまとめているときにはなおさら. わざわざ下に棒を 2 本つける感じが, 私の心の底に深くたゆたう不等号への愛情を表現しているような気さえしてくる.

あと, 少なくとも物理と数学では 1 つ 1 つの記号をとても大事にする. 記号 1 つとってもそこから読み取れるメッセージというのがある. 例えば物理で \(E\) と出てきたらエネルギーなり電場なりに良く使うが, そこから一気に関連する諸概念, Hamiltonian や Lagrangian, 磁場や Maxwell 方程式やらが頭の中を駆け巡る. 数学でも同じ \(E\) で射影なりベクトルバンドルなり, 色々ある.

関連性を意識させるべく, 何となく似ている概念には同じ (ような) 文字を使うことだってある. あまりいい例ではないが, 時間を表す変数 \(t\) に対し, 量子力学では虚時間 \(it\) に \(\tau\) を使ったりする.

記号 1 つで簡単に聴衆を混乱させることだってできる. 1 文字 1 文字に万感の思いを込めて文章を書こう.

最後に解析学徒の心の故郷, 不等式の園への誘いとして我等が Hardy-Littlewood の『不等式』を紹介して終わろう.


追記

黒木さんからコメントをもらった. せっかくなのでこちらにも転記しておこう.
@phasetr http://phasetr.blogspot.jp/2013/06/1-1.html ぼくも「≦」派 (「<」の下に「=」をしっかり書く派) です。 手が勝手に書いてくれるのに無理して略す必要はない感じ。

2013年2月15日金曜日

不等式, 代数的不等式


Twitter でこのような呟きを見つけた.
不等式、極めるためにはHölderやらKaramataやらMinkowskiやらShapiroやらYoungやら 全部ある程度知っておいた方が良さそうだしそれでも変な問題は解けない感じがあるので死
彼/彼女 (以下では「彼」で統一) は高校生 (のはず) なのだがなかなかマニアックなことを知っている. Young, Holder, Minkowski は解析学を学んだ者なら誰でも知っているが, 少なくとも他の 2 つは私は本当につい最近知った. 上記不等式群は例えば次の本に書いてある.



最近「数学で遊ぶ」をコンセプトに, 不等式 (の証明) に関する動画を作ろうと思ったので参考のために買ったのだが, まだ一度ざっと目を通しただけだ.

彼は受験に関して言っているのだと思うが, 受験にはあまり関係ないだろう. 動画を作ろうといったことにも関係するが, 証明の技術的にも大事だし何より面白いので勉強しておいて損はない. 遠い受験の記憶を掘り起こすと, 東工大だかどこかで Minkowski の等号成立条件を調べる問題はあった気がするので, 受験的にも出てくることがないわけでもないはず.

念の為に書いておくと, Holder と Minkowski は Lp (または p) に関する三角不等式を示すのに使う. Young も実解析的な方向で基本的な不等式だ. Karamata や Shapiro は代数的不等式 (あえて言えば有限集合上の p に関する不等式) では基本的で大事な不等式のようだ. 彼のツイートを見てから上記の本が気になって仕方がない.