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2014年7月8日火曜日

関数解析や作用素環の分野の反例集ページがあるというので作成者の教官にメールしてみて OK をもらった方の市民

これは面白そう.



私が書いている 数学の教科書 の反例の所にもこれを突っ込みたい.
イランの教官らしいが, ちょっとメールしてみたら OK を頂けた.
とてもありがたい.

それはそうと, この教官の ホームページ から Facebook に飛べるのだが,
飛んでみたら友達の欄に河東先生がいて割と真剣にびっくりした.
作用素環の反例も入れているくらいだし,
専門のところにも作用素環系のことが書いてあるのだから当然といえば当然だが.

2014年6月8日日曜日

作用素環周辺の数学・物理・数理物理の話:表現論とか何とか

久々に物理に近いところの話をしたので.


\(p\) 進大好き bot と.



純粋状態って言うと, 「物理の純粋状態」と「物理の純粋状態 2 つの pairing で表される作用素環の純粋状態」のどっちのことか分からんな.
両者は違うものだよね?


@non_archimedean よくわかっていないのですが後者, 必ず作用素環的な純粋状態になるのでしょうか.
「物理の純粋状態」の定義も気になるところですが


@phasetr 物理の方は物理量を表現する作用素が作用しているヒルベルト空間の正規ケットベクトルのつもりでした.
それのコピーの (と書き忘れました) 2 つのブラケットで表される作用素環の純粋状態とどう対応するのか,
という話ですが, 冷静に考えて GNS 構成がありましたね.


@phasetr 暗に「物理のヒルベルト空間は可分である」ことを課して書きました.
非可分なときも純粋状態が正規ケットベクトルだと思っていいのかよく知りません.


@non_archimedean 適切な回答になっているかよくわからないのですが考えをブログにまとめておきました
http://phasetr.blogspot.jp/2014/05/p-bot.html


@phasetr どうもありがとうございます!
また言葉足らずだったのですが, 僕が作用素環論と比較したのは,
物理量が有界な領域でしか値を持たない状況のみを考えていたからでした.
つまりここで対応する作用素環は物理量が表現する有界作用素が生成する最小の C*環の意味でした.


@phasetr 量子論的には非有界な物理量のほうが自然だと思われますが,
非有界物理量を集めても作用素環にはならないため作用素環的な純粋状態が定義できるかよく分からなかったです.


@non_archimedean 代数的場の量子論の物理サイドの定式化からすると,
実際には有界な範囲でしか観測できないのでその現実を取り入れた理論, と言う言い方をします.
数学的実対応としては \(e^{itA}\) とかレゾルベントを考えることで非有界 (自己共役) 作用素を有界にします


@non_archimedean レゾルベントの方は数年前に Bucholz が少しやり始めましたがやっている人はほぼいません.
指数に載せる方を Weyl 代数といって, いわば代数解析にもある Weyl 代数の無限変数版です.
表現論的に微妙な問題があって同じとは言いづらいですが


@non_archimedean あまり多くはないですが,
定義域などを適当に制御した非有界作用素がなす環それ自体を研究している人もいます
http://kaken.nii.ac.jp/d/r/00161795.ja.html


@phasetr 定義域を制限する定式化もあるのですね!
レゾルベントで非有界作用素を見るのは古典的なボレル関数解析がそうなので結構歴史が深そうですね.
Weyl 代数というのは初めて聞きました.


@non_archimedean 定義域の制限は, 量子力学で言うなら \(C_c^{\infty}\) が大体の作用素の共通の定義域に取れることをイメージしつつ,
場の理論でもある程度そういう風にできる話はあるからそれを使ってやってみようという感じです


@phasetr 「大体の」というところがどことなく深いですね.
物理量はおおよそ可微分緩増加関数や微分作用素の組み合わせになるといった感じの経験則がありそうですね.
(フラクタルのように各点微分不可能な関数に対応するような物理量があっても面白そうですが)


@non_archimedean クーロンポテンシャル \(1/r\) とかレナード=ジョーンズ・ポテンシャル \(r^{-12}-r^{-6}\),
2 体系のクーロン相互作用 \(1/|r_1 - r_2|\) などがあるので微分可能性が必ずしも期待できず適当な特異性を持つことはよくあります


@phasetr あ, それくらいの特異性についてはあまり気にしていませんでした.
実は最近, スピン構造付きリーマン多様体 (≒重力場 + スピン場) を量子化して \(Z_p\) が得られる的な論文を読んでいて,
そこでは可微分関数に類するものがないので物理量が激しくガタガタ動く感じだったので.


@non_archimedean 私の分野だと非有界作用素のさらに無限和 (粒子が無限個あるのでクーロンだとしてもその無限和が出てくる)
とかそういう部分の制御で手一杯で, そこまで突っ込んだことができていません.
あまり面白い方向の話に乗れず申し訳ないのですが


@phasetr さらに無限和ですか・・かなりハードな解析ですね.
それでもとても参考になりました.
ありがとうございます.


あなちゃんと.



そういえば Entanglement Entropy って C^*環の言葉で定義されてるの


@anairetta 調べといて教えてね


@ad_s_c 数学的にも面白そうな気がしますよね. とうことでよろしくお願いします.


@anairetta @ad_s_c http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1859-05.pdf
量子スピン系くらいなら一応あるにはあるらしいですが,
物理で期待されるレベルの理論が展開できているかはかなり怪しいのではないでしょうか.
いつもの話ですが


あなちゃんその 2.



え, 難しいんですか. . .


@anairetta かなり雑ですが少し書いておきました
http://phasetr.blogspot.jp/2014/05/p-bot.html
難しいと言うより物理の定義をきちんとうまく吸い上げられる純粋状態の数学的な定義がよくわからないと言う感じなのではないかと


@anairetta 最近, 田崎さんも論文を書いていたりしますが,
量子統計で純粋な平衡状態とかあるのでそういうのもきちんと勉強しないとアレっぽいと思いつつ全く出来ていないのでうまく説明出来ないのですが


@phasetr 量子統計の方では, 考える環を「マクロ物理量のなす環」に制限すると熱平衡状態が純粋状態として表せる,
という話があると聞き及んでいますが, その時の純粋状態というのはヒルベルト空間の元に対応するもののことをいっているはずで, (つづく)


@phasetr このときは 環が小さすぎるせいで熱平衡状態と区別できない純粋状態を構成できてしまう, ということですね.


@phasetr 数学的にどうなっているのかよくわかりませんが,
たぶん環 \(A\) の \(B (H)\) への表現をとってきたときに,
等価なものの間で \(A\) の純粋状態が \(H\) のベクトル一つでかけたりかけなかったりする, ということだと思います.
たしかに一般の \(A\) にここらへん状況を調べるのは難しいでしょう.


@phasetr 僕が気にしていたのはたぶん環が \(B (H)\) そのものである場合なんだと思います.
その場合には by def な気がするのであのような発言をしてしまいました.


@anairetta ありがとうございます.
量子力学の場合だと環が \(B (H)\) 全体と思ってやってもある程度どうにかなる部分はあるらしいのですが,
場の理論だとそれがまずいとか言う話で, いまだに (私が) あまりきちんとわかっていないと言う状態です


@anairetta 私はあまり一般の環には興味なくて,
具体例に対する環というか表現と言うかもっと強く作用素論に興味があるのですが,
まず最低限必要な基底状態・平衡状態きちんとありますかレベルの研究なので,
そんな詳しい所まで研究進んでいないと言うイメージです


@phasetr 場の量子論だと赤外紫外の正則化がいるので, 簡単にいかないことは想像がつきます.
エンタングルメントエントロピーのほう, 資料ありがとうございます.
こちらは場の量子論の場合は物理レベルでも満足の行く定義がない状態なので数学としてはどうしようもないだろうと.


いろいろ思うところはあるが結局これなのだ.



数論方面と言うか他の分野の数学, 格好いい話がいろいろ出てくるようで羨ましい.
それでも一番知りたい, やりたいのはあくまでも今やっている死ぬほど地味なことだが.
一度気になってしまったらもう駄目なのだ.
そういうものらしいのだ

2014年5月5日月曜日

物理の純粋状態と作用素環の純粋状態: $p$ 進大好き bot とのやり取り

長くなりそうなので返答というか考えをブログにまとめる方の市民.
次の \(p\) 進大好き bot とのやりとりなのだが.



純粋状態って言うと, 「物理の純粋状態」と「物理の純粋状態 2 つの
pairing で表される作用素環の純粋状態」のどっちのことか分からんな.
両者は違うものだよね?


@non_archimedean よくわかっていないのですが後者, 必ず作用素環的な純粋状態になるのでしょうか.
「物理の純粋状態」の定義も気になるところですが


@phasetr 物理の方は物理量を表現する作用素が作用しているヒルベルト空間の正規ケットベクトルのつもりでした.
それのコピーの (と書き忘れました) 2 つのブラケットで表される作用素環の純粋状態とどう対応するのか,
という話ですが, 冷静に考えて GNS 構成がありましたね.


@phasetr 暗に「物理のヒルベルト空間は可分である」ことを課して書きました.
非可分なときも純粋状態が正規ケットベクトルだと思っていいのかよく知りません.


私が知っている \(\mathbb{C}\) 係数の作用素環では基礎となる
Hilbert 空間に可分性を課すのでここでもそれを仮定しよう.
むしろそこでしか考えたことがないので, 外れたときに起きる現象は全くわからない.


その上で, 一般的には両者は違うはずだが,
ではどう違うのかというのが (私は) 全くわかっていないという話をこれからする.
特に後者は言明「物理の純粋状態 2 つの pairing で表される作用素環の純粋状態」自体が
正しいのかもよくわかっていない.


それでまず作用素環の純粋状態だが, 作用素環を指定した上でその状態空間の端点という定義なので,
作用素環自体を指定しないと始まらない.
物理の純粋状態, この意味だと数学的な定義は不明といっていい.
ある Hilbert 空間でのケットが「純粋状態」 (線型結合でない 1 つのベクトルとして書ける) だからといって,
それが別の Hilbert 空間で「純粋状態」になっているとは限らない.


有名な例がある.
何でもいいが, 可分な Hilbert 空間 \(\mathcal{H}\) 上のトレース \(\mathrm{Tr}\) を考える.
(いわゆる「有限温度での平衡状態」を考えているといってもいい. )
これは Hilbert-Schmidt 作用素の空間 \(C^2 (\mathcal{H})\) では「純粋状態」として書ける.
もちろん GNS だといってもいい.
そして \(\mathrm{Tr}\) は正規直交系の線型結合になっているベクトルから作れるから,
物理の意味 (先程書いた通り数学的に正確な定義はよくわからない) では「純粋状態」ではない.
ただ, GNS で移った先では物理の「純粋状態」から作れる.
こういう場合の処理のため, 作用素環的な純粋状態は環 (正確には表現か?) をきちんと指定することになっている.


あまりきちんと考えたことがないので,
物理の「純粋状態」から作用素環の純粋状態を構成するためのきちんとした条件と,
その具体例をあまりよく知らない.
Bratteli-Robinson の定理 2.3.19 など,
状態が純粋であることとその GNS 表現の既約性が同値であることくらいは知っているが,
具体的な例できちんと調べたことがない.
物理の「純粋状態」は作用素環の指定なしでやっているので,
その辺をどう思うのかがよくわからない.


これも具体的にきちんと調べたことがないのだが,
平衡状態 (正確には KMS 状態) に関する「端点分解」もよくわかっていない.
通常通り考えている von Neumann 環が単位元を持つことを仮定しておくが,
そのとき KMS 状態全体も凸集合で weak*-compact になる.
つまり KMS 状態内で端点分解できる.
Haag の Local Quantum Physics ではこの端点への分解を
pure phase decomposition と呼んでいるが, これの具体例での検証
(どういう現象が起きるか調べる) をやったことがない.


今更ながらだが, 問題としてどう正確に定式化したらいいのかという部分からして
そもそも難しいのかもしれないし, 問題の立て方もどう立てるといいのかがよくわかっていない.
何というか, 「物理×数学」という非可換代数を想起した.

2014年3月30日日曜日

数理物理の魅力と相転移の魅力: 数学と物理と数理物理と

Ask.fm から.
まずは質問.



二つの質問になってしまいますが,
主観的なもので結構ですので,
数理物理の (特に物理や数学それ自身と比較しての) 魅力および相転移現象の魅力がどこにあると感じてらっしゃるのか教えていただけませんか.


今考えるとあまりきちんと回答していない気もするが
とりあえず回答.


数学と物理, 両方好きで両方やりたいという単純な所です.


もちろんどちらか一方でも死ぬほどきついので,
本当に「研究」しようというなら,
どちらも半端な出来損ないになる可能性を視野に入れつつ
それでも踏み込む決意と覚悟が必要ですが.
もうあまり詳しく覚えていませんが,
相転移は大体田崎さんの影響です.


数学的には「特異性の数理」が非常に好きです.
色々あって学部一年の頃から数学的には超関数だとか
ある意味でかなり特異性の強い数学とずっと戦っていて,
結局今でも「場の理論の超関数論」と銘打って研究しているので
三つ子の魂百まで感あります.


話がずれましたが, 興味だけなら代数幾何の特異点論とか,
ブラックホールだとか, 特異性が絡む話は大体何でも興味があります.
極限で特異性が出てくる現象がとても好きで,
熱力学的極限とそこからの相転移がとても気にいっています.
相転移をやるなら人類が最大精度で扱えるのが
磁性関係だから磁石を扱う方向に行ったと言う非常に単純な動機です.


もちろん水が凍るとかもやりたいですが, アレは即死レベルだし,
シュレディンガーで磁性も即死コンボです.


磁性だととりあえずイジングですが, イジングは
(相対論的) 場の量子論の繰り込み処理との関係もあり,
数学的に量子統計と場の理論の相性がいいこともあって,
手始めにやりやすいところから, と思って
場の理論方面の勉強をしていて, 相転移自体とは
大分離れた赤外発散を修士では主に勉強していたのですが,
修論の為のネタ探しで考えたら一応磁性もできるわ,
と言う感じで磁性 + 赤外発散みたいな
特異性に特異性が重なって死ぬほど面倒臭い代わりに
趣味ばっちりな所を見つけたのでそこで今も
色々やっています.


物理的には素直な拡張でも数学的には全く
別の話を絡ませたりしなくていけなかったり,
逆に数学的には共通部分が多いのに物理としては
ちょっと遠目の所にアプローチできたりするのが
今の分野の面白いところですが,
一旦話が難しくなりすぎて死んだ分野なので,
一般にはお勧めしていません.


ただその分やっている人も少ないので,
すぐに世界のトップ 10 くらいに入れますし,
実際に多少しぼるだけでいわゆる
オンリーワンでナンバーワンにもなれます.


大学のアカポスゲット的な意味でこのご時世に
いい結果がすぐに出る保証は全くできないので,
決しておすすめはしませんが.

2014年3月28日金曜日

量子力学の数学に関する文献など: あとセミナーもしよう

また Ask.fm.
質問はこれ.



量子力学の数学的な基礎を勉強したいのですが,
どのような分野を勉強すれば良いのか教えてください.
ご面倒でなければ参考になる本についても教えていただきたいです.


色々なところで言っていたりするのだから
それ見てよ, という気もするが, 一応回答.



量子力学の数学的基礎も超大雑把に言って,
作用素論系と偏微分方程式系に別れるような感じがあります.


私がやっているのは作用素論・作用素環系ですが,
それについては例えばニコ動に置いてある http://phasetr.com/services/niconico/
量子力学・量子統計周りの話を眺めてみて下さい.


参考文献ですが, 作用素論系では
http://phasetr.com/services/references/ にある
新井朝雄先生の本がベストです.


微分方程式関係だと Lieb がリーダーです.
Lieb-Loss の Analysis が基本的な文献と言っていいでしょう.
量子力学というより量子多体系, 量子統計の色彩が強いですが,
The Stability of Matter in Quantum Mechanics もお勧めです.
ちなみに両方とも新井先生の本ほど簡単ではありません.
とくに Analysis は関数解析くらい知っている, と思って
読んでいると痛い目を見ます.


色々な不等式の最良定数評価がかなり早い段階から出てきて,
前から順番にきちんと読もうと思うと 3 章が
最良定数含め, とてもきついです.
面白い本ではあります.


あと, 作用素論との関係が強い (作用素論的性質の解析に使う) という
イメージがあるのですが, 確率論からのアプローチもあります.
これも新井先生の本をまず読むのがいいです.
その次は Simon の本あたりでしょうか.


場の理論に行くなら Betz-Lorinczi-Hiroshima を読まねばなりませんが,
これはかなりきついです.
確率弱者の私は読めません.


関東近郊の方なら適当にゼミやるのに誘って頂ければ,
話す方含め相談のります.


Twitter でもいいですが, メール phasetr@gmail.com にでも
適当にご連絡・ご相談頂ければ.


メルマガの方で時々触れることを考えているので,
ご興味ある向きは ここから 登録されたい.

2014年3月23日日曜日

Nik Weaver, Forcing for Mathematicians に集合論的手法の $C^*$-代数への応用みたいな話が載っているらしい

tri_iro さん筋の情報だ.



6 月に出版予定らしい Weaver の "Forcing for Mathematicians"
http://www.amazon.co.jp/gp/product/9814566004/ が気になる.
集合論的手法の \(C^*\)-代数への応用みたいな話が載ってるっぽい.


@tri_iro Calkin 環とかの話でしょうか.
学会で何かそんな話を超楽しそうに話していた講演を軽く聞いたことがあるだけなのですが


@phasetr 本の中身の詳細は知らないのですが, 著者が Nik Weaver なので,
Calkin algebra 関係の話は入ってくると思います (たぶん)


Calkin 環の話, 一度きちんとやってみたいとは思っているものの何もしていない.
Calkin 環, 定義はかなり簡単 (学部 4 年で十分に分かる) のに,
結構最近解かれた未解決問題があったりと結構面白そうな対象なのだが.

2014年3月9日日曜日

長尾健太郎さんの話と佐々田槙子さん, 權業善範さん, 谷本溶さんの話

立川さんのツイートである.
長尾健太郎君の業績が数学会で紹介されています. http://mathsoc.jp/publication/tushin/1804/2013takebe\_yokogao.pdf
知り合いだったというわけでもないのに呆然と見入ってしまう.

別件だが, PDF に佐々田さん, 權業さん, 谷本さんの名前を見つけた. 少なくとも一方的には顔と名前を両方知っている人なので感慨深い. 谷本さんのコメントははっとさせられる.
作用素環を使って場の量子論を研究しています. 学振の DC1, DC2 ともに不採用になりましたが, イタリアとドイツは奨学金をくれたので留学しました. 修士の時に結果が出ない人にもチャンスが与えられてほしいと思います.
こういうの, 本気でサポートを考えなければいけない. 気合を入れ直した.

2014年1月13日月曜日

代数解析と S-行列とか何とかと柏原-河合の Feynman 積分に関する PDF: Paul と kyon_math さんの対話から

Navier-Stokes 関係の話から kyon_math さんと Paul が何か話をしていたので.
しかも最近の問題や予想は 100 年以上長生きするものはほとんどない. リーマン予想は 160 年くらい, 双子素数やゴールドバッハ予想は 250 年くらいか. ヤコビアン予想はどうだろ? リーマン予想さんには, がんばって長生きしてほしいものですね.
@kyon_math https://www.jstage.jst.go.jp/article/sugaku1947/29/3/29\_3\_254/\_pdf なんて, 解けたらけっこうインパクトありますが, しばらく解けそうもないです.
@Paul_Painleve 確かにすごそう: 佐藤氏の夢みる方向で, すなわち, すべての量を古典解析的手法のみによって calcu1able なものにしよう, という方向で, S-行列の解析が完成したとすれば, それは人類の精神史において燦然と輝く金字塔となることは疑いないであろう.
@kyon_math あの頃は, 著者の二人も青臭い中二病にかかっていただけでしょう, ははは.
上記 PDF の話とはあまり関係ないが, 代数解析的に発散の困難とユニタリ非同値問題がどう捉えられるかというのは大分前から気になっていて, 代数解析を勉強しようと思った原動力になっている. 多変数関数論やらコホモロジーという障害があって全く勉強が進んでいないのだが. 最近, 「場の理論の超関数論」とか, 「場の理論の超関数論としての作用素環 (上の状態空間)」とか銘打って研究をしているが, 「場の理論の佐藤超関数」がどうなるのかというのが非常に気になっているので誰かやってほしい.

柏原-河合クラスの人間がもっと massless の方とかにも突っ込んできてほしい. あといいのか悪いのか分からないが, 相対論方面は対称性がかなり強く出てくるおかげで数学的に格好いい話も絡めやすいのだという感じがあるが, 非相対論方面だとなかなかそういう話がない感じもある. だからこそこの辺の人達がリードしてやってほしい感ある. 河合先生も, 1 次元の Schrodinger で WKB とかやってくれるのもいいのだが, 3 次元で Aharonov-Bohm とかもやってみてほしい. もっというなら場の理論に本格的に突っ込んできてほしい.

2014年1月8日水曜日

田崎さんと原さんは早く Ising の本をまとめた方がいいのでは, と思った方の市民

数学的な統計力学の本とかいうアレがあったので.
数学的に書かれた統計力学の本読みたみ
@slip001 このツイートしばらくしたら相転移 P のリプライが来そうな気がする笑
@wr_r イケメン相転移 P さんからのリプレイとかうれしい\(// ∇//)\
@slip001 @wr_r 学生のころ田崎さんに聞いたことがありますが, 最低限私よりも数学できないと読めないような本で, しかもめちゃくちゃ読みにくい本しかないです. 強いていうなら新井先生の本ですが, あれは「量子統計の数学」であって「数学的な色彩の強い物理の本」ではないので
@slip001 @wr_r 滅茶苦茶読みづらいといったのが http://www.amazon.co.jp/dp/9810238622 です. 田崎さんが若い頃からある本ですが, 碌なものではないのでお勧めはしません.
@slip001 @wr_r http://phasetr.blogspot.jp/2013/11/4.html にある Bratteli-Robinson が量子統計の数学で一番有名でかつ読みやすい本です. ただ数学科レベルで関数解析できないとだめで, 量も膨大なので拾い読みできるだけのモノがないとつらいです
@slip001 @wr_r 近刊とうわさの田崎・原のイジングが一番読みやすい (読みやすくなる) はずです. もちろんイジングに特化した話になりますが, 相転移・臨界現象を学ぶにはいいはず (と信じている)
@slip001 @wr_r Bratteli-Robinson は私も必要なところしか読んでおらず, それも本当に適宜つまみ食いという感じが強いです. 必要なのである程度はまとめて読んだところとそうでないところの差が激しいので. 原・田崎の完成を待つのが一番無難という感
@slip001 @wr_r あとおそらく一番根本的な問題として, 基礎的な部分で色々な数学的困難を抱えていて数学的にきちんと議論できる統計力学の話題自体ほとんどないので, 最低限の勉強をした後はもうほぼ研究ベースの話になってしまうでしょう. それも物理としては無残なのに数学的に辛い話
新井先生の量子統計の本はこれ.



Ruelle のがこれ. ただ, 読むのはやめた方がいい.



また以前関連する動画も作ったので, 興味がある向きはご覧頂きたい.
  1. 春香誕生祭+緑なP・実解析P・パラPリスペクト1/5 量子統計の数学的基礎
  2. 春香さん誕生祭+色々リスペクト2/5 ルベーグ積分と関数解析1
  3. 春香さん誕生祭+色々リスペクト3/5 ルベーグ積分と関数解析2
  4. 春香さん誕生祭+色々リスペクト4/5 テンソル積と多体系
  5. 春香さん誕生祭+色々リスペクト5/5 平衡状態の定義について
あとこの辺.
(量子) 統計がどれだけつらいかというと, 平衡状態の定義をするだけで作用素環の至宝, 冨田-竹崎理論が必要になるというところ. 今となってはそこまで絶望的に学習が困難という話ではないが, 物理的にあって当然の概念のために作用素環の基礎理論を 1 つ用意する必要がある程度に処理が面倒というアレ
@phasetr あと修士修了後しばらくやっていて全然できなくていったん止めた話だが, ハバードモデルの基底状態の存在とかもかなりきつい. 要は具体的なモデルを何か取ってそれを詳しく調べましょうみたいな話も格子模型のレベルでほぼ絶望. スピン系が扱えることが既に奇跡と言っていいのでは感
@phasetr 基底状態の存在という話では, 場の理論での【発散の困難】的な話題も絡んでくるし, 物質の安定性の観点からの基底エネルギーの評価 (エネルギーの示量性とも関係) とか, 基本的なところで問題山積みでどうにもならない
@phasetr 「基礎が分からなくても応用はできる」というアレがあるかもしれない, と思われても, 具体的なモデルの解析はもっと難しいので手がつけられる簡単なところから, というそこの段階で詰まっているのが現状なのでどうにもならない
@phasetr むしろ問題をいくつかあげるから研究してほしい
本当, 誰か研究に協力してほしい. 

2013年11月23日土曜日

河東研の学部 4 年セミナーに使われる本の紹介ページが出ていたので

勝手に例年楽しみにしている河東研の学部 4 年セミナーに使われている本の紹介ページが出ていた.
  • 書名: "A Short Course on Spectral Theory" (Graduate Texts in Mathematics 209)
  • 著者: W. Arveson
  • 出版社: Springer
  • 発行年: 2002
作用素のスペクトルの理論を扱いますが, 関数解析の基本的な内容は ある程度知っている必要があります. 作用素環的な雰囲気があちこちに 出ています.
  • 書名: "A Course in Functional Analysis" (Graduate Texts in Mathematics 96)
  • 著者: John B. Conway
  • 出版社: Springer
  • 発行年: 1990
普通の関数解析から始まります. いろいろなことが書いてあり, 最後の方では C*環の話も出てきます.
もっと専門的な本はこちら.
Currently Available Books on Operator Algebras
  1. Mathematical Theory of Quantum Fields by H. Araki, Oxford University Press, 1999.
  2. An Invitation to C*-Algebras by W. Arveson, Springer 1976.
  3. K-theory for Operator Algebras by B. Blackadar, Cambridge University Press, 1998.
  4. Operator Algebras by B. Blackadar, Springer, 2005.
  5. Wavelets through a Looking Glass: The World of the Spectrum by O. Bratteli and P. E. T. Jorgensen, Birkhauser, 2002.
  6. Operator Algebras and Quantum Statistical Mechanics, Volumes III by O. Bratteli and D. W. Robinson, Springer, 1987-2002. (a pdf file supplied by the author) (a pdf file supplied by the author)
  7. Noncommutative Geometry by A. Connes, Academic Press, 1995.
  8. C*-Algebras by Example by K. Davidson, Amer. Math. Soc., 1996.
  9. Quantum Symmerties on Operator Algebras by D. E. Evans and Y. Kawahigashi, Oxford University Press, 1998.
  10. Local Quantum Physics by R. Haag, Springer, 1996.
  11. Fundamentals of the Theory of Operator Algebras, Volumes IIIIIIIV by R. V. Kadison and J. R. Ringrose, Amer. Math. Soc., 1997.
  12. An Introduction to K-Theory for C*-Algebras by M. Rordam, F. Larsen and N. Laustsen, Cambrige University Press, 2000.
  13. Theory of Operator Algebras, Volumes IIIIII by M. Takesaki, Springer, 1979-2003.
Back to the Home Page of Kawahigashi.
Wavelet の本, あれは本当に作用素環の本だったのか. Bratteli のページにあったので名前だけは知っていたが, 分野を変えたという話で, 作用素環ではない話なのかと思っていた. あと, 以前河東先生から「Local Quantum Physics は Haag の哲学を書いた本で勉強用に読む本ではありません」というのを直接聞いた. 実際ある程度読んでみようとしたことがあるが, さっぱり分からなかった. 多分今読んでも無理だろう. 荒木先生の本も省略が多くて読めたものではない. その分短いので, 大体どんな話があるかだけ知りたい場合に眺めるのにはいいだろう. 勉強に使える本ではない.

Davidson の本は例がたくさんあって比較的良いらしいが, 内容にムラがあってやたら適当なところややたら詳しいところがあったりすると, いま東北の助教をしている三村さんに伺ったことがある.

Bratteli-Robinson は作用素環の量子統計におけるバイブルなのでその方面の人は読まざるを得ない. ただ, 必要なことが大体全部書いてある分, 雑多と言ってもよく純粋に作用素環を学びたいという人が読む本ではないだろう. 私も全部は読んでいない.

Connes の本もあれで勉強するのはしんどそう. 色々書いてあるので眺めていると楽しいのは間違いない.

Kadison-Ringrose は私も多少読んだ. 普通の関数解析から始まり, Banach 環の話などをしたあと, 作用素環の話題に入る. 作用素環としては標準的だろう. もう少ししっかり読むべきだったとは思っているが, 早く論文読みたかったので適当に切り上げて Bratteli-Robinson に移った. 富山先生に「教育熱心な彼等が書いた良い本だ」と言われた覚えがある.

一番基礎から本格的なのはやはり我らが竹崎先生の書いた三部作だろう. 私は何かの参考で 1-2 度参照しただけで, 全く読んでいない. 以前九大の増田さんの書評で「良い本だが具体例の扱いがかなり後回しになってしまっているので, 詳しい人の指導を受けて適宜例を補いながら読むととてもとてもよい」というのがあった覚えがある. 同じく増田さんの書評で, 竹崎先生の「作用素環の構造」は滅法面白いというのがあった. こちらも読んでみたい. これは軽く眺めたとき, 零れ話的な話で竹崎先生が大発見を逃がして Connes に先にやられてしまった話などが書いてあったり, そういう部分が楽しかった. 何十年も前の話なのにやはり余程悔しかったようで, ちょっとしたスピーチでも良く話を取り上げるようだ. 同じ話を 3 回くらい聞いたことがある. ちなみに今になっても悔しくなるだろう, というくらい作用素環には決定的な話で, Connes コサイクルとか何かその辺の話.

2013年11月22日金曜日

北大, 戸松玲治さんの安藤-Haagerup 理論入門の講演を聞きたかった



既に終わってしまっているが東大での戸松さんの作用素環の講演は面白そうなので行きたかった.
連続講演
講演者: 戸松玲治 (北海道大学)
題目: 安藤-Haagerup 理論入門
日時/ 部屋
2013 年 11 月 5 日 (火) 午後 3 時 30 分~5 時 30 分 数理科学研究棟 118 号室
2013 年 11 月 6 日 (水) 午前 10 時~12 時 数理科学研究棟 122 号室
2013 年 11 月 7 日 (木) 午後 3 時 30 分~5 時 30 分 数理科学研究棟 123 号室
2013 年 11 月 8 日 (金) 午前 10 時~12 時 数理科学研究棟 122 号室
アブストラクト: 作用素環の超積 (\(M_{\omega}\) や \(M^{\omega}\)) は von Neumann 環の性質の特徴付けや 群作用の分類において重要な役割を果たします. 安藤浩志, Uffe Haagerup 両氏による仕事 (2012 年) は 超積 von Neumann 環についての理解をそれまでよりさらに深めるものです. とくに, 主定理 「超積状態の modular 自己同型群が, modular 自己同型群の超積と一致する」によって, III 型環の超積をようやく「正しく」扱えるようになった, といっても過言ではないでしょう.
講演では, 安藤-Haagerup の論文から, 以下の 3 つを含むいくつかのトピックスを抜粋して, なるべく self-contained に証明をつけます.
  1. Groh-Raynaud 型の超積と Ocneanu 型超積の関係.
  2. 超積状態の modular 自己同型群 = modular 自己同型群の超積
  3. 植田好道氏による問題 (\(M\) が full 因子環ならば \(M' \cap M^{\omega} = \mathbb{C}\) か?) の解決.
予備知識として, 冨田-竹崎理論, 標準型の理論をあげておきます.
確か作用素環に超積を持ちこんだのは Connes で, Connes 自体元々集合論というか, 超準解析的なことをしていたとか聞いたことがある. 冨田-竹崎理論は量子統計を作用素環的に扱う上での魂だし, 相対論的場の量子論を研究する上でも必須の道具だ. III 型環だし, 何かその辺を駆使する話ということで凄い楽しそう. 超積自体もよく知らないので, その辺も楽しそう.

聞きたかったので残念でならない.

2013年11月8日金曜日

摂動論の数理物理: 小まとめ

以前からたびたび話題にしている原・田崎の『相転移と臨界現象の数理』 だが, 「摂動」という言葉の使い方に関してコメントした内容について田崎さんからコメントが返ってきた. その時に返信した内容について折角だから共有しておこう. 具体的には「摂動という言葉は数学と物理で微妙に使い方が違うことがある」という話だ.

私の業界 (数学的には作用素論) だと「必ずしも小さくない摂動」が出てくる. 新井先生の『量子現象の数理』 2.4 節が正に「必ずしも小さくない摂動」と言うタイトルで, こうした所を指して言っている.



詳しくは本を見てほしいが, 例えば多項式はラプラシアンに対して相対的に有界ではない. そしてこのとき, パラメータが小さくなくとも扱える範囲がある. 作用素 \(T\) に対して摂動した演算子が \(T_{\lambda}\) だとして, 「 \(T\) がよく分かっている場合に \(T_{\lambda}\) を \(T\) との関連を見ながら考える」 位の意味で使うことがある.
これは著しく狭い業界での語法だろうという自覚はあるが, 上でも書いたように, 初等的な量子力学の話題, 特に調和振動子が「小さくない摂動」の範囲に入るため, 念の為指摘しておいた.

ちなみに摂動に関する諸々は私の研究テーマでもある. 色々あるのだが, いくつか簡単に挙げておこう.

スペクトル解析

物理では作用素 (演算子) のスペクトル (固有値) と観測量が対応しているので, スペクトルを調べることは基本的な意味を持つ. このスペクトルが摂動でかなり非自明で不可解な振舞いをするのが非常に気持ち悪い. よく「摂動級数が収束するか」とかどうでもいいことを気にする人がいるが, そんな程度の話ではない.

学部 3 年の量子力学の演習で 4 次の非調和項を入れた非調和振動子に関する摂動の問題が出たのだが, そのとき演習を担当していた助手さんが「この例は固有値が厳密に分かるるからそれと比較してみよう. 一次までの摂動を計算してみるとこの厳密解とぴったりあう. 厳密に求めるのは大変だが摂動で簡単に値が出るのが嬉しい」とか言っていて衝撃を受けたことを覚えている. 1 次の摂動で合ってしまうということはそれ以降の計算ではただただずれていくということだ. (摂動が収束するとすれば) 高次項は minor correction のはずであって, つまり元の厳密な値へは絶対に復帰しない. 厳密解が分かっているから 1 次で止めればいいと分かっているが, 一般にはそれができないから摂動計算するのであって, 何をどうしたいのだ, と.

他にもある. 摂動前後で固有値はともかく, その固有関数まで適当な意味で近いと思ってやっているのだが, これが (物理として) 真っ当か, という問題だ. 例えば, Laplacian からみて調和振動子と水素原子の系は (結合定数が小さければ) それぞれ近いと思っているが, そうかといって Laplacian の基底状態 (\(L^2\) にはないが) と, 調和振動子および水素原子の解 (固有関数) が近いと思えるだろうか. 水素原子は Coulomb ポテンシャルの原点での特異性を反映して解にも特異性が出る. これは電荷の存在を表す物理的に大事な特異性だから意味があるが, 調和振動子や自由粒子にはもちろんない. これは近いと言っていいものか.

平衡状態と基底状態

物理でどう思っているのかはよく分からないが, 平衡状態と基底状態で摂動論の趣が大分違うことは, 少なくとも作用素環を使う数理物理業界ではよく知られている. 物理的な気分が大体そのまま反映されていると思っていい. 要はこういう感じ.
  1. 平衡状態にゴミを少し入れたくらいでそんなに大きく性質は変わらないだろう.
  2. 基底状態にゴミを少し入れると準粒子の雲がまとわりついて赤外発散を起こして, こう色々な面倒が起きる.
この辺をきちんと追求しようというのは私の研究テーマの 1 つでもある.

半導体の場合少しでもゴミが入ると問題だという話もあるが, これは, ナノデバイスにしたときに大きく見れば少しのゴミでもナノデバイスレベルでは巨大なゴミになりうる, という話でもあって少し話が面倒だという理解をしている. ただ少し他の物質をドープする (少しのゴミと思える?) ことはあって, そこをどう読むかというのはある. 半導体は学部 3 年でデバイスまわりでの基礎を少しやったきりほとんど勉強していないのでこれ以上踏み込んだことは言えないが.

「摂動」もそんなに単純な話ではないということで.

2013年11月1日金曜日

超準解析のプロである魔法少女に超準解析で超関数がどうなるかについて聞いてみた

超準解析のプロである魔法少女とのやりとりを記録していきたい.
大学入ってから運動量は酷使するものの力積使ったことないのだがアレはいったい何だったのだろう
@phasetr デルタ関数の近似ということにしておこう
@functional_yy ふと思ったのですが超準解析でδ関数はどういう扱いになるのでしょうか. 超準解析的には普通の関数と思えるのか的なアレです
@phasetr この辺り詳しくはないのでよく知りませんが, 例えば幅無限小高さ無限大で掛け合わすと 1 のパルスを考えれば望みの性質は得らます. http://planetmath.org/constructionofdiracdeltafunction
場の量子論で赤外発散という現象があるが, その数学的解決には「場の量子論版の超関数」が必要だと思っている. 作用素環上の状態の空間でとりあえず定義はできるのだが, それを確率論 (経路積分) でいうとどうなるか, 最近は特に表現論的にもう少し突っ込むとどうなるかというあたりをスピン-ボソンモデルで計算している. 代数解析的なアプローチではどうなるかというのは考えていたが, 超準解析的にどう見えるか考えてもいいかもしれない

2013年10月2日水曜日

Summer School 数理物理 2013 量子場の数理に参加してきたがスーパー楽しかった

Summer School 数理物理 に参加してきた. とりあえずスーパー楽しかった. 河東先生のは微妙なところだが, 大体全ての講演の内容にピントが合いまくっているので, 大分景色が広がった. 入門的な話を議論するということで面倒なところに触れていないからということもあるが, 人の話が これだけクリアに分かった経験もなく, 楽しかった. 順に感想を書いていこう.

新井先生: 相対論的量子電気力学

新井先生の話は 2 日使って相対論的 QED の 発見法的な (数学的に厳密でない) 議論をした上で, 最終日にきちんと定義できる部分の話をした. Hamiltonian を定義してその詳しい性質を調べたいわけだが, 今のところ運動量・空間の切断をつけないとうまくいかないということで難しいが, それでも議論は進んできている, という夢のある話が展開された. 切断つきとはいえ, 思った以上に議論が進んでいたのでびっくりした. 最近の新井研は相対論の人が多いらしく, 会場内でも学生さん達がその辺の議論をしていて楽しそうだった.

最終日のお昼, たまたま新井先生と新井研の学生さん達と食事しながらお話したのだが, 散乱理論さえ構成できれば基底状態の存在などはとりあえず言えなくてもいい, とか「それはそうだ」という話を色々した. とにかく本当に物理的な, カットオフなしの理論は何も言えていないから, やるべきこと・知りたいことは色々ある. QCD やその格子正則化の議論もしたいが難しい, という話とか色々. 論文タイトルだけは QCD を示唆しているが, 実際にはヒッグスが起きたあとの massive theory であって, ある意味こけおどしのような論文もあるからそんなに難しいと思わずとりあえず目を通して比較してみたら, とかいうコメントもあったりして実に楽しそう. 活発に研究されているようで見ているだけでも楽しい.

あと, 学生の頃からずっと新井先生にはメール上で本の誤植を送ったり論文をお送りしたりと交流があったのだが, 今回ようやく始めてお話する機会を得た. きちんと覚えて頂けていたようで, 何よりであった. 非同値表現など CAR・CCR の表現論周りで, 簡単過ぎるかもしれないがやらなければいけないことなどを考えていて, それについても少しお話したところ, Derezinski がきちんとやらないといけないと言い始めているようで, 実際に大事だろうから是非やるといい, 的な話もした. 考えていることが無意味ということはないようなので, 少し安心した. その方面も基礎的なところをきちんと固めていきたい. 「やろうと思っているがなかなか時間が取れないところをやってくれているので嬉しい」的なことも言われたので, 地味な研究だが粛々と議論を進めていきたい. 今回有限温度の話は全くなかったが, その辺も絡めてやっていく必要がある.

河東先生: 代数的場の量子論における各種共形場理論

作用素環専攻で比較的近い分野であったにも関わらず, 河東先生の話は一度も聞いたことがなかったが今回はじめて聞いた. 物理的に何かあるのかは全く分からないが, 単純に数学として非常に面白い内容だった. パン耳パイセンとか Twitter 上の作用素環の人, この辺やって私にレクチャーしてほしい. 冨田-竹崎理論とか多変数関数論とか, その辺のサポートならとりあえずある程度はできるのだが.

「この辺やっているのは私と Longo と Longo の学生くらいしかいないので人が増えてほしいのですが」的な話をしていた. 本当に面白いのでここも人が増えてほしいのだが, 冨田-竹崎理論やら多変数関数論が必要やらで参入障壁が高く感じられてしまうようで, 全然人が増えません, とのこと. その辺の詳細をうまいこと回避していたためとはいえ, かなり良く分野の様子が見えてこれも本当に楽しかった. むしろ, その辺をうまく回避しつつ面白いところを的確に時間内に盛り込んでいった河東先生の力量が凄まじいとも言える. Twitter でも河東先生のトークが凄かったという呟きを見かけたが, 確かに圧巻だった.

初日のトークで「私は数学者なので演算子ではなく作用素といいます」という話があったのだが, これを受けてその後, 原さんは「僕は物理屋なので, 演算子, といいます」といい, その後さらに廣島先生が「僕は数学者なので作用素といいます」と言っていた. 原さんが物理学者に物理学者と認識されているのか非常に気になるところだがそれはともかく, 原さんが自分を物理「屋」といい, 河東・廣島先生が自分を数学「者」と言っていたのが面白かった.

講演自体だが, 初日は場の量子論と Wightman 場, 作用素値超関数が必要というところから非有界で鬱陶しいので有界作用素に移るという話から始まった. 物理としては 4 次元 Minkowski 時空で Poincare 対称性を考えるが, これだと例が作れないしよく分からないので,
  1. 数学としてきちんとできて面白い共形場に移ること,
  2. フルの共形場ではなくカイラルに移って議論しよう,
  3. 時空としては \(x=t\) の直線上, しかもコンパクト化して $S^1$で対称性としては \(\mathrm{Diff} (S^1)\) という巨大な群を考えよう,
  4. そしてその公理系を簡単に説明した,
というところで話が終わった. 設定に関する気持の部分なので特筆すべきことはない.

2 日目からが本番で, 数学的な話がはじまった. これが面白い. Haag duality やら Reeh-Schlieder やらあるが, 特に Haag duality は話の中で拡大の極大性や locality との兼ね合いで酷使されるととても大事なのだが, 結構難しいがそれは公理として認めてしまってとにかくやってしまえばいい, みたいな話をしていて笑った. さすがに自分の学生がこの辺したいと言い出したらきちんとやるようにはいうようだし, それはそうだと思うが, それも含めて笑った. Haag duality は単なる便利なコンベンションくらいに思っていたのだが, 実際の議論では本質的に効いてくるようだった.

例を作ることと合わせて, 共形場の定式化の 1 つである頂点作用素代数やそれが発展する契機になった Moonshine 予想の話を噛ませたあとに作用素環的な議論が進んだ. 頂点作用素代数の結果を使いつつ議論するのは 3 日目の最後までずっと出てきたので, 相当大事なようだ. 共形場の定式化として適当に対応があることを使って, 頂点作用素代数で議論されていることを作用素環でトレースすることやその逆についてもかなり活発に議論されている模様. 同じ理論を記述しているのだからお互いの対応があるはずだが, 頂点作用素代数も代数的場の量子論もそのままでは一般的過ぎるから, 適当に制限をしたところでないと完全対応はないだろうという話, そしてそれは作用素環では完全有理性という条件で良さそうだ, ということだった. 完全有理性は本質的に面白い結果を出すところでは大体仮定されるらしい. きちんと確認していないが, 完全有理性は河東先生達が定義した概念のようだ. この辺もかなり凄い.

頂点作用素代数というか, 物理的に同じ理論を研究しているのだから別の数学を使ってできたことは作用素環でもできるはずだしその逆だってできるはず, というのは構成的場の量子論でも同じで, 作用素論・作用素環でできたことは確率論 (汎関数積分) でもできるはず, というのは私も思っているし実際にやりたいことでもある. そういう意味でも河東トークはとても楽しかった. 頂点作用素代数と作用素環は一方は純代数, 一方は解析学と本当に本来の興味感心がかなり違うはずなのだが, そこに対応する議論が展開できるというのはひどく非自明で楽しい. 河東先生も「昔は考えることもできなかったような分野の数学者とも話が通じるようになってとても楽しい」的なことを言っていた. 何かの文章でもあったが「昔は operator algebra で検索すると vertex operator algebra も引っかかって鬱陶しいと思っていたが, 今ではきちんと関係があることが分かった」みたいな話をして笑いを誘っていた.

3 日目はカイラルから発展してフルの共形場, 境界共形場の話をして非可換幾何の話をして終わった. 公理の設定があること, 共形場を全く知らないのでどういう話が常識なのかも知らないこともあるが, カイラルから共形場が復元できるというのはなかなか凄い. 境界つき理論との関係もなかなか無茶で, 境界の追加・削除の議論というのも凄まじい. 最後, 非可換幾何の話をするときに非可換幾何の Dirac 作用素を見つけるのに, 頂点作用素代数の構成を媒介して見つけてくるというのがかなり心に響いた. 思いもしない異分野の相互作用として相当に格好いい. 何かさらっと話していたし発見者が誰なのか確認してこなかったが, 発見者, 相当興奮したのではなかろうか.

やや別件だが, 非可換多様体は実際には非可換スピン多様体であるという話がされた. 前から普通の多様体の話をしているはずなのに何故 Dirac 作用素が出てくるのか不思議だったが, 実際, 非可換多様体の定義として今使われている spectral triple は非可換 Riemann 多様体, 特にスピン多様体であると直接確認できたので, その辺の胸のつかえが取れた感もある.

立川さん (後で名前を把握したというか顔と名前を一致させた) が色々面白げな質問をしていて, 超弦周りの話と何か絡んでいくのかもしれない. そもそも AdS/CFT とかある. 物理がどうなのかは全く分からないが, 数学としてはとても楽しいのでどんどんやっていってほしい. よい話だった.

原さん: 構成的場の量子論, \(\phi^4\) の話

田崎さんからの影響で何となく「さん」づけで呼ぶのが自然な印象がある原さんであった. 田崎さんとの共著で出る予定の Ising 本の査読をしていることもあり, 一応構成的場の量子論にいる人間として先達でもあり, 名前はずっと前から認識していたが, 今回初観測に成功した. 何か凄いかわいいというか穏やかな感じの人だった. 3 日目, ホテルの隣の部屋の人が変なことをして鳴らして警報機で起こされるなど, 今回は散々だったらしい. 体調が万全であればもっと色々な話が聞けたかと思うと残念だ. これはこれで, 今までふんわりしたことを知っていただけでもう少しきちんと知りたいけれどもなかなか勉強の時間が取れず, 解析が死ぬ程つらい分野のため精神的負担も大きかった triviality に関してある程度具体的に状況を把握できたので, とても有意義で楽しかったのだが.

Ising 本を読んでいたこともあり, スピン系に関する議論にピントがあっていたので滅茶苦茶面白かった.

「どんな汚い手を使ってでも OS の公理系を満たす例を作ればこちらの勝ち」という台詞, 非常に気に入っているというか, 私も基本的にこのスタンスというか, こういう風に言っている人達の背中を見て育った結果というか, こう色々なものを想起して感慨深く楽しい.

Ising で古典スピン系の様子を一定以上把握できていたので, ハードアナリシス部分はともかく, 今まで以上に景色を見渡せるようになった感がある. もちろんハードアナリシスパートこそが命なので, 全然何も分かったことにはなっていないけれども.

Ising 本を読んだとはいえ, あまり真面目に 13 章を読んでいなかったので相転移・臨界現象と \(\phi^4\) がどう関係するのか全く理解していなかったのだが, スケール変換に関する繰り込みで使うこと, その使い方というのをようやく把握できたので, 胸のつかえが取れた感ある. あれは本当に格好いい. スペクトル表示や鏡映正値性の話をもっときちんと聞きたかったが, 仕方ない. Frohlich から Hubbard 強磁性の解析にも鏡映正値性が使える可能性があるからちょっとやっておけ的なことを言われているし, もう少し真面目に勉強したい. Ising 本の付録, あまりきちんと読んでいないので, もう一度読み直したい.
\(\phi^4\) の triviality について, 原さんは相当思い入れがあるようで, 小話をしていた. 学部から院にかけて素粒子をやろうとしていたから場の理論を頑張って勉強していて \(\phi^4\) ももちろん頑張って計算したが, 院に入ったくらいだかに triviality 周辺の結果が出てきて, 自分の 2 年間は何だったのかと思った, みたいな話をしていた.

折角相関不等式のプロに会ったので, Hubbard でそういう話がないか聞いてみた. 凄い便利だからあったら誰かやっているだろうけれどもあまり聞かないなら難しいのではないか, とか実に真っ当なコメントを頂いた. あったらいいな, くらいだし, あろうがなかろうが無限系 Hubbard はやるしかないので粛々と進めるだけの市民だった.

あと Ising 本を催促してきた. もう少しでできるとしか言えないとのことだったが. このブログなど見ているかはどうかというのは積極的に棚に上げ, とりあえずここでも催促していきたい.

廣島先生: 汎関数積分による Nelson モデルの話

廣島先生も一方的に名前だけ把握していたが今回初観測に成功した. ほぼ一環して経路積分と言っていたが, 要は確率論を使って場の理論を記述していこうという話だ. ずっと興味はあったがあまり真面目にやっておらず, というか粒子系の方で確率解析やら何やら色々必要でしんどくて全く手がついていない分野だったため, とても (おそらく一番) 楽しみにしていた. 先日ささくれパイセン向けセミナーとして場の方の経路積分は復習していたので, 大体はついていけた. もちろんありとあらゆる意味でハードアナリシスこそ本道でそこについては全くフォローできていないが, 以前よりも親しみは増したので大変に有意義であった.

赤外正則化の元での個数期待値の指数減衰や (confined potential の場合の) 位置の指数減衰に関する詳細な評価ができるというのは, やはり圧倒的に力強い.

非 Fock 表現での Nelson (正確には私が知りたいのは van Hove) の基底状態について, 汎関数積分で見るとどうなるかが知りたいのでちょっと時間を取って取り組みたい. 物理での赤外発散の位置づけを全く理解できていないのがつらいところだが, とりあえず数学というか数理物理として処理しきりたいと前から思っている.

Pauli-Fierz は 3 日に 1 回夢に見ると言っていた. うらやましい.

小嶋先生との話

廣島先生の 2 日目, 基底状態の非存在に関する議論が出たときに「数学者である廣島先生に聞くのは筋違いかもしれないが」との前置きのあと, 基底状態の非存在に関する物理について質問されていた. 鹿野さんとのやり取りなどほとんどフォローできていないのだが, そもそも赤外発散とは何か, 赤外正則化と実際の物理とは何か, 赤外発散があるときの基底状態とは何か, といったところの物理, 私はよく把握できていないことを改めて認識した. 物性や有限温度への応用で冨田-竹崎理論を使えばいい, という話もあったのだが, それはそれでまず数学として色々難しくてあまり進んでいないというコメントをした.

一応 BEC の存在を言えている系はあるので, その辺の話なども少ししたら, 興味を持って頂けたようで, とりあえずプレプリントを見てみたいというお話になったので, プレプリントをお送りしておいた. 以前の Summer School 数理物理の BEC 回のとき, 小嶋先生もスピーカーとして話していて, 色々考えないといけないことはあるということなので, 多少なりとも参考になれば嬉しい.

総評

超楽しかった.

2013年9月17日火曜日

Gaussian superprocess and its application to Quantum Field Theory: Sasakure Seminar

先日, 東工大でささくれパイセンを主な対象として開催した小セミナーで, 「Gaussian superprocess and its application to Quantum Field Theory: Sasakure Seminar」というタイトルでお話してきた. Gauss 超過程は場の理論へ応用できるのだが, そこに関する話. 難しい話はせず, ボソン Fock 空間と緩増加超関数空間上の \(L^2\) (確率空間) のユニタリ同値性について話してきた. 幾何や数論への応用へもあるのでそこまでどうしようもないほどマニアックで孤立した話題でもない, ということも説明. これから研究でも使う予定なので, それに合わせて復習にもなった.

証明は飛ばし飛ばしだが, (可換) von Neumann 環を援用する, 確率論ではあまり見ないであろう話や, Gauss 超過程の存在証明などポイントポイントはおさえた話をした. Gauss 超過程の存在証明は Tychonoff から Hahn-Banach, Stone-Weierstrass を介し, 最後 Riesz-Markov-Kakutani で締めるという関数解析の至宝を並べた証明で, 解析陣の心を掴んだ.

まだ一本目すら出ていないが, これも動画 (DVD) にしたい. やりたいことがたくさんある. ご興味があるという向きはご連絡頂ければ適当にお話に行くことはできる.

2013年9月12日木曜日

千葉大の渚勝先生のコンパクト作用素に関する PDF, 非可換幾何の香りがして面白い

千葉大の渚勝先生によるコンパクト作用素に関する PDF を見つけた. 標準的な説明の中にちょっと面白い説明があったので取り上げたい.
もう少し一般化して, 有界線形作用素 \(T \colon H \to H\) がコンパクトであれば, 集合 \begin{align} \left\{ x \in H \colon \Vert Tx \Vert \geq \alpha \Vert x \Vert \right\} \quad (\alpha > 0) \end{align} に含まれる \(H\) の部分空間は有限次元である. 実際, もし無限次元であるとすると正規直交列 \(\left\{ x_n \right\}\) がとれて, \(\Vert Tx_n \Vert \geq \alpha\) となる. \(x_n\) は 0 に弱収束するから, \(T x_n\) は 0 に強収束することになり矛盾する.
言われてみれば当たり前だが, この集合が有限次元にあるというのは知らなかった. この直後にコンパクト作用素の代数的な性質が議論されているが, これはコンパクト作用素のなす \(*\)-代数が有界線型作用素全体が作る \(C^*\) 環の中で両側 *-イデアルになっていることを表している. ちなみにコンパクト作用素は非可換幾何の定式化の中で「無限小」に対応している.

書き写すのが面倒なので省略するが, P.2 後半からの極分解の話が面白い.
\(|T|\) は \(T^*T\) の平方根, つまり多項式近似
これを多項式近似とみなすのが面白い. \(C^*\)-環は非可換連続関数環とみなせるというのが非可換幾何の基本だが, それから考えれば確かにコンパクト作用素は多項式近似のような感じになる. これも非可換 Stone-Weisrstrass とかあるのだから当たり前のことではあったが, 改めて聞くととても新鮮で面白かった.

2013年8月29日木曜日

Twitter まとめ: 単位元のない環

Twitter だけだったかブログにもまとめたか既に記憶にないのだが, Twitter でまた単位元のない環に関する話が出ていた.
単位元の存在しない環の例をパッと思いつかない 
@supernova3024 なんか重要な例があるそうなのですがわたしは知りません 
@_primenumber 重要な例があるのか…… 
@supernova3024 作用素環とかの分野だと結構あるっぽい (あんまり知らない) 
@Asabokujo そうだったのか…… 
@__dingdongbell あっ………… 
@__dingdongbell ありがとう 
@Asabokujo @supernova3024 \(L^1 (\mathbb{R})\) が畳み込み積に関してなす可換環は単位元を持たないよ 
@bean_paste そうなんですか…… (よく知らないです…) 
@Asabokujo @bean_paste 0 に収束する数列全体 (演算は項別) という例もあります. 
@LT_shu なるほど, lim の分配則 (っていうんでしたっけ) から環になるんですね で{1,1,1,…}はこの元ではないと 
@Asabokujo はい. ちなみに, 単位元の存在を要求しなければ, 一般に環のイデアルは環になります. さっきの環は, 収束する数列全体の環 (これは単位元をもつ) のイデアル (lim が環準同型で, その核) ですね.
私が良く出す例は 2 つある. 1 つは局所コンパクト Hausdorff 空間 \(\Omega\) 上, 無限遠で 0 になる連続関数のなす可換環だ. もう 1 つは無限次元 Hilbert 空間上のコンパクト作用素のなす非可換環だ. 両方とも \(C^*\) 環になっている. また, 作用素環 (\(C^*\) または von Neumann) は一般に単位元を持たなくてもいい. 私が実際に触るのはほぼ von Neumann 環 で, 大体単位元の存在を仮定しているし, 具体例だと本当に持っている.

\(C^*\) だと単位元の存在を仮定しないことがよくあるようだがあまり触ったことはない. von Neumann 環の場合, 単位元がなくても中心極大射影が単位元の代わりになってくれるため, 単位元の存在を仮定しても一般性が失われないということはある. Kadison-Ringrose にその辺のことが書いてあるため, 興味がある向きは読んでみよう.



追記

コメントを頂いた. まずは dif_engine さんからのコメント.
@phasetr \(C[0,∞)\) 上の積 \(f (*) g (x) := \int_{[0, x]} f (x - t) g (t) dt\) を入れたものも単位元のない環です. これが整域である (ティッチマーシュの定理) ことが Mikusinski の演算子法の基礎になっています.
魔法少女からのコメントはこの辺から.
@phasetr 関数 \(t \to f (t)\) のことを \(\{f (t)\}\) と書けば, \((\{1\}*f) (t)=\int_{[0, t]}f (\tau) d\tau\). すなわち {1} は積分演算子になっているわけです. この逆元が微分演算子というわけですが, \(C[0, ∞)\) にそのような元はありません.
@phasetr \(C[0, ∞)\) には単位元がありません. ところが, デルタ関数 \(\delta\) を導入し, 形式的に \(f*\delta\) を計算すると, \((f*\delta) (t)=\int_{[0, t]}f (t-\tau) \delta (\tau) d\tau=f (t)\). すなわち \(\delta\) は (形式的には) 単位元になるわけです.
@phasetr もちろん \(C[0, ∞)\) の中に \(\delta\) のような元は存在しません. ところで, 任意の可換整域 (単位元の存在は仮定しない) について, それを含む最小の可換体が存在します. 整数環の直積から有理数体を構成するのと同様にすればいいわけです.
@phasetr \(C[0, ∞)\) を含む最小の可換体 \(\mathrm{Frac}(C[0, ∞))\) を考えてみましょう. 今や微分演算子やデルタ関数はすべて \(\mathrm{Frac}(C[0, ∞))\) の中に入っています. 所謂 D-法 (微分演算子法) を Fourier 変換などを用いずに実現したことになります.
微分作用素やデルタが本当に \(\mathrm{Frac}(C[0, ∞))\) に入っているかの確認が必要だとは思うが, 演算子法の概略というレベルで把握した. 知らなかったので助かる. \(\mathrm{Frac}(C[0, ∞))\), 定義域固定なのが微妙に気になるが, これはどこまで一般性があるのかというのは気になる.
何か書いておくと勝手に色々教えてくれるという実に楽しい Twitter ライフを堪能している.

2013年8月6日火曜日

あの人に対して恥ずかしくない力を身につけているだろうか: 代数的確率論に関する対話

こんなやりとり をしてきた. 全く役に立てた気がしない.
[ガチ募] お客様の中に非可換確率論に詳しい方はいらっしゃいませんか. 
@tmaehara 非可換確率論を http://phasetr.blogspot.jp/2013/03/twitter\_15.html 位の意味でつかっているなら, 詳しくはないですが関連する数学を多少知ってはいます 
@phasetr だいたいこの意味です. 用語に自信が無いですが, 代数的確率空間 (A,φ) が与えられたとき, これに近い行列表現を求めたいと思ってます. 「近い」の意味はちゃんと決めていないですが, 「表現の前後で状態の値があまり変わらない」とかができるとハッピーです. 
@tmaehara http://en.wikipedia.org/wiki/Gelfand%E2%80%93Naimark%E2%80%93Segal\_construction GNS 構成定理というのがあって, 正確に (無限次の) 行列に落とすことはいつでも出来ます. 状態の値も完全に保てる構成法です 
@tmaehara 次元については元のデータに依存します. 有限次元ならきちんと同じ次元の有限次元行列で書けます 
@phasetr もともと無限次元のものを有限次元に丸めた場合, どの程度損するか, とかはありますか? 
@tmaehara 私自身は数理物理でダイレクトに無限次元を触る方なので全くわかりません. ただ応用上は大事な話ですし量子情報など関連研究でその辺をやっている人はいるとは思っています. 数学的にも有限次元近似の話題はありますが, 情報的な損得という議論はなさそうです 
@tmaehara 少しググっただけですが, 量子情報関係で何となくそれっぽい論文はありました http://www.mi.ras.ru/~msh/download/ppi-2-e.pdf この論文でお望みの感じの損得の議論までやっているかは分からないのですが 
@tmaehara 必要な所しか読んだ事ないので, 有限次元近似の損得問題がどこまで描いてあるか分からないのですが, http://www.amazon.com/Quantum-Entropy-Theoretical-Mathematical-Physics/dp/3540208062 は量子情報で有名な本です 
@phasetr 紹介ありがとうございます, 読んでみます. 
@tmaehara たびたびすみません. 数学的な議論をしていそうな人しか知らないのですが, 電通大の小川さん http://www.quest.is.uec.ac.jp/ は一時期 JST の研究員として東大数理で勉強していた人です. あと本の著者の理科大の大矢先生のグループもあります. 
@phasetr ありがとうございます. さすがにまとまってない段階でコンタクトをとるのはアレなので, とりあえず名前だけ覚えておきます.
こういうときに役に立てなくてどうするのか. 学部 1 年に対してさえ最大限の敬意を払って接してくれたあの人に恥ずかしくない力を持てているだろうか.

2013年6月25日火曜日

論文紹介:Buchholz-Grundling の Quantum Systems and Resolvent Algebras

Buchholz-Grundling による survey, Quantum Systems and Resolvent Algebras が arXiv に出ていた. これ だ. 以前から resolvent algebra の論文は出ていたが, それに関するまとめらしい. Resolvent algebra を使うと何となく計算がうまくいきそうな感じもするので, 使ってみたいと思っている. また Araki-Woods algebra の代わりに resolvent algebra を使った場合の自由場の BEC を調べることで親しんでみようとか思っているのだが, 滞りまくっている.

Resolvent algebra というのは大雑把にいえば非有界作用素のレゾルベントを取ることで有界作用素にし, その有界作用素から作用素環を作るという話. Araki-Woods algebra は非有界 (自己共役) 作用素 \(A\) からスペクトル理論を使って \(e^{iA}\) (有界作用素) を作り, これから作用素環を作るという話. レゾルベントの方が色々振舞いがいいのに何故かほとんど研究されてこなかったが, 何か色々な性質がよくて嬉しいから皆もやろう, ということで論文になっている.

アブストを見るとすぐ出てくるが, 量子系の運動学的な構造をモデル化するのによいらしい. この辺まだあまりよく分かっていない.

Introduction では Segal の場の作用素の話からはじまる.
作用素 \(\phi(f)\) から作る多項式代数は, 自己同型による意味のあるダイナミクスをあまり持っていない. 実際それを不変にするのは多項式 Hamiltonian だけだ.
ということらしい. 知らなかった.
非有界作用素だと扱いが面倒なので, 指数の肩に乗せて有界にする. これは良く知られた Weyl algebra だ.
実は有界作用素にして Weyl 環にすると, 表現論的に元の CCR algebra とは違う環になる. 新井先生の本, 『量子現象の数理』の 3 章では量子力学のときに Aharonov-Bohm に即してこれが議論される. 興味がある向きは見てほしい.


Weyl algebra も物理的に意味のあるダイナミクスを記述する自己同型群を持たないという欠点がある. これは Weyl algebra が単純であることが問題だが, 一方でダイナミクスが豊富な単位的 \(C^*\) 環はイデアルを持たなければならない.
単純環というのは知っているが, ダイナミクスとイデアルの関係はあまりよく知らないので悲しみに包まれている.
この状況に対応すべく, 以前の論文 で resolvent algebra を議論した. この環はイデアルをたくさん持っている. これから出る論文でイデアル構造が基礎となる量子系の大きさに依存していることが示されている. Primitive ideal と resolvent algebra のスペクトルは 1 対 1 に対応している.
アブストを見る限り, 大きさというのは多分あとで出てくる. 色々と役にも立つので皆も研究しようよ, ということも書いてある.

2 章では定義と Fact が書かれている. 命題 2.3 がかなり強烈.
表現が正則 (定義省略) なとき, 表現は忠実になる.
表現が忠実で表現した環の弱閉包が因子環なら表現は正則になる.
Oh, it's… という感じ.

命題 2.4 では正則表現の場合に Weyl algebra との 1 対 1 対応があることを言っている.
章末には Bohr コンパクト化とか出てきてつらい.

3 章ではイデアルと次元の話になる. 次元というのは何か, というところからしてよく知らない. 可換環でも次元があるらしい, というのは聞いているけれども.

定理 3.1 で, 基礎となるシンプレクティック空間が有限次元のときは, 表現が完全に分類できている. これは Stone-von Neumann の一意化定理の拡張にあたるとか書いてある.
定理 3.2 は代数的不変量の話をしているし Remark もあるので大事そう.

命題 3.3 は面白い.
\(I\) を resolvent algebra \(R\) の非零イデアルの共通部分とする.
\(\mathrm{dim} \, (X) < \infty\) なら \(I\) はコンパクト作用素のなす環 \(K\) と同型になる. また任意の既約正則表現で \(I\) を移すと \(K\) になる.
\(\mathrm{dim} \, (X) = \infty\) のとき, \(I = \left\{ 0 \right\}\) になる.
命題 3.4 もやはり大事そう.
\(R\) は核型 \(C^*\) 環になる.
\(R\) が I 型であることと \(\mathrm{dim} \, (X) < \infty\) は同値.
Weyl algebra もそうだが, resolvent algebra も可分でないの, 笑える.
4 章ではオブザーバブルとダイナミクスの話になる. はじめは具体的な Hamiltonian を取って, それを調べている. P10 に resolvent algebra と付随する Hamiltonian の分類が open であることが書いてある.

基礎となる空間の次元が無限大のとき, Haag の定理に関連する結果が予想されるが, それが実際にあるというのが補題 4.3 の模様. とりあえず雑にしか読んでいないのであまりよく分かっていない.

5 章でこう色々とまとめが入る.

イデアルだとか代数的なところがかなり綺麗に運動学的な部分にはまるという話だが, 構成的場の量子論の泥臭いところとどう相互にカバーしあっていくか, という部分がやはり一番気になる.

2013年5月30日木曜日

作用素環と作用素論:スペクトル解析への応用


Evabow さんとちょっとしたやりとりをしたのでせっかくなので記録しておく. 私のツイートは これ だ.
@Evabow1 @bread_crust http://arxiv.org/abs/0911.5126 など, Schrodingerのスペクトル解析に作用素環を使うというような話はあります. 微分方程式でも調和解析でもなく作用素論の方面なので大分ずれはしますけれども
はじまる部分はもっとあとの方だが, 面白い内容なので 元ツイート からはじめる.
本ゼミの前提知識に作用素環も増えた。 
@Evabow1 ヤバいのでは・・・ 
@Evabow1 !?!? 
@Manaka0501 理解を深めるには必要になった。まだ初歩的なとこしか使わないが 
@bread_crust Banach*環のいい本教えてください!! 
@Evabow1 頑張ってください! 
@Evabow1 何が知りたいの? 
@bread_crust Banach*環、C*環と表現論つながりのことが知りたいです。 
@Evabow1 それは群C*環の表現のことを言ってるの? 
@bread_crust そうです。 
@Evabow1 微分方程式でそんなん使うのか… 
@bread_crust 微分方程式←調和解析↔表現論↔作用素環 みたいな感じだと思っています。 
@Evabow1 ちなみに、それは一般論を知りたいの?有限群を知りたいの?Lie群を知りたいの?無限次元Lie群を知りたいの? 
@Evabow1 えーっと他にもあるのかな… 
@Evabow1 なんつーか群C*環で俺が知ってるのって、今読んでるDavidsonしかないんだけど(本当はもっとある)、 それって本当に今必要なのかなって感じはある。 もちろんC*のことをある程度知ってるなら十分に読める。 
@Evabow1 そして非有界作用素のことを言ってるなら竹崎でも読めばいいんじゃないかと思うんだけど、それこそ本当に必要なの? 
@Evabow1 というわけでDavidsonと竹崎を読んで俺に教えてください 
@bread_crust 3時前に寝てしまって返信が遅れました。 C*環まわりの表現論の一般論と非有界作用素が知りたいです。 作用素環が本当に必要なのかどうか現時点ではよく分かりませんが、 微分方程式を別の角度から見ようと思ったときにどこかで使うと思うので 
@bread_crust 何かと忙しい院はなく学部のうちに手がつけられる所はやっておきたいなと思っています。 いろいろ助言をしてくださってありがとうございました。 
@Evabow1 ごめん、C*環のまわりの表現論の一般論ってなにを指してるのかがわからないんだけど、 単に作用素解析とかGNSを指してるわけではなくて、群の(ユニタリとかの)表現のことでいいんだよね? 
@bread_crust 群の表現です、すみません。 
@Evabow1 @bread_crust http://arxiv.org/abs/0911.5126 など,Schrodingerのスペクトル解析に作用素環を使うというような話はあります. 微分方程式でも調和解析でもなく作用素論の方面なので大分ずれはしますけれども
@phasetr ありがとうございます!数理物理方面も少し興味があるので、挑戦してみたいと思います。
作用素環専攻だったのに普通の作用素環の常識的なところも知らない自分, かなりまずいという意識だけはある. 最近だとどんな本で勉強するのだろう. 最近も何も, 数理物理に特化した本しか読んだことないので, 昔の本もろくに知らないが.