2013年1月21日月曜日

数学,物理,数理物理での内積関係の記法,記号


Twitter で少しやりとりしたので簡単にまとめておこう. どういう意味で取るかはかなり微妙なところだが「初学者」には分かりづらいようだから.
面倒なので全部関数空間で考える. 定義域は適当に \(\Omega\) にして,関数は \(f\), \(g\) あたり. 作用素(演算子) は \(A\) にする.

数学での記法

複素共役を \(\bar{f}\) として,内積は次で定義する. \[ \langle f, g \rangle := \int_{\Omega} f(x) \overline{g(x)} dx. \] 左の引数(第一引数)を線型にして右の第二引数を反線型にしたい,という人情を表す. 内積自体には次のような記号を使う: \((f, g)\) ,\((f|g)\) ,\(\langle f, g \rangle\) ,\(\langle f | g \rangle\) . 多分一番最初の記号が一番一般的だろう. 私自身は \(\langle f, g \rangle\) を使っているが,これは勉強した本である量子力学の数学的構造と Bratteli-Robinson の記号を踏襲したことによる. 作用素の共役は \(A^*\) のようにスターで書く.
全く関係無いが大学一年の頃,演習の質問でスターを「雪印」と呼んだ友人がいて, 「これはスターと読みます.」と突っ込まれていたことを想起した.

物理での記法

複素共役を \(f^*\) として,内積は次で定義する. \[ \langle f | g \rangle := \int_{\Omega} f(x)^{*} g(x) dx. \] 演算子の共役は A^{\dag} と,ダガーで書く.

数理物理での記法

端的に言って滅茶苦茶だ:数学の記法と物理の記法のチャンポンになっている. 同じ人でも時と場合によって記法を変えることがある. 例えば新井先生は数学系の論文では \((f,A^* g)\) で複素共役もバーを使う数学よりの記号だと思うが, 物理の人が多そうな文献では物理の記法を使う. 分類の仕方が微妙なところだが,数理物理の文献では大体数学の記法である中, 内積の第一引数を反線型に取ったりする.
ちなみに私自身はチャンポンの記号を使っている. これは Bratteli-Robinson の記号を踏襲したことによる. 内積は第二引数を線型に取る物理の記法だが,複素共役と作用素の共役は数学の記法だ. 見ると分かるが,量子力学の数学的構造と Bratteli-Robinson でも記号が違う.


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