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2013年11月7日木曜日

アンドレ・ヴェイユ 『ゼータ函数の育成について』

素数の歌はとんからり bot が非常にアグレッシブな PDF を紹介していた.
私が, Riemann の \(\zeta\) -函数と性質を共有する函数を "育成" するときに使って来た一つの特別なトリックをお話しよう.
── アンドレ・ヴェイユ 『ゼータ函数の育成について』 http://goo.gl/p1mR1
まず衝撃的な冒頭の一文を引こう.
今日のような蒸暑い日には, 竪苦しい話より, `動物や植物' を `育成' でもするような話の方がよいであろう. \(\zeta\)-函数についていえば, 本質的な点は第一に \(\zeta\) がギリシヤ語のアルファベットの一つであることで, 第二にその変数が普通 \(s\) と書かれることである: \(\zeta (s)\).
これが育成に関わることも衝撃的だし, \(\zeta\) の本質がこんなところにあることも知らなかった. ただ, 先日の第 4 回関西すうがく徒のつどいで「数論は \(\zeta\) が綺麗に書けるようになることからはじまる」という, 数論専攻の方の有り難い話も聞いたので要はそういうこと感ある. 「 Weierstrass の最大の仕事はペー関数に \(\wp\) の字を当てたことだという説がある」などの貴重な話も聞いてきた.
ところでこの動物について, Euler の最も重要な発見は, \(\zeta\)-函 数の函数等式である.
\(\zeta\), 動物だったのか.
次の step をなし遂げたのは Dedekind である. これが, bigger and better zeta-function の育成の始まりである. 私自身も近頃は, その育成に, 私の数学的な努力の一部を捧げているのである.
Riemann の \(\zeta\) とこの Dedekind の \(\zeta\) の定義との主要なちがいは, ローマ字とドイツ文字とのちがいであることがわかるであろう. ここでドイツ文字が使われているのは, 長い間ドイツ人だけしか数論をやらなかつたので, 数論の記号にはドイツ文字を使うのが習慣になつているからである.
引用が面倒なので省略するが, Riemann の \(\zeta\) の零点に対して, 確率論による大雑把な推測法を説明しているのが目を引く. 確率論と数論の接点, Weil は強く意識していたということか.
次の step は, 非常に面白いものであることがわかり, 現在, 数学的植物学者に対し, 非常に大きな研究分野を繰り拡げているものであるが, それは次のようなものである
数学的植物学者とか, 先程から衝撃的な言葉が連発されまくっているので Weil の偉大さを感じる.
それにしても, \(\zeta\), 育成するものだとは知らなかった. \(\zeta\) をアイドルと思ってプロデュースすることも考えなければいけない時代なのかもしれない.

2013年8月4日日曜日

確率論的な $\zeta$ の特殊値の導出法

不勉強と言われたら返す言葉はないのだが, 聞いたことない \(\zeta (2)\) の導出の方法が言及されていた のでちょっと聞いてみた.
先週は測度論によるζ (2)=π^2/6 の証明 今週はガロア理論による角の三等分問題 完全に趣味の領域です. 
@sesiru8 測度論によるゼータの特殊値の証明, どんなことをするのでしょうか. 測度論からというのは聞いたこと無いので気になります 
@phasetr ルベーグ積分でやりました. 殆ど広義リーマン積分でしたが (^^;; 
@phasetr こんな問題です https://twitter.com/sesiru8/status/359443578470137856/photo/1 
@sesiru8 ありがとうございます. このやり方, 知りませんでした. ただ, これを測度論とは言わないのでは, という感じはします 
@phasetr 最後の方で無限級数を考え, 積分と極限の交換を利用するためにはルベーグの意味での積分が必要になるのでしょうか. (これを測度論というかは…分かりません. ご指摘ありがとうございます). 
@sesiru8 ルベーグ積分なら級数も積分と思えるので単に積分でしょう. 測度論と言うともっと集合演算とか駆使するイメージです. 何か確率論的にぎろんするのか, と思ったのですがそうではないようで. あと, 積分と級数の交換はリーマンでもできます 
@phasetr なるほどです. 
@sesiru8 具体的なやり方をすぐには見つけられなかったのですが, 確率論的にζの特殊値を出す方法はあるようです http://gcoe.math.kyoto-u.ac.jp/cgi-bin/seminars/index.ja.php?type=view&id=770&ca=seminar 挙げられた言葉を見た感じ, 測度論的色彩が強いのかはどうかは分かりませんが確率という感じはします 
@phasetr ありがとうございます.
問題についてはこちらにも書き写しておこう.
  1. 函数 \(f (t)\) を \(f (t) = \left ( \frac{2}{\pi} \right)^2 \int_{0}^{\infty} \frac{1}{1 + x^2} \frac{1}{1 + (t/x)^2} \frac{1}{x} dx\) と定めるとき \(\int_{0}^{\infty} f (t) dt = 1\) が成り立つことを示せ.
  2. 関係式 \(\frac{1}{1 + x^2} \frac{1}{1 + (t/x)^2} \frac{1}{x} = \frac{1}{t^2 - 1} \left ( \frac{x}{1 + x^2} - \frac{x}{t^2 + x^2} \right)\) を用いて \(f (t) = \left ( \frac{2}{\pi} \right)^2 \frac{\log t}{t^2 - 1}\) を示せ.
  3. 次を示せ. \begin{align} \int_{0}^{\infty} \frac{\log t}{t^2 - 1} dt = 2 \int_{0}^{1} \frac{\log t}{t^2 - 1} dt = 2 \sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{(2n+1)^2}. \end{align}
  4. 以上の計算より \begin{align}\sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{(2n+1)^2} = \frac{\pi^2}{8}. \end{align}
計算すればすぐ分かるのだろうが, 3 の左 2 つの式, 正の実軸上の積分が \([0,1]\) の積分に落ちているのでなかなか凄い.

あと 確率論的に特殊値を出す 方についても記述を引用しておこう.
リーマンゼータ関数の特殊値 (特にバーゼル問題 \(\zeta (2) = \pi^2 / 6\)) を初等確率論の手法で求める. 2 つの独立なコーシー分布の商, 逆正弦分布の商, 指数分布の商, ウィグナー半円分布の商のすべてでバーゼル問題, リーマンゼータ関数に関するオイラー公式が導き出せる. また, ルジャンドル展開の手法でもバーゼル問題が解けることや, チェビシェフ多項式との関連なども論じる.
追記
pekemath2 さんが A probabilistic approach to special values of the Riemann zeta function という論文を引いていた.
@ftksr_sakamuke ちなみにこういうのもあります
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1590-01.pdf
まだ詳細を追っていないが, これも面白そう.