ラベル 微分幾何 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 微分幾何 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2013年10月4日金曜日

美少女であるところのひさこさんを確率的な意味で善導してきた

これは美少女であるところのひさこさんを善導したその記録である.
確率論とそれる方向に向かっている方のひさこさん.
@ml_hisako 何やってるんですか
@crobert_z フーリエ解析です.
@ml_hisako 測度のフーリエ変換とかあり, 分布周りの大事な話があり, ガウシアンとの関わりも強いのでそれていない説
@phasetr なるほど. ありがとうございます!
@ml_hisakohttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%B9%E6%80%A7%E9%96%A2%E6%95%B0\_(%E7%A2%BA%E7%8E%87%E8%AB%96)この辺見ると, 特性関数は定義そのものにフーリエ変換を使っているのが分かります. また確率論の基本的な対象, ガウシアンはフーリエ変換と相性がいいのですが, そういうところで陰に陽に使います
@ml_hisako さらに言えば, ブラウン運動を基礎にした確率積分でもやはりフーリエ変換は適宜使いますし, フーリエ変換発祥の地, 熱方程式を解析するときにも Feynman-Kac の公式という確率論の金字塔もあるので, フーリエはやっておいて全く損はない話です
@ml_hisako むしろ, 色々なものが色々に絡んでいくところこそ面白いところなので, あまり確率論に関係なさそう, という理由で他の数学を避けたりしないようにしてほしいくらいです. 確率論からの共形場理論でウェルナーにフィールズ賞が出ていますが共形場は他の数学との相互作用があります
@ml_hisako 前ブログにも少し書きましたが, 数論と関係ある部分もありますし, 確率論の射程も広く深いです
@phasetr なるほど…最近, 勉強してるうちに違う事もやりたいけれど確率論をやりたい気持ちが強いのでやっぱりそれに基軸を定めてやるなのかと疑問に感じました. でも市民さんからアドバイスをいただき, ほかの数学も避けずに学びたいと思いました. (続く)
@phasetr 伊藤清の確率論の 1 巻を調べてみたら特性関数の章でフーリエ変換を定義してました. Poisson 分布を考える際にも必要なんですね. この章をまだ勉強してませんでしたがフーリエ解析の大切さも理解できました. http://pic.twitter.com/0iobVWGWmf
@ml_hisako ついでなのでもう少し色々書いておくと, 例えばフーリエ解析は表現論と深い関係がありますが, 大雑把に表現論とフーリエの交点に調和解析という分野があります. この分野に確率解析を持ち込んで画期的な仕事をしたのが東大数理の新井仁之先生です
@ml_hisako また伊藤清自身がはじめた分野として確率微分幾何というのもあります. ささくれパイセンがこの辺に進もうとしているようですが, 20 世紀数学の金字塔の 1 つ, Atiyah-Singer の指数定理の確率論的証明という話題もあります
@ml_hisako これや量子力学・場の量子論と深い関係がある話ですが, (偏微分) 作用素を積分核を使って表示することで作用素を詳しく解析する手法としての経路積分 (Feynman-Kac 公式) というのがあり, 作用素論との関わりもあります
@ml_hisako 私が知っている範囲で考えるだけでもこれだけの広がりがある分野です. 元々応用から出てきた分野なので, 統計学まで含めて応用向きの話も数限りなくあります. 確率に限りませんが, 何をやっていてもそれる方が難しいでしょう
@phasetr 確率論がこんなに広がりがあると知り, 改めて学びたいなと思いました. 貴重なお話ありがとうございます! また色々教えてください!! 私も勉強して身につけたいです.
数年したら逆に色々教えてもらえるようになるはずだ. 楽しみに待っていたい.

2013年9月19日木曜日

Ricci フローと Poincare 予想を議論した Tian と Morgan のプレプリント, Ricci Flow and the Poincare Conjecture

比較的新しめの Ricci フロー勉強用のアレとしてこんなのがあるらしい.
Ricci Flow and the Poincare Conjecture
John W. Morgan, Gang Tian
This manuscript contains a detailed proof of the Poincare Conjecture. The arguments we present here are expanded versions of the ones given by Perelman in his three preprints posted in 2002 and 2003. This is a revised version taking in account the comments of the referees and others. It has been reformatted in the AMS book style.
本来の話として Poincare 予想の証明の詳述ということらしいが, Ricci フローに関する革命的な洞察が含まれているので結果的に Ricci フローの勉強にもなるらしい.
幾何やりたい.

2013年1月28日月曜日

書評:数学セミナー 2013 年 2 月号



毎号買っているときりがないので普段あまり買わないのだが,何となく今回は買ってみた. 昨年 8 月に亡くなった小林昭七先生の特集になっている. 気になった記事についてつらつらと感想を書いていきたい.

巻頭の coffee break は「数学者が紙と鉛筆を捨てる日」という記事だ. 数学者は紙と鉛筆さえあればいいというのは本当か,と尋ねられた吉永さんが 思ったことを書いている.

研究活動のコアな部分はもちろんなくてもいいが,研究全体ではないと困る,というところから始まる. 論文書きやら他の研究者とのやりとりでメールを書くなど,そうした部分で PC がないと困る, というところからノートを取ったり,論文を読むのにタブレット PC を使い始めた,という近況を 報告されている.

私も最近タブレットを買って,論文や本を読むのに便利なこともある,という感じだが, ノートを取ったり動画作成補助に使うというところでまだまだ使い慣れない. (無料)アプリの充実も含め,何とか状況を改善してほしい部分もある.

大沢先生による「ポアンカレとの散策」だが,Poincare (e にはアクサンがつく)の不等式について触れられていた. Poincare の不等式は偏微分方程式ではとても大事で,必ず学ぶ. その辺りに関する数理物理でも大事で,下記 BEC の文献では Poincare の拡張について議論があるくらいだ. BEC への応用上,拡張が必要になっているらしい. 私は読みたいと思いつつ全く読めていなくて悲しいのだが.

ここから小林先生追悼関係の記事をの話をしよう. あとで少し書くが,小林先生の写真,大体全部笑顔なのが非常に印象的だった. また皆に愛されたいた感のある記事ばかりだった.

まずは落合先生による小林先生の数学的人生についてまとめた記事だ. 矢野先生は「矢野」と書かれているのに小林先生を「昭七先生」と書いているあたりが萌えポイントだ. 昭和 7 年生まれだから「昭七」という命名だ,という噂は本当だったらしい.
弟の久志の証言によると,この結婚で昭七先生のキャラクターがものすごく変わり, 例えば写真に写る姿は何時も微笑み笑っているようになったとのことであり
という記述を見た上で各写真を見ると本当に笑っている写真ばかり上がっているのに思わず笑った.

幾何が本当に分からないので何とも言えないが,引用されている次の言葉が印象的だった. 引用は適宜中略するので,全部読みたい方は購入してほしい.
微分幾何は,数学に対する一つの見地(view-point)であり,方法である. 微分幾何の存在意義は,新しい見方や,有力な方法を提供する点にあるとと思う. それに幾何学的に意味のわかる概念とか方法は,自然なものだがら, あとで予想以上の発展をみせることが多い.
話が微分幾何という一つの閉じた世界で終わっているようなときには, 良い定理であっても私は感心しても特に興奮するほどの魅力を感じることはできない.
微分幾何のような分野で,ささやかでも自分のアイデアを伸ばす方が楽しいのではないか. メインストリームに身を浮かべなくても,メインストリームに流れこむ小さな流れの内に, 微分幾何の面白い問題を見つけ出すというのも,また楽しいのではないか.
数学を勉強するときにはぜひ数学史も一緒に勉強してほしいと思います. 『この概念はどうしてうまれたのか』といった歴史を知ることでより深く理解できると思う
最後の記述,このへんは私も何とかしたいと思っていて,色々考えている.

小林先生と全く関係ないが,落合先生というと日体大が何か不祥事を起こしたときに学長をしていて 謝罪会見を開いていたので,誰かと「落合先生が全国区の有名人になった」と大変不謹慎な 会話をしていたことを思い出す.

慶應の前田先生の曲面の記事だが,有名な『曲線と曲面の微分幾何』に敬意を払って, 幾何学入門を意図して書かれたらしい. 大分前に買って読んだのだが,あまり真剣に読んだというわけでもなかったため, 結局あまり頭に入っていない. 色々あって複素曲面に興味があるので,その辺を勉強するついでに読み直したいところだ.



野口先生の小林双曲性に関する記事だが,小林双曲性,名前は知っていたがどんなものなのかを今回始めて知った. 何をどう思ってこんなのを定義したのか全く分からないが,これがやばい. N が小林双曲的な場合の正則写像全体がいかなる M に対しても同程度連続になるとか衝撃の一言だ. コメントがあるが,Ascoli-Arzela が使い易くなるので強烈の一言. Ascoli-Arzela,条件が結構厳しいので面白いが(私がやっている範囲では)使いづらい定理という印象があるのだが, こういう使いやすそうな状況はあるのか,というところも面白い.

M がコンパクトな複素多様体なら小林双曲性と「整曲線 f:CM は定写像しかない」という ブロディの定理も凄まじい. タイヒミュラー空間上のタイヒミュラー距離が小林距離に一致するというロイデンの結果も, 「タイヒミュラー距離はタイヒミュラー空間上だけで定義されていたもので,いわば孤立していた」という記述を見ると, 小林擬距離の強烈さが分かるというもの. ちなみにタイヒミュラー空間は定義すら知らないが,良く聞く名前なので大事,または面白い対象なのだろうということくらいは分かっている. 野口先生の研究は代数幾何との関係がある感じのものが多いという感じだが,実際にそのあたりの話がいくつか 書かれていて,それも面白く,勉強意欲をそそる.

P34 の超笑顔の写真がまた印象的だった.

満渊さんの小林-ヒッチン対応の記事,これまた名前だけ知っていてどんなものか全く知らない話だったので,単純に楽しい. これもまた超強烈な話だった. Frankel 予想の「曲率から多様体の性質が決まる」という話,本当に意味が分からないが,微分幾何の王道っぽい強烈な予想だと思う.

何となく買ってみただけだが,名前しか知らなかった話がいくつか強烈な結果とともに解説されたいたので思っていた以上に楽しい号だった.一通りは眺めたが全く身についていない小林先生の複素幾何の本もしっかり読み直したいと思わせる内容だった.

2013年1月27日日曜日

書評:幾何学的変分問題


kazz_281さんによる簡単な書評 があったので,Twitter でも少しつぶやいたのだが私も以前読んだ感想をまとめておこう.


調和写像に向けて丁寧に書かれた本でのんびりしていて非常によい本だったことは強調したい. この本で扱っているのは幾何と解析にまたがる分野だが,双方ともにそれ程予備知識は仮定されず, しかも内容的にもそれぞれについて深い知識は必要にしないにも関わらず かなり突っ込んだ内容まで書かれているのは率直に凄いと思う.

あとで内容に触れるときにも少し書くが,変分は物理でも大事な教養で本の内容自体も解析力学に直結している. 解析力学関係の数学,特に変分を真面目に勉強してみたいと思う物理の人向けには丁度いいと思う. 当然この周辺に興味がある数学の初学者にもいい.

まず変分について. 微分法の一般化にあたる. 微分では関数の極値を取る数値を求めるのが大事な仕事になるが,「関数の関数」を考えてその「関数」の極値を与える 関数を求めるのが変分の基本的な考え方になる. これは力学だと粒子の経路を求めるのに,エネルギーが最小になる経路(関数)を求める問題にあたる. エネルギーが経路(これ自体関数)の関数になるからだ. 実際歴史的に見てもこの力学の問題が変分のはじまりだ.

第1章では実際にこの力学の問題を扱う形になっている. 本には物理的なモチベーションについては特に書かれていないが,物理の方は式を見ただけで大体分かると思う. 適宜物理の本で復習しながら読み進めると楽しいだろう. 曲線に関する話を軸に接続や共変微分が定義される. 微分幾何の基本的な重要な概念なのでここできっちり勉強しておくととても役に立つはずだ. 接続の幾何は今の超弦関係でもとても大事な話のはずだ. そちらでも大事な概念だと思うが,複素幾何を学ぶときに Chern 類の微分幾何的定義でも 曲率が出てくるので,とても大事な箇所なので丁寧に読みたい.


第2章では曲率を議論する. Riemann 多様体の基本的な対象なので,当然とても大事なところだ. 定理 2.19,Hopf-Rinow の定理など,Riemann 幾何の基本的な概念や定理も紹介されているので, Riemann 幾何入門としても使える. 2.5節で具体的に Riemann 幾何への応用が議論されるが,定理 2.24,Myers の定理はやはり強烈だ. Ricci テンソルに関する条件から多様体のコンパクト性や基本群に関する位相的な情報が出てくる. 詳しくないので大分アレだが,Ricci テンソルは曲率に関係する概念であって, 曲がり具合から位相構造が制限されるというのはなかなか意味不明で凄まじい.

第3章ではとうとう写像のエネルギーの話から調和写像に入る. 色々なベクトルバンドルとそこでの接続が出てくるのでかなり大変な章だが, 本格的な議論が始まってくるので楽しくなってくる所でもある. トポロジーなどでベクトルバンドルの一般論を学ぶ前に具体例に親しむという目的に使ってもいいだろう. 私は実際にかなり参考になった. 調和写像はこれまでの議論を具体例として含むこと,他の興味深い話題も含んでいる大事な概念であることが具体的に説明される.

最後に第4章で調和写像の存在が議論される. ここで関数解析というか解析的な議論が出てくる. 多様体上の非線型偏微分方程式に興味がある人が読むと参考になるのではないかとも思う. Holder(oにはウムラウトが付く)空間が出てくるのだが,これは楕円型正則性(elliptic regularity)でも大事になる空間で, 関係する人はきちんと勉強しておく必要がある. ごりごりの解析になるので,初読時にはさらりと流してもいいと思う.
付録も簡潔にまとまっているので他書を読むときに参考になる. 現代数学への展望も読むだけで楽しいので是非読まれたい.