2013年9月23日月曜日

第 4 回の関西すうがく徒のつどいに参加してきた #kansaimath

9/21-9/22 と第 4 回関西すうがく徒のつどいに行ってきた. 端的にいうと「楽しかったです. 終わり」なのだが, どうしようもないのでもう少し書く. 基本的に普段自分が自覚的に触らないのを中心に聞いてきた.

『代数学における選択公理』
1 日目の 1 発目ではブルブルエンジン兄貴の『代数学における選択公理』を聞いてきた. まとめはこの辺. 代数弱者なので細部がさっぱりだし, 有限生成な (可換) 環なんて普段使わないのでそれ困るの? というところからこう色々とアレなのだが, まあそんなものなのだろうということで適当に脳内処理した. 3 つテーマがあって, 環これと変な \(\mathbb{Q}\) の代数閉包と入射性・射影性の話. エンジン兄貴のホームページに PDF が出るそうなので, 興味がある向きは確認してみよう.

まずは話題の環これから始まった. 選択公理なしで変な環 (の存在を許すモデル?) を作ることで, 選択公理ないとやばいという話. Noether と Artin が一致しないとか何とかそういう話. 少なくとも加群については Artin 性と Noether 性が一致しない例があるので, それが一致しないことはそんなに重大なのだろうかとか色々気になるところはあるが, もう少し代数をきちんとやらないと何ともいえない.

その 2 として変な代数閉包の話. 選択公理がないと代数閉包の (一意性) 存在が言えないらしいが, 何かその辺. ZF で変なサポートを持つ \(\mathbb{Q}\) の代数閉包 \(L\) が作れる (モデルがある?) らしく, そういう話. この \(L\), 非自明な絶対値がないとか Galois 群が自明とか相当やばい. 議論の主軸は上記の変なサポートがあるということのようだ.
その 3 は入射性と射影性の話. 一番印象的だったのは, 入射と射影は双対的な概念なのに射影の方が同値条件など何か面倒なことになっているということ. 入射のときと射影のときで, 証明自体かなり違うようで, 単純に双対で写せば簡単に終わるというわけでもなく, 証明自体も射影の方が何か面倒だという話だった. 選択公理についても双対的な概念を導入すればひょっとしたら綺麗になるかもしれないがよく分からないね, ということでその場はまとまったのだが.

ブルブルエンジン兄貴が PDF をアップした. 興味がある向きは確認しておこう.
つどいの発表内容をアップロードしました。 http://alg-d.com/math/tsudoi4.pdf
@alg_d 関連ページ http://alg-d.com/math/ac/alg\_cl.html http://alg-d.com/math/ac/inj\_proj.html http://alg-d.com/math/ac/noetherian.html

1 発目の裏番組でぞみさんが『外から数学を眺めてみよう』というテーマで話をしていた. もちろん聞けていないのだが, 1 年生なのに積極的に発表をしていて素晴らしい. 今度何か教えてもらおう.

『偏微分方程式の逆問題–拡散方程式の数学と物理と工学』

お昼を挟んで 2 つ目の話は市民講演枠と勝手に自称した市民トークだった. どなただったか失念したが, あとで直接コメントを伺ったところ「あまり逆問題の話はなかった」という実に真っ当なご指摘を頂いた. 申し訳なかった. これもあとで DVD にする予定だが, そのときにはもう少し突っ込んで内容を増やす予定.

数学として突っ込んだ話よりも, 物理や工学で数学を使っていく上で何が難しいかといった話や, 物理・工学的に考えてどうかという部分を中心にしてきた. 例えばシミュレーションに関わる問題として, 解の存在や一意性, 安定性が現実的に決定的に大事になる. 本当にお話だけだが, シミュレーションする上でまともな時間内で計算結果を出すことをも大事であって, プログラミングや計算効率・収束速度についても真剣に検討する必要がある, みたいなことにも触れておいた. あと, 拡散方程式自体, 本当に現象をきちんと表現しきれているのかという問題とか.

目的としては次のような感じ. つどいで物理・工学系の話題が少ないため, どういうリアクションが返ってくるかまで含めて試験的にやってみたい. 物理の学部生が当たり前と思っているくらいのことで, どこまでが本当に当たり前として通じるかというところを知りたい. 少なくとも超弦関係では物理と数学の交流が活発になっているので, そうした業界に足を踏み込もうという数学の人にとっては物理の人間の感覚を把握しておくと, 交流しやすくなるだろう. 必ずしも伝統的な数学の意識下にない話題でもあり, そうした数学に馴染めない人がこうした境界分野に活路を見出せるかもしれない. また, つどいに来る人の中で数は少ないだろうが, 物理や工学など非数学の人が数学の人と交流するとき, 自分の常識について自覚的に話せるようになれば交流がスムーズにいくようになるだろう, ということもある.

まずは逆問題というのが何かというのを具体例を挙げていくつか説明した. 数値計算を数学方面からやっているうださんが, 話は大雑把には知っているが具体例をあまり知らなかった, と言っていたので, いくつか挙げておいて良かったのだろうと思っている.

拡散に関する物理的な問題の説明とか, 「物理として」何が難しいのかとかそういう話を展開したあと, 解の存在・一意性・安定性が応用上どういう意味があるのかを数値計算を例に説明し, 最後に拡散方程式の解の非現実性とその解釈について話してきた. 物理の人にとっては当たり前なことしか言っていないが, 数学の人にとっては当たり前ではないのだろうと想定した話.

あまり突っ込んで感想聞かなかったので, アンケートの内容で反省しつつそれを活かして DVD でブラッシュアップする予定. あと, ばんぬさんとかに必要なら数学的に突っ込んだ話をセミナー的に何かやるので, 必要なら呼んで, という話とかしてきた. あと, ひさこさんに「今回はほとんど数学の話をしなかったが, もっと数学チックなアレについてはリクエストがあれば, できる範囲で答える」的な話もした.

ちょっと話はずれるが, 休憩のとき, 数理物理的なアレをやろうと思っているという学生さんと話した. 構成的場の量子論は基底状態の存在とか物理としてはどうしようもないことをやっていて, 赤外発散などを数学的にきちんとしていきたいという強い数学的モチベーションがあればいいかもしれないが, 「物理」をガンガンやっていきたいという人にはつらいということ, 物理, 特に研究がやりたいなら素直に物理学科に行った方が楽しいはずだということを話してきた. もちろん人が来てくれた方が嬉しいが, やりたいことが何かを考えてそれをきちんとやった方が精神衛生上もいいだろうから.

圏論における再帰的関数

3 限目はうださんの『圏論における再帰的関数』の話を聞いてきた. まとめはこれ. 始対象とか圏論の基本的な概念を全く把握していないので, その辺は結構つらかったが, プログラミング周りで何か理解のとっかかりは掴める的なところを把握してきた. fold と banana が同じものと聞いたのが一番の収穫だったと思う. つどい, 何故か圏の話多い印象を受けるので, もうちょっと勉強したい. 参考文献の本を買おうと思ったが 16,000 とかハイパー高いので泣いた.



何か普通の数学の圏の本を読もう.

懇親会とそのあと

コミュ力低いのであまり色々な人と話せなかった. 2 日目は参加しないというのを後で知った一ノ瀬さんとはもう少し話しておくべきだったと反省している. 講演中に受けたもの含め, いくつか質問も頂いたのだがあまりまともに答えられなかったのも猛省している. あと, 実際に企業で数値解析している方ともお話したのだが, やはり話に力がある. 専門でもなければ実際に数値計算したこともないので, そういう人間の話にはどうしても限界があるというのを思い知った. 次回話をしたらどうかと勧めてきた.

夜, こう講演について色々と反省したし早めに反省点をまとめておかないと忘れてしまう, と思いつつ早く寝ないと明日がつらいというので無理矢理寝たが, 0 時頃に起きたあとに反省をやってしまい, 2 時間くらい寝られなくなったのでつらい.

食パンの耳 『作用素環論入門』

2 日目 1 つ目はパン耳パイセンのやつを聞きに行った. まがりなりにも作用素環専攻だったのに何も知らないのもまずいな, と思っていたので. 「入門詐欺だ」という話が Twitter で出ていたが, ぎりぎりまで配慮はできていたと思っている. AF 環だったし, 「1-2 年でも雰囲気が掴めるように」と思うと本質的にこのくらいのところしかやりようもない気はする. (本質的に) 行列環くらいでもかなり凄まじい話が展開できるということは分かるだろうし, 学部 1 年で学ぶ線型代数だがなめてはいけないということくらいはきちんと伝わっているだろうと思いたい. 幾何でも出てくる (はずの) \(K\) 群とか Grothendieck 構成とか, 出てきたキーワードも覚えておいて損はない.

ちなみにこれの裏番組で 関真一朗さんの『290定理』 というのがあったのだが, これが評判よかったので是非聞いてみたかった. 実際どちらに行こうか迷っていた. 後で PDF とか読んでも講演者の語り口や雰囲気というのは完全に再現できるものではないので, かなり残念. 休憩時間に少し話を聞いたのだが, とても面白い話をする人だったので, 余計に残念感が高まる. 証明もかなり泥臭く楽しい感じだったらしい. 楽しそう.

なゆた『有限オートマトンの基礎』

2 つ目は『有限オートマトンの基礎』の話を聞いてきた. この間川添愛さんの『白と黒のとびら オートマトンと形式言語をめぐる冒険』というのを読んだのだが, かなり面白かった. その抽象版に触れてみようということで聞いてみた.



正規表現との関係やらプログラミングとの関連が楽しい. その辺結構好きらしいということに気付いた.

eno『カウンターパーティ・リスクとCVA』

最後の話は eno さんの話を聞いてきた. 金融工学とかその辺の話. 一番心に殘ったのは数値計算に関する時間感覚の話だった. 1 分どころか 1 秒すら問題になる状況で, 計算が終わるのに数分かかるのはもはや死刑宣告に等しいとのことで, 実務に携わる人の言葉の重みを感じる. 数学を使う実務経験などは全くないので, その辺の味, 私には出せない.

次回何を話そうかというところを早速考えている. 一応, ニコニコで動画にもしたページランクの話を考えてはいる. 今回横田さんがグラフ理論の話をしていて一応その周りだし, これで使う Perron-Frobenius の物理への応用もある. 90 分講演にして最後, Hubbard の話につなげるという線で物理まで絡める線も検討している. あと, これまた関西だがぶつりがく徒のつどいでも何か話してみたい. DVD とかでこの交通費・宿泊費くらいは軽く賄えるようにしていきたい.

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