相転移現象は実に多岐にわたっており, 殆どの研究者に はそれぞれになじみのある相転移現象があるであろう. 相転移を平衡現象として捕らえるのは理解の第一歩であり, その先に多くの非平衡効果がある。 二次転移点近くのダイナミクス研究はその流れの初めの一歩である.私でいうと強磁性が馴染み深いというか, ほぼそれしか知らない. それですら物理としては怪しいところばかりで悲しい.
一見して平衡に見えるがそうではなく, ガラス状態や構造相転移の中間状態のように準安定性が本質の物質状態もある. また高分子・液晶・ゲルなどのソフトマターは, その柔構造・多層構造のため, 多彩な非線形非平衡効果を示す. 濡れ現象や界面運動に着目した斬新な本もある.学部の頃の固体物理か何かだと思ったが, ガラスがかなり難しい対象だと聞いてびっくりした覚えがある. あと濡れ転移だとか界面の話は東大数理の舟木先生が数学として研究していたような気がする. 読んだことないが, 多分これ.
これら潜熱の関与する現象はありきたりだが, 物理として理解するのは実は至難である. それには熱流下での液体・気体界面における一次相転移を正しく理解しないといけない. ここに相転移物理学と流体力学の融合された基本問題がある.やたら格好いい. 1-2 ページにかけて van del Waals や Korteweg の仕事が紹介されているが, Korteweg は Korteweg-de Vries (ソリトン) で有名な Korteweg とのこと.
通常の自由エネルギーを用いる理論では一様な温度を想定するが, 温度が非一様な場合の相転移はどの様に記述できるかは自明でない.非平衡は全然知らないので, そもそも非平衡での自由エネルギーとは何者か, 考える意味があるのか, 平衡状態で果たすような重要性は変わらずあるのか, というところが気になる. すぐ下でエントロピーも出てくるが, この辺, 非平衡でどこまで意味を持つのだろう.
潜熱流は熱伝導に比べ圧倒的に熱移送効率がよいのがわかる. ガスに僅かに液体を封入するだけで効率よく作動するヒートパイプの原理が納得されるであろう.ヒートパイプ なるものを初めて知る夏.
大分飛ぶが次のような記述があった.
身近で体験する現象ですら非線形非平衡効果に満ちており実はよく理解できなていない 3,6). 熱力学で論じられる現象 (例えば断熱変化・カルノー過程) は公理的な記述がされるが 実際の物理過程は複雑で誰も理解していない側面もある.こういうの凄い好き. 現象自体は良く知られているが, きちんと考えると理屈が全く分からないとか最高に楽しい.
非平衡相転移については何も分からなかったが, 非平衡の熱力学・統計力学はやばい, ということだけ了解した.
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