2013年2月11日月曜日

色々な解析学


先日, 数学専攻で解析系に進もうとしている学部 3 年生に会ったのだが, そのときに少し話したことをまとめておこう. 何か色々あって指数定理に関する話として擬微分作用素の本を読んでいるとのことだった. 勉強ということに制限していうなら, full general なところからではなくもっと簡単な多様体上の楕円型作用素, とくにラプラシアンからやればいいのでは, というところから始まったのだが, 専門との関係で何をしようかという話にもなったのでその辺について知っている限りのことを話してきた. 適当な連想ゲーム感覚で適当に話した. もっとこんなのもある, という話もあるだろうが, とりあえず私が知っている範囲ということで.

まず擬微分作用素自体だが, 関数解析的な方からのアプローチもあるが代数解析的なアプローチもある. 指数定理の話が出たが, このラインで Atiyah が K-theory の方で von Neumann 環レベルで議論していることもあり, その辺から作用素環と作用素環的 K 理論も紹介した. ごく最近だとどうなのかは知らないが, Blackadar の有名な本がある.


そうなるとそもそも作用素環自体が解析学として浮上してくる. 非可換幾何や葉層構造, 結び目など幾何への応用は他にもある. 量子統計や場の量子論など物理との関係もあるし, むしろ私がこの辺にいる.

物理との関係ということでは色々あるが, まずは作用素論を出した. 量子力学方面でスペクトル解析などがある. 他にも有界線型作用素に関して正規作用素周辺の話でまだまだ研究がされている.

作用素不等式という話題もある. これは行列レベルでも難しい話がある. 物理関係の話もあるが, 数学的にも大事なところがある. 実は竹崎先生にも言われたことがあるのだが, 作用素環で難しい部分というのは無限次元性と非可換性に関する部分があり, 非可換性に関することは有限次元で既に難しい. 2×2 行列くらいだと特殊すぎるが, 3×3 行列で起きる現象はかなり大事だというご指摘を頂いたことがあることをここでお伝えしておきたい. また東北大にいる日合先生は確か作用素環にもこうした作用素論, 特に有限次元行列の話題は重要だと強調されていた記憶がある. 最近行列解析の本も出た. まだ読んでいないが, 売り切れになる前に購入しておいた.

 

有限次元の行列という素朴な対象であってもまだまだ研究することはたくさんある. 遊びやすかろうと思うので, ちょっと調べてみたい.

量子力学ということならそもそも Schrodinger 方程式という偏微分方程式の話題がある. Schrodinger の偏微分方程式と作用素論で同じ対象を扱う部分があるが, 大分気分が違う印象がある. 偏微分方程式の人達はやはり解に興味がある印象がある. 物理方面の作用素論の人は解よりもスペクトル (その他作用素そのものが持つ情報) に興味がある印象. 自分の趣味に合わせてやればいいのだが, 同じ対象でも切り口が違うことは一応伝えておいた.

詳しくないのだが, 偏微分方程式, 作用素論ともに超局所解析を使ったりすることもあるようだ. (おそらく) 作用素論の色彩が強い方では田村先生がそんなことをしているらしい. 超局所解析というと代数解析の話題もある.

あともちろん (n 上の) 偏微分方程式論もある. 楕円型なり放物型なり双曲型なり色々ある. 関係ないが, 高校の頃勉強していたシグマベストという参考書で勉強していたが, その編集の藤田宏先生がいるが, 物理学科卒と書いてあったので, 当時, なぜ物理の人が数学の本を書いているのだろうと思っていたが, 学部 4 年だか院くらいで数学者として高名で, 私の専門の方で超がつく程有名な加藤敏夫先生の学生だったことを知り, 色々な感慨を覚えた. 微分方程式は専門外なので不確かだが, 放物型の方程式で Fujita's critical exponent という大事な話があるとか聞いている.

複素領域の常微分方程式もまだまだ研究がある. 例えば東大の大島先生はやっていたような覚えがある. 確定型特異点やらモノドロミーやらでまだまだ汲めども尽きぬ話題がある模様.
多様体上の解析学, 微分方程式論も大事だ. Donaldson の仕事など, トポロジーと関わる部分もある. 実解析, 不等式の研究, 確率論, 確率微分方程式など他にもまだまだある.

他にも話したことがある気がするが, 忘れたので今回はこのくらいにしておく.

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