2014年1月21日火曜日

Can one hear the shape of a drum?

yuki_migo さんをメインの対象とした実解析関係のセミナーの内容を作っているが, その中で関連する数学の紹介として Marc Kac の有名な【Can one hear the shape of a drum?】を出す予定だ. 折角なので原論文をきちんと読んでみようと思い立ち実行に移した方の市民だった. ここに論文が置いてあった のでそこから取った. まずいのではないかと思うのだが大丈夫なのか.
P.3 Of special interest (both to the mathematician and to the musician) are solutions of the form \begin{align} F(\vec{\rho}; t) = U(\vec{\rho}) e^{i \omega t}, \end{align} for, being harmonic in time, they represent the pure tones the membrane is capable of producing.
単音 (と呼んでいいのか?), 音楽にとっても重要というの, 面白かった. 言われてみればそうなのか.
P.3 終わりから P.4 冒頭部で, 有名な「Laplacian のスペクトルから領域の Euclid 幾何的合同性が証明できるか」という問題が提出される. 元々 10 年程度前に Bochner が言い出した問題らしい. そして Bers が次のように言ったという.
"You mean, if you had perfect pitch could you find the shape of a drum."
Laplacian のスペクトルに領域の情報が埋まっているというの, 応用上 (?) はそれなりに分かる話と言ってもいいのかもしれないが, 数学的には結構衝撃的な印象ある: 少なくとも初めて聞いたときの私には. そして今でも新鮮な驚きがある.
P.4 で Milnor の結果, 「Laplacian が全く同じ固有値を持つにも関わらず合同でない 2 つの 6 次元トーラスの構成」を引用している. Milnor も無茶やるな, という感覚がある.
P.4 Section 4 で物理学者 Lorentz の講演からの引用がある. 要は黒体輻射の話だが, 今まで黒体輻射とスペクトル幾何を結びつけて考えたことがなかった. 専門に限りなく近いにも関わらず. ちなみに Lorentz が提出したこの問題はその場にいた Hermann Weyl (もちろんあの有名なワイル) が, その少し前に Hilbert が作りあげた積分方程式の理論を使って解いたらしい.
そのあと, 統計力学というか確率論というか, その辺の定式化を使った議論をはじめ, 直観的な結論を出す. このあたり, 確率論の人なのだなという感じある.
P.8 Section 6 では次のように語っている.
It would seem that the physical intuition ought not only provide the mathematician with interesting and challenging conjectures, but also show him the way toward a proof and toward possible generalizations.
P.14 で Brown 運動が出てきた. 確率っぽい話になるのか. 確率論を使って wild な境界でも議論でき, 一般化された解の自然な定義ができるという話だった.
何かもっと確率っぽい話をするのかと思ったらそうでもなかったが, 確率の人から見るとどうなのだろう. 確率論, それなりに漸近解析を使うイメージがあり, 漸近解析が議論の基本だったから, その意味では確率論で培った技術を全面的に使っていると言えるのかもしれない. ただし確率論には詳しくないのでこの見方が正しいのか不明.
幾何と解析が密接に結び付いていること, 特に個人的には作用素/スペクトルの解析をしているというのがとてもとても楽しい. ふんわり雰囲気を楽しむ感じの論文 (元が講義録のようだ) ということもあり, そんなに堅苦しくもなく, 物理と数学の相互作用的なところも強調されていて, 学部低学年で解析/幾何に興味がある向きはちょうどよく刺激を受けられる内容だという印象. こういうのを私もやらなくてはいけない. これをネタにしてセミナーするのもいいかもしれない. 検討しよう.

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