Lebesgue 積分というか関数解析全体として, はじめは Kolmogorov-Fomin を読んでいた. 安かったし, 洋書を読んでみたいというのがあったからだ. 詳しいことは覚えていないし, 他にも吉田耕作の Functional Analysis を読んで挫折したり色々な経緯を辿りながら, 結局一番きちんと読んだのは伊藤清三の本だった.
今になって思うとかなり間抜けな感じもあるが, この本を読んでいて, Lebesgue 測度以外での議論がどうなるのかよく分からなかった. 測度を取り替えたときどの議論がどう変わるのか, 本のメインの部分はきちんと使えるのかというのが分からなかった. こう書いてしまうと当時の自分の疑問をきちんと表現できていないので, 色々アレだが, 色々な測度に変えたときにどうなるのかという部分で色々ともにょっていたのは間違いない. そこで色々な測度を持ち出して議論するということなので丁度いいかと思って, 確率の本を読んでみた. これだ.
(確率の本として) いい本なのかどうかは今でもよく分からないが, かなりすっきりした本であることは間違いない. 確率への応用が主眼なので, 位相と測度みたいな話はほとんどない. 単調収束定理に主眼を置いた積分論の構成・展開はなかなかいい. 正直なところ, この本を読んでみても結局のところ当時は疑問が解消されなかった. 実際に使いつつ慣れていくことで, いつの間にか疑問は解消されていた, という感じ. 解消された疑問について分からなかった当時のことを思い出すのはなかなか難しい. そもそも疑問自体を曖昧で感覚的なレベルに留めていて, はっきりとさせていなかったことが拍車をかける. 何がいいたいのかよく分からなくなってくるが, 要は分からなくてもずっとやっていると自然と疑問が解消されることがあるので, 「この辺が何かよく分からない」というレベルでもいいから, 分からないことがあるということだけきちんと意識して先に進んでしまうことも大事, というようなことがいいたい.
最後だが, 伊藤清三の本はとてもよい. Amazon の書評では古臭いとか書かれているが, その部分がよいのだ. 昭和の古い教官が「まあそんなあくせくせずに, お茶でも飲みながらのんびりやってみたらどうですか. ところで Lebesgue 積分にはこんな素敵な話があるのですよ. 焦って急ぐことはない. ゆったりやろうじゃありませんか」みたいな感じがある. また議論自体は非常に丁寧で, これで Lebesgue 積分が分からないなら多分何を読んでも駄目なのではないか感ある. 問題はある意味でその丁寧さで, 上に書いたのんびり部分だ. そのせいで本題の Lebesgue 積分の定義に辿り着くまでが長い. ただ, 川又先生の代数多様体論も, 代数多様体の定義に辿り着くまでに 60 ページくらいかかっていた覚えがあるので, ある程度になると定義するだけでも大変になるのも仕方がないのだが.
ただ, 測度と位相の絡みなど, 古典的な数学の綺麗なよくできた部分が書かれているのが, 正に Lebesgue 積分の定義までが長くなる原因で, そして私が思うよいところになる. 私としてはこの辺の話が好きなので, のんびりやってほしいと思うのだが, 昨今の風潮を見ると数学でまで効率を求める雰囲気があるようだ. 確かに無駄に非効率な勉強をさせるのは最悪でそれは断固として反対したいが, ここでの「非効率」はむしろそれが美点となるのだ. 逆に最近の本だとあまり触れられていない印象があるので, 余計にそう思う. 数学科の学生くらいはもっとのんびり数学やってほしい.
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