2013年3月30日土曜日

Hilbert 空間から始めるよく分からない数学 3 無限次元 Hilbert 空間の例


前回は Hilbert 空間の定義をした.
具体例として $\mathbb{R}^d$ や $\mathbb{C}^d$ があるという話をしたが,
(工学的) 応用上, 無限次元の空間がどうしてもほしい.
次元の定義や実際にそれに則っているかは今はやらない.
次回, 実際どういうところに出てくるかを説明するので, もう少しだけ辛抱してほしい.
先に言葉だけ出しておくと, Legendre 多項式や Laguarre 多項式といった直交多項式, Fourier 解析で出てくる.

早速例を出そう.
2 つ覚えておけばよくて, 普通それで事足りる.

例 1: 数列空間 $\ell^2$.


これはほぼ直接的な無限次元化といっていい.
$f = (f(n))$, $g = (g(n)) \in \ell^2$ とする.
$f(n)$ は $f_n$ と書くと数列っぽくなるが, 次のことを考えて敢えてこう書いた.
和は $n$ 番目同士を足すことで定義する.
普通のベクトルと同じだ.
内積も有限次元と同じ:ただ和を無限級数にすればいい.
一応書いておこう.
\begin{align}
 \langle f, g \rangle
 :=
 \sum_{n=0}^{\infty} \overline{f(n)} g(n).
\end{align}

最後になったが無限級数が収束しないと鬱陶しいので,
収束するための条件として $\ell^2$ の元は全てノルムが有限だとする.
つまり次が成り立つ.
\begin{align}
 \Vert f \Vert
 :=
 \sqrt{\langle f, f \rangle}
 =
 \sqrt{\sum_{n=0}^{\infty} |f(n)|^2} < \infty.
\end{align}

このとき内積も絶対収束する.
それは Cauchy-Schwarz の不等式から分かる.
色々な意味で大事なので, Cauchy-Schwarz は次回証明までつけよう.

次の例を出そう.

例 2: Lebesgue の意味で 2 乗可積分な関数全体.


あとで実際に使うので, $\Omega \subset \mathbb{R}^d$ としておこう.
開集合くらいにした方がいいのだが, うるさいことはひとまずおいておく.
数列では添字を有限から無限に変えたわけだが,
こちらは離散的にぽつぽつと足していたので連続的にべったり足したと思えばいい.

内積もきちんと書いておこう.
\begin{align}
 \langle f, g \rangle
 :=
 \int_{\Omega} \overline{f(x)} g(x) \, dx.
\end{align}

こちらも $\ell^2$ と同じように積分の収束性は仮定する.

最後に, 念の為 $L^2$ を考えることに物理的な意味があることも言っておこう.
量子力学でもいいし一般に振動, 波動などでもいいが,
適当な関数の (微分の) 2 乗の積分にはエネルギーという意味がある.
物理としては, $L^2$ の中で議論しようというのはエネルギーが有限な関数だけ考えよう,
というメッセージと思える.
量子力学では波動関数の 2 乗には確率という意味をつけている.
この辺の物理については説明しない.
適当に物理を勉強してほしい.

次回は Cauchy-Schwarz の不等式を証明しよう.

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