自己紹介のところにも書いているように,最近代数解析を勉強している. その一環として,今回奮発して「佐藤幹夫の数学」を買って読んだ.
ちなみに概要をさらっと頭に入れようと思い,ぱらぱらと眺めている文献は 佐藤幹夫自身による Theory of Hyperfunctions, I, Theory of Hyperfunctions, IIと小松彦三郎による佐藤超函数論入門 だ. あと楔の刃の定理の代数解析的な見方に興味があったので「佐藤超関数入門」を買ったのだが 「代数解析学の基礎」にすれば良かったかとやや後悔している.
内容を大雑把に言うと, 正に部別の通りで, 佐藤幹夫の半生を語る第 1 部, 佐藤幹夫の数学を語る第 2 部, 他者が語る佐藤幹夫の数学の第 3 部に別れる.
第 2-3 部は佐藤-Tate 予想で有名で数論や概均質ベクトル空間の話もあるが, やはりメインは代数解析の話だ. 私が興味があるのが代数解析なので, そこに集中して話をしたい. 興味があるのは佐藤超関数の定義それ自体だったのだが, それ以外にも「本地垂迹」として 解説がある微分方程式の表現論的考察が面白かった. 私自身の興味があるところは後で書くとして, 本の内容についてもう少し詳しく触れたい.
本を読んでいて, 佐藤幹夫は究極的には関数が好きなのだろうという印象を受けた. どういうことかというと, 超関数自体が関数として自然な形で導入したいという強烈なモチベーションがあること, さらに特殊関数の特徴付けで有名なように, 微分方程式は関数の特徴付けとして重要視している, という感じだった.D 加群の話にしても解を自然に特徴付けるための手法という感じの説明がされていたという印象がある.
D 加群に関連した話として本地垂迹が出ていたのだが, これが面白かった. 微分作用素の表現論といった趣がある. 表現論への応用があるし, 実際そうなのだろう. まだあまり良く分かっていないのだが. 私の研究では作用素環の表現論が決定的に重要だし, それが元で表現論も好きなのでなかなか楽しい.
また Schwartz の超関数 (distribution) だと「微分のことも積分でやろう」という感じだったので, 佐藤超関数でも同じ感じだと勝手に思っていたのだが, どうやら違うらしい. 該当箇所が見つけられないのだが「昔は微分が簡単で積分が簡単だと言っていたが, Lebesgue 積分以降は 積分は簡単だが微分は難しいとなっていておかしい」みたいな一文があった. 佐藤超関数の文脈で超関数の積分があるが, これは超関数微分方程式を考えて, その解を不定積分と呼んでいる. 興味がある向きは Theory of Hyperfunctions, I の P148 を見てほしい. 正則な関数だと Cauchy の積分定理なり Morela の定理なりで微分可能性と積分可能性が大体同じ感じになる. これもどこに書いてあったか見つけられないのだが, それを上手く使えば (実関数の?) 積分可能性がどうの, というあたりの事情も簡単になるしその方が嬉しい, という記述があったはずだ.
Diagram chasing による議論を見ていて面白かったので, ホモロジー代数の動画を作ると楽しいのでは, と思ったのでその兼ね合いから (ホモロジー) 代数を勉強したくなり, それで改めて勉強していて, 自分は結構代数が好きだということが分かりつつある. それでホモロジー代数の応用としてやはり解析方面から何かあるとより楽しくなりそうなので 代数解析, と単純に思ったということもあるが, もう一つ目的がある.
研究の方で場の量子論での超関数という大テーマがあるのだが, 関数解析的というか, distribution 方面からの超関数という方向で作用素環とその表現論を使った処理をしている. これを確率論 (経路積分) を使って見てみるというのは標準的な別アプローチでそちらも検討しているが, 一方で代数解析的なアプローチは全くないのが現状だ. Curved spacetime 上での相対論的場の量子論でスペクトル条件の代替に超局所解析を使うという議論があり, 代数解析的な話があるので, 非相対論の方でも何か使えないかと思って, そこを少し調べてみたいというのがある. 今のところその方向では話を持ち上げづらそうな感じだが, プロの研究者というわけでもないし のんびりやろうと思っている.
ちなみに作用素環による「場の量子論での超関数」というのは汎関数を上手く使った収束の議論を指している. 手法自体は構成的場の量子論で確立しているが, これを「超関数」と呼んでいる人はみかけない. 何をやっているか分野外の人に伝えるのに便利だから作った, 私独自の呼び方なので, 他の人にいっても通じないので注意されたい.
別件だが, 代数解析は代数的な, 等号の話というか厳密解というか, そんな感じの話が得意なようなので, それを使ってハミルトニアンの固有値の詳細な解析とかできたら嬉しいのだが, そのへんはどうだろうか, とも思っている. 物質の安定性での基底エネルギーの評価だとかに使いたい. 一応, Schrodinger については河合先生の特異摂動の研究があるので全く関係ないということもないはずではある. ただ, 物質の安定性で出てくるハミルトニアンは Coulomb ポテンシャルが出てきて, これが有理型ですらないので, 使うのは難しいのだろうかとも思う.
私の興味ある部分に使える数学は, 微分作用素の解析学としては作用素論が, ある程度代数らしい話があるとすればむしろ作用素環になりそうだ. 研究の方でも何か面白い展開あれば嬉しい, と思いつつ代数解析を学んでいる.
ちなみに概要をさらっと頭に入れようと思い,ぱらぱらと眺めている文献は 佐藤幹夫自身による Theory of Hyperfunctions, I, Theory of Hyperfunctions, IIと小松彦三郎による佐藤超函数論入門 だ. あと楔の刃の定理の代数解析的な見方に興味があったので「佐藤超関数入門」を買ったのだが 「代数解析学の基礎」にすれば良かったかとやや後悔している.
内容を大雑把に言うと, 正に部別の通りで, 佐藤幹夫の半生を語る第 1 部, 佐藤幹夫の数学を語る第 2 部, 他者が語る佐藤幹夫の数学の第 3 部に別れる.
第 2-3 部は佐藤-Tate 予想で有名で数論や概均質ベクトル空間の話もあるが, やはりメインは代数解析の話だ. 私が興味があるのが代数解析なので, そこに集中して話をしたい. 興味があるのは佐藤超関数の定義それ自体だったのだが, それ以外にも「本地垂迹」として 解説がある微分方程式の表現論的考察が面白かった. 私自身の興味があるところは後で書くとして, 本の内容についてもう少し詳しく触れたい.
本を読んでいて, 佐藤幹夫は究極的には関数が好きなのだろうという印象を受けた. どういうことかというと, 超関数自体が関数として自然な形で導入したいという強烈なモチベーションがあること, さらに特殊関数の特徴付けで有名なように, 微分方程式は関数の特徴付けとして重要視している, という感じだった.
D
また Schwartz の超関数 (distribution) だと「微分のことも積分でやろう」という感じだったので, 佐藤超関数でも同じ感じだと勝手に思っていたのだが, どうやら違うらしい. 該当箇所が見つけられないのだが「昔は微分が簡単で積分が簡単だと言っていたが, Lebesgue 積分以降は 積分は簡単だが微分は難しいとなっていておかしい」みたいな一文があった. 佐藤超関数の文脈で超関数の積分があるが, これは超関数微分方程式を考えて, その解を不定積分と呼んでいる. 興味がある向きは Theory of Hyperfunctions, I の P148 を見てほしい. 正則な関数だと Cauchy の積分定理なり Morela の定理なりで微分可能性と積分可能性が大体同じ感じになる. これもどこに書いてあったか見つけられないのだが, それを上手く使えば (実関数の?) 積分可能性がどうの, というあたりの事情も簡単になるしその方が嬉しい, という記述があったはずだ.
Diagram chasing による議論を見ていて面白かったので, ホモロジー代数の動画を作ると楽しいのでは, と思ったのでその兼ね合いから (ホモロジー) 代数を勉強したくなり, それで改めて勉強していて, 自分は結構代数が好きだということが分かりつつある. それでホモロジー代数の応用としてやはり解析方面から何かあるとより楽しくなりそうなので 代数解析, と単純に思ったということもあるが, もう一つ目的がある.
研究の方で場の量子論での超関数という大テーマがあるのだが, 関数解析的というか, distribution 方面からの超関数という方向で作用素環とその表現論を使った処理をしている. これを確率論 (経路積分) を使って見てみるというのは標準的な別アプローチでそちらも検討しているが, 一方で代数解析的なアプローチは全くないのが現状だ. Curved spacetime 上での相対論的場の量子論でスペクトル条件の代替に超局所解析を使うという議論があり, 代数解析的な話があるので, 非相対論の方でも何か使えないかと思って, そこを少し調べてみたいというのがある. 今のところその方向では話を持ち上げづらそうな感じだが, プロの研究者というわけでもないし のんびりやろうと思っている.
ちなみに作用素環による「場の量子論での超関数」というのは汎関数を上手く使った収束の議論を指している. 手法自体は構成的場の量子論で確立しているが, これを「超関数」と呼んでいる人はみかけない. 何をやっているか分野外の人に伝えるのに便利だから作った, 私独自の呼び方なので, 他の人にいっても通じないので注意されたい.
別件だが, 代数解析は代数的な, 等号の話というか厳密解というか, そんな感じの話が得意なようなので, それを使ってハミルトニアンの固有値の詳細な解析とかできたら嬉しいのだが, そのへんはどうだろうか, とも思っている. 物質の安定性での基底エネルギーの評価だとかに使いたい. 一応, Schrodinger については河合先生の特異摂動の研究があるので全く関係ないということもないはずではある. ただ, 物質の安定性で出てくるハミルトニアンは Coulomb ポテンシャルが出てきて, これが有理型ですらないので, 使うのは難しいのだろうかとも思う.
私の興味ある部分に使える数学は, 微分作用素の解析学としては作用素論が, ある程度代数らしい話があるとすればむしろ作用素環になりそうだ. 研究の方でも何か面白い展開あれば嬉しい, と思いつつ代数解析を学んでいる.
Date: 2013-02-01 09:47:49 JST
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