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2014年1月13日月曜日

代数解析と S-行列とか何とかと柏原-河合の Feynman 積分に関する PDF: Paul と kyon_math さんの対話から

Navier-Stokes 関係の話から kyon_math さんと Paul が何か話をしていたので.
しかも最近の問題や予想は 100 年以上長生きするものはほとんどない. リーマン予想は 160 年くらい, 双子素数やゴールドバッハ予想は 250 年くらいか. ヤコビアン予想はどうだろ? リーマン予想さんには, がんばって長生きしてほしいものですね.
@kyon_math https://www.jstage.jst.go.jp/article/sugaku1947/29/3/29\_3\_254/\_pdf なんて, 解けたらけっこうインパクトありますが, しばらく解けそうもないです.
@Paul_Painleve 確かにすごそう: 佐藤氏の夢みる方向で, すなわち, すべての量を古典解析的手法のみによって calcu1able なものにしよう, という方向で, S-行列の解析が完成したとすれば, それは人類の精神史において燦然と輝く金字塔となることは疑いないであろう.
@kyon_math あの頃は, 著者の二人も青臭い中二病にかかっていただけでしょう, ははは.
上記 PDF の話とはあまり関係ないが, 代数解析的に発散の困難とユニタリ非同値問題がどう捉えられるかというのは大分前から気になっていて, 代数解析を勉強しようと思った原動力になっている. 多変数関数論やらコホモロジーという障害があって全く勉強が進んでいないのだが. 最近, 「場の理論の超関数論」とか, 「場の理論の超関数論としての作用素環 (上の状態空間)」とか銘打って研究をしているが, 「場の理論の佐藤超関数」がどうなるのかというのが非常に気になっているので誰かやってほしい.

柏原-河合クラスの人間がもっと massless の方とかにも突っ込んできてほしい. あといいのか悪いのか分からないが, 相対論方面は対称性がかなり強く出てくるおかげで数学的に格好いい話も絡めやすいのだという感じがあるが, 非相対論方面だとなかなかそういう話がない感じもある. だからこそこの辺の人達がリードしてやってほしい感ある. 河合先生も, 1 次元の Schrodinger で WKB とかやってくれるのもいいのだが, 3 次元で Aharonov-Bohm とかもやってみてほしい. もっというなら場の理論に本格的に突っ込んできてほしい.

2013年12月20日金曜日

ymatz さんも参加しているという Science Front に参加して適当に色々質問とかしてきて超楽しかった

ymatz さんも参加しているという Science Front に参加してきたが超楽しかった. ネタは次の 3 つだった.
  1. 「光電子分光法を通して観た"物性物理学"が見据える未来」
  2. 「図形の大域不変量とその局所化ー \(\mathrm{Spin}^c\) 多様体上の Dirac 作用素について」
  3. 「新粒子探索ーヒッグス粒子のその先にー」
光電子分光法の話, あまり光電子分光自体には触れなかったような感じがするが, 超楽しい. やはり何だかんだ言って物性が好きなことを再認識した. 熱電関係の話, ペルティエ効果と言ったと思ったが実際に装置を作ってきていて比較的すぐに効果が分かった. 「ペルティエ効果の実感が湧かないという人向けに昨日秋葉原で買い物してきました」とか言って装置を出してくるの, 超格好いい. あれ見習いたい.

幾何の話, Witten がやばい. タイトルから言っても分かる通り指数定理の話で, 指数を調べるのに Dirac 作用素を直接調べるという協力な方法についての話だった. Confined potential (ベクトル束上の section らしい) をうまく使って情報を potential が 0 のところに局所化して調べるとかいう豪快な方法を紹介していた. 格好よくて興奮した.

素粒子トーク, ヒッグスを実際に使って何かやろうという話だった. 標準模型でも説明できないダークマターなどがあるので, まだまだ未知の粒子があるはずだからそういうところにも Higgs をどんどん使っていこうということだったというように理解している. Higgs, 一旦あるというのは分かったが新規な実験に使っていける程度に扱いやすい粒子なのだろうか, というようなことを今さらながらに思った.

皆, ぎりぎり研究の話にも触れていて, 話を作るの大変だろうなと思う. 自分もまた何かやりたい. DVD もそろそろ第 2 弾作りたいし, 研究もしたい. したいことはたくさんある.
あと, 当日このブログを見ているという数学の人に出会った. 量子力学とか場の理論関係で参考にしているとかいうこと. 役に立っているなら嬉しい限りだ.

数学科内で話していると「物理で出てくる Hilbert 空間は必ず可分なのか」というような話もするらしい. そういえば「可分性とか使わない証明をつけたい」とか言っていた後輩がいたが, なかなかパンチ力ある. そもそも Hilbert 空間自体は可分なところしか触っていないので, 非可分だとどんな面倒事が起きるのかよく知らない. ただ, Hilbert 空間自体は可分でもその上の \(C^*\) 環 (特に CCR algebra, Weyl algebra) は非可分だったりはする. 作用素環だと普通, 基礎となる Hilbert 空間自体には可分性を仮定するので, Hilbert 空間自体を非可分にするととにかく面倒そうでやりたくないという程度の理解しかない.

ちなみに私が知る範囲の相対論を含めた場の理論ですら可分な Hilbert 空間しか出てこないので, 非可分なところ, 魔界というイメージある.

2013年11月26日火曜日

東大の本郷で 12/7 (土) に Science Front なるイベントというか講演会というか何かが数学・物理をテーマとして開かれるらしいので

ymatz さんが Science Front の宣伝をしていたので.
Science Front の講演者 @sin_forest と打ち合わせをしてきた. 12 月 7 日, 現代の数学ってこんな世界なのかー! って体験ができますよ. あとの 2 人は物理の人で, そちらの内容については僕も当日のお楽しみ.https://sites.google.com/site/0to1sciencecommunication/science-front
発表概要を転載しておこう.
発表概要
「光電子分光法を通して観た"物性物理学"が見据える未来」
物質の性質を研究する分野である物性物理学は, 数 10 年~100 年後の応用 (=人類社会への貢献・還元) を念頭に研究を行っています. 実例を挙げると, 1989 年に論文発表された巨大磁気抵抗効果は, 10 年足らずでハードディスク (HDD) の再生ヘッドに実用化され, HDD の容量を飛躍的に増大させました.
現在の人類社会が解決すべき課題の 1 つに, エネルギー問題が挙げられます. 持続可能な社会を実現するためには, 省エネルギー化・クリーンエネルギー源を開発することが急務です. 物性物理学は, そのような革新的なエネルギーシステムを構築可能な材料・物質を探求することを目標とし, 熱電材料, 室温超伝導物質, スピントロニクスデバイス材料, 太陽電池などの開発・研究が日進月歩で進められています.
本発表では, 光電子分光法を主な実験手法とする登壇者の立場・研究内容から観た, 物性物理学が見え据える"未来"と"現状"について簡単に話そうと考えています. 未来を変えるかもしれない物質を"実際に手に取って実験できる"という物性実験の魅力を, 少しでもお伝えできれば, と思います. 
「図形の大域不変量とその局所化ー Spinc 多様体上の Dirac 作用素について」
図形 (空間) について研究する一つの方法に, その大域的な位相不変量を計算する, という方法があります. 例えば球面の上に三角形を書いてその表面を埋め尽くしたとき, その (頂点の数)-(辺の数) + (面の数) という数を計算すると, その数は必ず 2 になります. この数は Euler 数と呼ばれる不変量の一種で, 球面を曲げたり潰したりしてもその値が変わらないことから, 位相 (トポロジー的な) 不変量と呼ばれています.
1960 年代に指数定理と呼ばれる大定理が証明されました. これは図形の上のある種の微分作用素から定まる数と, 上のようにトポロジー的に定まる数が一致する, というもので, Euler 数のような位相不変量の研究に (図形の研究に) 解析的な手法が有用であることがはっきりと示されました.
私は図形の上のある種の微分作用素を図形の一部に局所化する手法について研究しています. これによって図形の大域的な不変量の情報がその一部の情報に局所化されるため, 不変量の研究に新たな道が開かれることが期待されます. 今回は図形の不変量の研究について, 古典的な話題から現在行われている様々な研究まで, 私自身の研究も含めてお話しできればと考えています. 
「新粒子探索ーヒッグス粒子のその先にー」
最近「ヒッグス粒子発見」「ノーベル章はヒッグス粒子」というニュースで話題になった「ヒッグス粒子」.
ヒッグス粒子とは, 物質の最小単位であると考えられている「素粒子」のうちの一つで, ヨーロッパで行われている LHC 実験で発見されました. では, そのヒッグス粒子はどのようにして発見されたのでしょうか? またヒッグス粒子を発見したら素粒子物理学は終わりでしょうか?
LHC 実験では陽子と陽子を加速して衝突させ, 衝突後に出てくる素粒子の種類やエネルギーを見ています. これにより, ヒッグス粒子が生成されたのか, 未知の粒子が生成されたのかなどを調べています.
また, ヒッグス粒子の発見で素粒子物理学の全てがわかった事にはなりません. 理論的な研究から, 未だ発見されていない「新粒子」が予言されています. LHC 実験では更なる新粒子の発見に向けた実験と, 多くの理論的な研究が行われています. 新粒子を発見するには闇雲に探すだけではダメで, 多くのゴミとなるような事象から, 新粒子に値する事象を選び抜かなければいけません.
これらの「新粒子探索」という素粒子物理学の最先端について, 理論的側面から最新の結果を交えつつお話したいと思います.
物理としては物性理論専攻に相当する研究をしているが, 上記のような殊勝なことなど一度も考えたことがない方の市民だった. 面白そうだし時間があったら行ってみよう.

2013年11月21日木曜日

場の量子論と解析数論: p進大好きbotからの質問に答える方の市民

我らが p 進大好き bot から質問を受けた方の市民だ. 私は Fock 空間上, 非相対論的場の量子論や量子統計をやっているので物理として相対論が絡む話はあまりよく知らないし, 数論方面もさっぱりなのだが, 多少知っていることはあるのでまとめてみた.
@phasetr なるほど. ボゾンとフェルミオンに対応する Fock 空間の有界作用素のスペクトルに強い離散性を課しているのは量子論からくる妥当な制約なのでしょうか? 固有値の整列性から総和的概念と相性がよくなって数論につながっているように見えるので少しその仮定の意味が気になりました.
まず強い離散性 (トレースクラスの仮定) だが, 物理的には不十分なことこの上ない. 「物理はともかく (今の数学の水準で) 数学的に面白い話ができるのはこの場合」という割り切りと思ってもいい. 物理としてスペクトルが離散的になるのは 2 つの場合がある.
  1. \(\mathbb{R}^d\) 上, 調和振動子などの特別な場合 (confined system).
  2. 有界領域上での Hamiltonian.
前者だが, 調和振動子など大事な系はあるものの物理としては本当に特殊な場合だ. 場の理論でも調和振動子が一番の基本だし, 調和振動子は決定的に重要な系ではあるけれども. 若山先生の非可換調和振動子など, 「調和振動子」は数学的に数論との関係がかなり深いようなので面白い. ただし, 物理的には散乱がないという決定的な欠点がある. すごく大雑把にいって, 散乱は Hamiltonian の連続スペクトルの部分に対応する. 非破壊検査など散乱を基礎にした応用はたくさんあるし, ミクロな系, 特に素粒子を実験で見るときは散乱で見るため, 散乱がないのは物理としては困ると言ってもいい.

ちなみに調和振動子のように (原点から) 距離が離れるとポテンシャルが大きくなる (ので粒子があまり遠くに行かない) 系を confined system と言う. 数学的な一般論として, 「Laplacian + 最高次が偶数の多項式ポテンシャルが入った Hamiltonian」のスペクトルは離散的になる. (新井先生の『量子現象の数理』にも証明がある. ) Confined system を「Hamiltonian のレゾルベントがコンパクト作用素になる」と定義している文献もある.



後者だが, 証明や条件を忘れたものの, 有限系ならそれなりに一般的に言えたはずだ. コンパクトな Riemann 多様体の Laplacian は離散的という一般論があるが, 大体そういう感じ. もちろん, 一般には Laplacian に適当な摂動を入れるので離散性が保たれるかは自明ではないが, 頑張るとそれなりに一般に言える. 量子統計や場の理論でも, いったん有界系でトレースを使いながら理論を作っておいて, 最後に物理として標準的な \(\mathbb{R}^d\) への極限 (熱力学的極限) を取る, ということをする.

後者についてはもう 1 つ決定的な事実がある. 前者とも関係するが, 一般に無限系の Hamiltonian には連続スペクトルがあるのでトレースは取れない. 物理だと平衡状態は \(\mathrm{Tr} (A e^{- \beta H}) / \mathrm{Tr} (e^{- \beta H})\) で定義するが, これは無限系では意味をもたない. つまり数理物理としては無限系の平衡状態を定義するところから始める必要があるが, これがなかなか大変だった. ここをきちんと議論するために Haag-Hugenholtz-Winninkの有名な仕事 が出たのであって, 量子統計の数理物理に対する冨田-竹崎理論の重要性が出てくる. 冨田-竹崎理論というか平衡状態周りでも 数論における相転移とかいう Bost-Connes の結果 があるので, それはそれで数論的にも大事なようだが, こちらは難しくて読めなかった. p 新大好き bot はセミナーで読んだらしいので, 興味がある向きは p 進大好き bot に聞こう.

もう一個.
@phasetr ついでに 4 章で \(L_S\) と \(Q_{S,+}\) に対する指数定理のようなものが示されているのも興味深く感じました. フレドホルム作用素 \(S\) に対して \(L_S\) や \(Q_{S,+}\) (そして \(d_S\)) に何らかの物理的意味付けがあるのでしょうか?
こちらについてはあまり知らない. \(L_S\) は (自由場の) 超対称的 Hamiltonian, \(Q_{S,+}\) は超対称荷 \(Q_S\) の分解ということくらいは知っているが, この辺の物理自体には詳しくない. 超対称荷自体何なのかあまりよく分かっていないが, 「荷」とつくのは大体保存量であって, 物理的には普通とても大事な量に対してその名前をつける. だから大事なのだろう, くらいにしか分からない. \(d_S\) については, Proposition 4.1-4.2 にあるように「ボソンを消してフェルミオンを作る」というそのままの意味があるが, これ以上の詳しいことは知らない. 超対称性はボソンとフェルミオンの対称性なので, 正に超対称性を司る作用素が \(d_S\) という話ではある. それが幾何学的にも大切な外微分になっているというのは確かに面白い.

これ とか これ とか これ とか これ とか, 量子力学のレベルでは超対称性と指数定理というのは大きなテーマになっている. その場の理論版としてこの辺の話があり, さらに数論的な要素すら持っていたという感じなのだと思っている. 量子力学での話からすれば多様体上で何か議論したいところだが, 無限次元多様体の議論をいきなりやるのはつらいので, まっすぐなところで下調べしよう, というのが新井先生のこの辺の研究の動機の 1 つでもある. 『Fock 空間と量子場 上』の 6 章のまとめのところにその辺の話が書いてある.



物理としてはむしろ, この辺の兼ね合いから超対称的な理論が数学として幾何学的な拘束を受ける (はずな) ので, 数学 (幾何学) 的に意味が明快なところから逆に物理を見つけていくときの指針として使うのだろう. とくに素粒子では数学的な制約からあるべき物理 (モデル) をしぼっていくというのはよくある. 例えば「理論は Lorenz 対称性を持たねばならない」とか「繰り込み可能でなければならない」とか「漸近的自由でなければならない」とか. 素粒子物理として数学的指針は決定的に重要らしいのだが, 数学的にはそこを逆に使って物理的な洞察から衝撃的な数学的関係を見つけてくるのが楽しいということで色々な交流があるという認識だ. ミラー対称性とか何とかそのあたりもそう.

知っているのは大体このくらい.

2013年5月13日月曜日

大栗さんの『重力とは何か』がオーディオブックになる


大栗さん自身のツイートにより, 『重力とは何か』がオーディオブックになるという情報を得た. これ だ.
拙著『重力とは何か』がFeBeからオーディオブックになりました。 ⇒ http://www.febe.jp/product/144944 最初の部分は、こちらのYoutubeで試し聞きできます。 http://www.youtube.com/watch?v=wS-5QVg1_DE&feature=player_embedded
読もうと思っていてずっと読んでいないというか買っていない.

大栗さんの理研での講演についての記事を前に書いたことがある. 大栗さんの講演「科学者の矜持」が Youtube に上がっていたので見た と 大栗さんの講演「科学者の矜持」での疑問について Twitter で大栗さんに質問して回答を頂いた だ. 動画へのリンクと単なる感想だけでなく, 知り得る限りでのある程度専門的なこともコメントしておいた. 興味がある向きはご覧頂きたい.

2013年3月16日土曜日

統計力学は相転移を記述できるか:佐々さんの日記から


いつの間にか佐々さんが京都に移っていた, というくらいその辺の事情に疎い市民の私である. Twitter 上で回ってきて見かけて面白かった記述があったのでメモ代わりに記事を書いておく. 元記事は これ だ.
昼食後の長い話の中で、でた話題はちょっと書ききれないくらい。 僕が知らない話もあった。「「1937年の会議で、「統計力学が相転移を記述するかどうかを 公に議論した。 挙手で決めれば、半々くらいだった。 チェアーのくらーまーすは、熱力学極限の重要性をその時点で指摘していた」とそこに参加したうーれんべっくが言っていた。。」」とこーえんが言った。 他に、非平衡熱力学をめぐる話、流体方程式をめぐる話、非平衡統計の話。。 基本的には、「最近の研究に期待はするけれど、警鐘をならしたい」というので一貫していた。
1937 年の時点でまだ統計力学が相転移を記述できるかが話題になっていたとのこと. (古典) 統計力学自体は 19 世紀最後の 4 半世紀にはあったわけだが, 統計力学と相転移の議論がこんなに最近 (!) まで議論の対象になるほどだったことに単純に驚いた. 南部さんの素粒子での相転移の議論が 60 年代にあったことを考えると, 30 年の時の経過を思う.

つどいでも少し関連する話をするつもりだが, 統計力学 (特にスピン系) でははじめ有界系で諸量を定義して, そのあと熱力学的極限とも呼ばれる無限体積極限を取る. 「連続関数の極限が連続であるとは限らない」という数学的事情を使って, 相転移をつかまえにいく. また相転移の熱力学的な定義は熱力学関数の特異性 (不連続性や微分不可能性) であったことを注意しておこう.