内積について少しやりとりをしたのでまとめておきたい. この辺 からはじまる.
内積の定義で複素共役を取ったら順序が入れ替わる、みたいなやつなんで要請されるんですか
こーしーしゅわるつ、三角不等式が成り立つために必要とか?
@wa_ta_si_ コーシー・シュワルツをどう思うかによりますが,|<a,b>|のように絶対値をつけるなら コーシー・シュワルツも三角不等式も複素共役は必要ありません. 内積の片方に複素共役をつけるのは<a,a>≧0にしたいからです. 同じベクトルの内積をベクトルの長さにしたいので
@phasetr Cn の場合にベクトルの長さを定義できるように内積を考えると一方を複素共役にすることになる。 そうすると Rn の内積で<x,y>=<y,x>なのが Cn では<x,y>=<y,x>*になる。 それを一般の内積の定義に要請するということなんですね…。ありがとうございます
@wa_ta_si_ 変なこと書いた気がするので念のため言っておくと、三角不等式と内積の複素共役は関係ありません。 内積から長さを定義したいと思えば確かに関係はあるのですが、 三角不等式自体は長さに関係する話であって、一応内積とは別です
内積というやつがわからなくなってきて泣いてる
まず、内積というのは距離とか直交とかを定義するために導入する。 だから少なくとも正定値性は必要として、まあ線型性も必要だろう。 実数の場合なら対称性も必須か。複素数ならそれがエルミート対称性になるのも自然?
内積はベクトルの長さと 2 つのベクトルがなす角度を定義するために使う. 係数体が複素数のときに長さを決めたい場合, ⟨a,a⟩=∥a∥2 にしたいので, 実数では必要なかった複素共役をつける. こうすると一般に内積の値が複素数になる. 複素数でも cosθ=⟨a,b⟩/∥a∥⋅∥b∥ として角度は定義できるが, 三角関数の角度が複素数になってしまい, 実数のときと同じように「2 つのベクトルがなす角度」というのを考えるのは難しくはなるが, 直交というだけなら内積 0 と言えばいいので直交性だけはきちんと定義できるし, 意味がある.
正定値性だが, 時々半正定値の内積を考えることはある. そういう場合でも半正定値内積の値が 0 になるベクトル全体で商空間を取ってしまえば正定値内積を考えることはできるので, 普通はこの処理をするだろう. 作用素環での GNS 構成定理では実際にこういう処理をして内積空間を作る.
あともう少しいえば, 不定値の内積を使うこともある. 物理でいうと相対論が関係するところだ. 対応する数学としては Lorenz 多様体とかそんな話になる. 実のときの対称性, 複素のときのエルミート性については, 一番単純なユークリッド空間での内積がこの性質を持っていてそこをモデルにしているから, というのが答えだろう.
何にせよ, 具体的な話を抽象化したその先で得られた結論だけを学ぶ形になってしまうので, 初学者にとってはそう簡単な話ではない. 誰かの何かの参考になるかと思い, ここに記録しておく.
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